第9話 リン酸吸収係数

メンバー

marcy
pino

指標のニュアンス。

pino

 今日はリン酸吸収係数ですね、
 お願いします。

marcy

 お願いします。
 ではさっそく、
 リン酸吸収係数とは??

pino

 リン酸を、が…土壌が、
 リン酸をどれだけ保持できるか…
 チカラの強さを表す値。

marcy

 はい。

pino

 ほんとに?(笑)

marcy

 言わんとすることはわかる(笑)
 いま、「土壌がリン酸をどれだけ保持できるか」
 というニュアンスで言ったけど、
 これだと「高い方がうれしい」って
 感じがするじゃん?

pino

 うんうん。

marcy

 でもそこはちょっと違って。
 そんな部分から見ていこうと思います。

pino

 はい!

marcy

 まず、リン酸吸収係数は、
 土壌の状態を把握するための指標の1つ。

pino

 土壌の状態を把握する。

marcy

 うん、他にもpHとか
 CEC(陽イオン交換容量)とか、
 電気伝導度(EC)とか、
 土壌を把握するものがいろいろあったよね。
 この中の1つというポジション。

pino

 うんうん。

marcy

 で、何を表しているかというと
 「土壌がリン酸を吸着固定する力」

pino

 これが言いたかったんだよ(笑)

marcy

 うん(笑)
 そして最初に言った通り、
 これはいい意味で
 「土壌がリン酸を蓄えている量」
 という感じではない。

 前回見た通り、リン酸は
 土壌粒子には保持されなかったよね。
 土の粒にイオンの状態では、
 くっついてはいなかった。

pino

 カルシウムとかと、くっついていた。

marcy

 そうそう、何かと結合していた。
 カルシウムと結合したものは、可給態リン酸で、
 鉄などと結合したものは不可給態リン酸だった。
 なので、リン酸吸収係数は
 「土壌がリン酸を固定してしまうことで、
 作物にとっての利用しづらさ」を表すって
 イメージかな。

pino

 うんうん。

marcy

 作物からすると、
 「土がこれだけリン酸を蓄えている」ではなく、
 「土がリン酸を固定しちゃってる」という感じ。

 そして具体的には、
 この指標をもとにして、
 施肥量を決めたり、肥効を評価する。

pino

 なるほど。
 「蓄えている量」と考えないように注意だね。

marcy

 ちなみに、リン酸吸収係数は、
 日本独自の指標のようです。

pino

 へぇ!

marcy

 外国にも似た指標はあるけど、
 リン酸吸収係数という名前と
 この計算方法は独自らしい。

pino

 やっぱり黒ボク土が多いからかな。

marcy

 可能性はあるよね。
 結局そこに苦労するというのは、
 日本の土壌の特徴だから。

pino

 二番目に多いんだっけ。

marcy

 そうそう二番目。
 日本で灰色低地土の次に多いのが
 火山灰土の黒ボク土。


単位と値の感覚

marcy

 では次は、単位。

pino

 単位!?

marcy

 (笑)
 リン酸吸収係数の単位は、
 土壌100g当たりが吸着固定する
 リン酸のmg。
 単位としては「~mg/100g」

pino

 うんうん。

marcy

 ただ、なぜか一般的には
 「単位を付けずに書く」とされている。

pino

 そうやんね。
 今、単位思い浮かばなかったもん。

marcy

 だから、例えば「1000mg/100g」は、
 たんに「1000」とだけ書いてある。

pino

 めんどくさいのかな(笑)

marcy

 ねぇ(笑)

 これを踏まえて数字の感覚をみると、
 いくつかに分類されています。

 ごく小 700以下
  700-1500
 中 1500-2000
 大 2000以上

 これはテキストに載っている値ではないけど、
 だいたいこれくらいの範囲で
 数字が登場すると思っておくと、
 感覚がつかめるかなと。

pino

 うん。

marcy

 よって、
 一般的にこの値が大きい土壌ほど…

pino

 リン酸を固定するチカラが強い。

marcy

 作物からすると…

pino

 リン酸を吸収しにくい。

marcy

 管理する人からすると…

pino

 肥料が効きにくいから、
 多くまかないといけない。

marcy

 そういうことだね。
 数字が大きいほどたいへん。

pino

 この「大きい」って、
 どこから大きいになるんだろうね。

marcy

 いい疑問(笑)
 次にそれを見ていこうか。


土の種類と係数

pino

 2000は明らかに大きいよね。
 やっぱり1500を超えてからなのかな。

marcy

 そうだね、
 よく課題となる黒ボク土が1500越えだから、
 これを超えるとかなり大きいって
 印象じゃないかな。

pino

 うんうん。黒ボク土が、
 よく「リン酸吸収係数高い」って
 言われる土やもんね。

marcy

 そうそう。
 では、さっきの数字の区分、
 値の高い低いは何によって違ってくるのか。
 今話したことなんだけども。

pino

 腐植量とか?

marcy

 ではない。

pino

 あ、土の種類ってこと?

marcy

 正解。

pino

 へぇ~。

marcy

 リン酸吸収係数は、
 「土壌の種類によって異なる」
 という特徴がある。

 これはその土を作っている成分の影響。
 今回のはじめの方で、
 土の状態をみる指標には、
 pHとかCECとかECがあるって言ったじゃん?

pino

 うん。

marcy

 あれって、改善できるじゃん?
 目標値があって、そこに向かって
 合わせていきましょうってしてる。

 でもリン酸吸収係数は、
 土壌の種類によって決まってるから、
 改善するって考え方がない。
 受け入れましょう(笑)

pino

 へぇ!
 どうしても改善したかったら、
 違う土を混ぜるしかない?(笑)
 作るものを合わせていくイメージかな。

marcy

 そうそう。
 だからそういう意味では、
 pHとか他の指標とは感覚が違うし、
 そもそも「改善目標の値」がない。

pino

 ん~!
 「この土の値はこれくらいですよ!」はあるけど、
 「この値を目指しましょうね」はない。

marcy

 そう。だから係数は変えられないけど、
 「可給態リン酸を増やす」ってことはできる。

pino

 ん~なるほど。
 土壌診断したら、それがわかるってことだよね。
 リン酸吸収係数は変えられないけど、
 「可給態リン酸を増やそうか」は
 できるってことだね。

marcy

 うんうん。
 リン酸を吸着固定する
 係数自体は変わらないけど、
 土全体の中で、作物が吸えるリン酸の量を
 増やすってアプローチはできる。

pino

 なるほど。

marcy

 ということで、
 値を土の種類ごとをみておくと、
 いちばん高いのが「黒ボク土」です。

pino

 1500くらい。

marcy

 そうそう。
 そもそも黒ボク土の条件として、
 「リン酸吸収係数1500以上」がある。
 だから「黒ボク土=1500確定」みたいな。

【1500以上】
 黒ボク土

pino

 なんかレアカードみたいな
 言い方だったよ(笑)

marcy

 ガチャの話じゃないのよ(笑)

 つぎに700~900くらい。
 感覚としては中間くらいの土。
 これに灰色低地土・黄色土・グライ土。

【700~900】
 灰色低地土・黄色土・グライ土

pino

 ふーん。

marcy

 そして、いちばん低い700以下が褐色低地土。
 これらが、土壌の種類によって決まっていると。

【700以下】
 褐色低地土

pino

 なんかイメージつきやすいね。
 700~900の灰色低地土って、
 黒ボク土じゃないところの
 畑とか田んぼってことでしょ。

marcy

 あぁたしかに、そうだね。
 分布は灰色低地土が一番多いし。

pino

 なるほど~。

marcy

 あと、土の種類と係数の関係の話で、
 同じ種類の土を水田利用している場合と、
 畑に使っている場合があるじゃん?

pino

 うんうん。

marcy

 これ、どっちで使っていようが、
 「リン酸吸収係数は大きく変わらない」
 という特徴もある。
 水田と畑で同じ種類の土壌だったら、
 係数もだいたい一緒。

pino

 ふ~ん。

marcy

 つまり、はじめに戻って
 「係数は土壌の種類に依存している」って
 ことだね。

pino

 なるほど。


黒ボク土と係数

marcy

 リン酸吸収係数で特徴的な土壌は、
 やっぱり黒ボク土。
 これがダントツ高い。

pino

 うん。

marcy

 ではなぜ、
 黒ボク土はそんなに高いのか。
 なぜでしょう??

pino

 なるほど…
 …火山灰でできている土だから。

marcy

 …正解!

pino

 ほんとに?
 ちょっと間があったよ(笑)

marcy

 いや、一応正解で(笑)
 黒ボク土が他と違う部分に、
 まずそれがあるよね。
 火山灰土でできている。

pino

 うんうん。

marcy

 それが高い係数に
 関係しているんだけど、
 じゃぁなんで、
 火山灰土だと高くなるのか?
 もうこれは予想するしかない(笑)

pino

 (笑)…なんだろ。

marcy

 火山灰土が要因てことは、
 火山灰土にだけ入っている成分が
 ありそうだよね。

pino

 そら、あるかもやけど(笑)

marcy

 その成分が、どう作用したら
 係数が高くなると思う?

pino

 …リン酸とくっつきたがる。

marcy

 正解!

pino

 その成分はなに?

marcy

 アロフェン。

pino

 しらねぇ~しょけん~(笑)

marcy

 3級に出てなかったけ?

pino

 でてないよぉ。だれ~??

marcy

 出てないか(笑)
 アロフェンは、粘土鉱物の一種。
 直径4-5nmで、
 中が空洞になっているとても小さいもの。
 火山灰の風化によって作られる。

pino

 ふ~ん。

marcy

 このアロフェンは、
 リン酸、腐植、重金属などを吸着するそう。
 だから黒ボク土は、
 アロフェンがたくさん入っているので、
 リン酸欠乏が問題になる。

pino

 なるほど。
 
 質問!リン酸ってなにかと結合して
 土の中にいるって言ってたじゃん?
 アロフェンは、リン酸と直接結合するの?
 アルミニウムとかとくっついた
 リン酸と結合するの?

marcy

 アロフェンの構造自体に、
 アルミニウムが含まれてるから、
 そこに結合するイメージかな。

pino

 なるほど、OK~。

marcy

 あと、黒ボク土は
 塩基の保持力が低い。
 弱いってことは、
 酸性化しやすいよね。

pino

 (´・ω・)

marcy

 (笑)
 えっと、土壌粒子は
 マイナスの電気をもっているよね。

土壌粒子
〇⁻ 〇⁻ 〇⁻ 〇⁻

pino

 うんうん。

marcy

 そのマイナスには、
 カルシウムやカリウムなどの養分の、
 プラスのイオンがくっつく。
 これが安定していると、
 作物にあげる栄養がたくさんある状態。

土壌粒子
〇⁻Ca 〇⁻K 〇⁻Mg


 でもこれらが離れやすかったら、
 土のマイナスの部分に、
 水素イオン(H⁺)がくっつく。

土壌粒子
〇⁻Ca 〇⁻H 〇⁻H

pino

 うんうん。

marcy

 この水素イオン(H⁺)が
 あるってことは、
 酸性度が上がるってこと

★pH
水素イオン(H⁺)が多くなると値が下がる
→ 酸性度が高くなる

pino

 そうかそうか。

marcy

 だから塩基類(養分)の
 保持力が弱いってことは、
 水素イオンが増えて、
 酸性になりやすい。
 そして酸性化すると、
 アルミニウムが溶出しやすい。

pino

 なにかとくっついていた
 アルミニウムが、出てきちゃう。

marcy

 そうそう。そしたらそれが
 リン酸と結合して、固定される。

pino

 へぇ。

marcy

 なので、アロフェンが含まれることと、
 アルミニウムが多いことの2つが、
 黒ボク土のリン酸吸収係数が
 とても高いことの理由。

pino

 なるほど。

marcy

 ひとつ注意点としては、
 すべての黒ボク土に
 アロフェンが含まれるわけではない。
 「非アロフェン質」の黒ボク土もある。

pino

 ふ~ん。

marcy

 ただそれは細かい話なので、
 試験的には今回の理解が基本かな。

pino

 なるほど。何回も振り返ろ~。


おまけトーク


黒ボク土のところ振り返ろう~。


リン酸吸収係数は、
土壌の状態を見る指標だけど、
他とはちょっと種類が違うってことだね~。


もう「そういうもの」って覚えてないと、
問題はスラスラとけなさそう。


うんうん。
例えばヒトでいうと、
BMIとか体重とか血液検査の値はさ、
目標値があって、改善のために
「運動したり、食事変えたりしましょう」
ってなるけど、「身長」はもう固定じゃん。


うんうん。


「もうちょっと伸ばしましょう」とか
「高すぎます」とかないわけよね。
健康診断の項目って意味では他と同じだけど
目標値がなくそのヒト固有の値。
そういう意味で、リン酸吸収係数は
「身長」っぽいなって思う。


なるほどねぇ。いい例えやね。


やったぁ(笑)
これが今日のピークです。


(笑)

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