Q1.なんてお名前ですか?
食品とその呈味成分に関する記述である。
柿の渋味成分は、オイゲノールである。(○or×)
(管理栄養士国家試験35回49番)
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ざんねん!
柿の渋味は、柿タンニンという物質です。
正解!
柿の渋味は、柿タンニンという物質です。
柿は、ほかの果物にはない強い渋味をもっています。
これは「柿タンニン」(シブオール)という物質によるものです。
「タンニン」とは、ポリフェノールの一種。お茶に含まれるカテキンなんかも「タンニン」の一種なので、柿タンニンと近い存在といえます。
ちなみに渋味は、いわゆる味覚ではなく、痛みなどの触覚に近い感覚とされています。
タンニンの、粘膜のたんぱく質を変性させる収斂作用(しゅうれんさよう/縮めること)によってもたらされます。
問題に登場した「オイゲノール」は、香辛料「クローブ(丁子)」の香り成分の名前です。
オイゲノールは分類的に「フェニルプロパノイド」(フェニルアラニンからできる物質)に所属します。このフェニルプロパノイドは、生合成の経路でみると「タンニン」とつながっています。
また、これらはまとめて「ポリフェノール」の一種でもあります。
つまり、「ポリフェノール」という大グループの中に、「フェニルプロパノイド」や「タンニン」という小グループがあり、これらはつながっている。そしてそれぞれに所属する「オイゲノール」と「柿タンニン」が、入れ替え問題として出題されたということです。
呈味成分の誤文なら、違う呈味成分で作ればいいのに…なんで香気成分をもってくるんだ?と思いましたが、この関係があるからかな、と考えます。(ただし、これを「つながっている」と言ってしまうと、だいたいの化合物はつながっているじゃないか!とも言えます。笑)
Q2.渋味を抜くってどういうこと?
食品の加工に関する記述である。
干し柿の製造では、タンニンの水溶化により渋味を除去する。(○or×)
(管理栄養士国家試験34回61番)
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ざんねん!
渋味の除去は、タンニンを不溶化させています。
正解!
渋味の除去は、タンニンを不溶化させています。
タンニンとは、柿の渋味成分でした。そして渋味とは、タンニンが口の中のたんぱく質と結合して起こる収斂作用でした。
この反応は、口の中(唾液という水分)に、タンニンが溶け出すことで起こります。…そうです、つまり「水溶性(可溶性)のタンニンだと渋く感じる」ということです。
では、渋く感じなくするにはどうすればいいのか?
タンニンは柿の細胞内に蓄えられているので、タンニンだけを抜き取ることはできません。タンニンが存在していたとしても、渋味をなくす方法…
それが、「タンニンの不溶化(不溶性タンニン)」です。
もともと含まれている水溶性タンニンを不溶性にしてしまえば、口の中で溶けだすことはありません。するとあら不思議、タンニンが入っているのに渋く感じなくなります。
例えば干し柿では、皮をむいて乾燥させることで、この変化を起こしています。
また、以前にご紹介した渋抜き(ドライアイスやアルコールを使う)も、方法は違いますが、目的は同じタンニンの不溶化です。
もし、もしですよ、渋抜きの方法が発見されなかったり、そもそも柿の中でタンニンが不溶化できない仕組みだったら、柿という果物は食べられてなかったのかなぁと思ったり。自然の偶然と恵み、ありがとうー!
今回のまとめ
・柿の渋味成分は、柿タンニン(シブオール)である。
・渋味とは、口の中の収斂作用である。
・干し柿の製造では、タンニンの不溶化により渋味を除去する。
脱渋におけるタンニンの不溶化は、「アセトアルデヒドとの結合」が話の中心になります。
アセトアルデヒドとは、アルコール(エタノール)から水素が外れてできる物質です。(二日酔いの原因物質としても有名。)このアセトアルデヒドとタンニンが結合すると、高分子化することで水に溶けにくくなるとされています。
そんなアセトアルデヒドは、細胞内の代謝経路で考えると、糖(グルコース/ブドウ糖)から作ることもできます。
*酸素がある状態では、「アセチルCoA」になり、酸素がない状態では「アセトアルデヒド」や「乳酸」に代謝される。
つまり、柿を酸素がない状態に置き、アセトアルデヒドを発生させることができれば、タンニンと結合して渋味を消せます。
方法1/お風呂のお湯に漬ける。
お湯に漬けると酸素がない状態となります。また、温かいお湯によって反応が進みやすくなります。
(最も原始的な方法は、土に埋めることで無酸素状態を作ったとされています。)
方法2/炭酸ガスを充満させる。
柿をドライアイス(二酸化炭素)などを入れた袋で密閉することで、炭酸ガスが充満して酸素がない状態を作れます。
方法3/干し柿にする
皮をむくことで表面に被膜ができ、通常の酸素を使った代謝ができなくなります。
方法4/アルコールを吸わせて密閉する。
ヘタからアルコールを吸わせると、柿が持つ酵素によって分解されアセトアルデヒドができます。また密閉することで酸素がない状態を作れます。
(*熟した柿の渋味が消えるのは、ペクチンなど別の物質が関わるとされる)
「渋抜き=タンニンの不溶化」は、いかに「アセトアルデヒドを作るかの工夫」とも言えます。
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