第8話 リン1
メンバー
リンの呼び方
marcy
今回は、
肥料の3要素の2つめ、リンです。
pino
リン!
marcy
リンは、
元素でいうと「リン」(P)。
ただし、作物や肥料の話をするときは
リン酸で呼ばれることがほとんどです。
pino
うん、たしかに。
marcy
リン酸は、
化学式でいうと「H₃PO₄」
pino
えいちすりーぴーおーふぉー。
marcy
なので、水素原子と酸素原子が
くっついている。
だいたいこっちで呼ばれるよね。
pino
水素もくっついてるのね。
marcy
うん。
なぜリン酸で呼ぶかというと、
作物の根は、リン酸の状態で
吸収することができるから。
さらに正確にいうと、
リン酸イオンの状態で吸収するそう。
H₂PO₄⁻、HPO₄²⁻
Hが少なくなって、
電気的にマイナスを帯びている状態。
pino
なるほど。
marcy
ただ今回の話では、
リン・リン酸・リン酸イオンを区別せず、
同じものとして扱っていきます。
pino
はい!
リンの働き
marcy
そんなリンの働きについて。
なにか思いつくものありますか?
pino
実肥(みごえ)!
marcy
あぁ、そうだったね。
リンは実肥と花肥。
pino
わたしからは以上です(笑)
marcy
ありがとう(笑)
実肥と呼ばれるのは、
結実の促進効果が大きいからだね。
あと、これは窒素のときと同じなんだけど、
実を作るだけではなく、
一般的には生長・分げつ・
根の伸長・開花などにも関わる。
pino
うんうん。
marcy
なかでも、生育の盛んな
若い組織に多いとされる。
つまり、新しい細胞に多いということ。
pino
なるほど。
marcy
ざっくり言っちゃうと、
リンが不足すると、生育が悪くなる。
全体に影響するから。
pino
はい。
marcy
ここをもう少し詳しくみると、
リンは核酸の材料になっています。
pino
カクサン。
marcy
核酸といえば?
pino
DNA。
marcy
正解。
DNAとかRNAだよね。
これらがどんな材料でできていたかというと?
pino
…材料?
marcy
DNAもRNAも、
大きく3つのパーツからできていた。
ちなみにこれは、ヒトも同じ。
pino
1個はリン酸ってことでしょ?(笑)
marcy
そういうこと(笑)
pino
ヒント!
marcy
…砂糖
pino
糖!
marcy
正解(笑)
正確には、砂糖の材料は六炭糖なので、
それとはちょっと種類が違う五炭糖が材料。
pino
五炭糖と、リン酸と…塩基!
marcy
正解!
ということで、DNAやRNAは
糖・リン酸・塩基からできていて、
リンはこの材料になっているので、
生長などに絶対必要だとわかるよね。
・核酸(DNA・RNA)
【糖】—【リン酸】—【塩基】
pino
なるほど。
marcy
あと、
リンはエネルギーにも関わっていました。
pino
A、P、T!
marcy
はんたい、はんたい!(笑)
pino
ATP!(笑)
marcy
pinoだからってPが優先されすぎ(笑)
日本語でいうと、アデノシン三リン酸。
pino
アデノシン三リン酸。
marcy
そう、これがATPと呼ばれる物質で、
僕たちもそうだけど、
食べ物から得たエネルギーは、
ATPというカタチに変えて、
スットクして使っている。
だから、カラダを動かすとか
代謝を行うときに、ATPは必ず必要で
これにリンが関わっている。
・ATP(アデノシン三リン酸)
【アデノシン】—【リン酸】
—【リン酸】
—【リン酸】
pino
うん。
marcy
植物でいうと、光合成したり
呼吸したりするのに、ATPが必要。
pino
それをするためのエネルギーってこと?
marcy
エネルギーの貯蔵物質ってイメージかな。
pino
光合成とか呼吸しようとするときに…
marcy
ストックしているATPを持ってきて、
そこからエネルギーを取り出して使う、
みたいな感じかな。
pino
そうか、そうか。
marcy
DNAの材料にもなっているし、
ATPの材料にもなっているし、
かなり中心部分に関わる元素だね。
pino
だいじ。
marcy
うんうん。
そういうのもあるから、
「作物の生育と収量に
窒素の次に影響が大きい」
と言われてます。
pino
うん。
marcy
窒素がいちばん影響が
大きかったよね。
pino
大きかった。
marcy
その次がリンでした。
pino
へぇ~。
窒素は、カラダを作る成分そのものだから、
いちばん影響が大きい。
それを作るのにリンが必要だから、
次に影響が大きいってことかな。
marcy
そう考えるとわかりやすいね。
エネルギーだけあっても材料がないと、
生育できねぇってことだし(笑)
pino
なるほどね(笑)
リンの種類
marcy
次は、そんなリンが
土の中でどんな状態でいるか。
pino
リン酸では、いないの?
marcy
リン酸はリン酸なんだけど、
窒素のときみたいに、
分類されています。
pino
あぁ~。
marcy
窒素は有機態窒素と
無機態窒素に大別されてたよね。
これと同じように、
「有機態リン酸」と「無機態リン酸」に
大別されます。
【リン酸】
・有機態リン酸
・無機態リン酸
pino
ここも有機態と無機態なのね。
marcy
そうそう。
そして窒素のときは、
無機態窒素がアンモニア態と
硝酸態に分かれてたじゃん?
pino
わかれてた。
marcy
同じように無機態リン酸も、
カルシウム型・アルミニウム型・
鉄型に分類されます。
【リン酸】
・有機態リン酸
・無機態リン酸
カルシウム型
アルミニウム型
鉄型
pino
( 一一)
marcy
パターンが違うから、
顔が険しい(笑)
pino
種類が増えてます( ノД‘)
marcy
これ、言い換えると、
リン酸は土壌粒子に直接保持されることが
少ないということでもある。
つまり、何かと結合していることがほとんど。
pino
なるほど。
marcy
もうひとつ、ちょっと視点が変わって
「作物が利用できるかどうか」の分類もある。
「有効態リン酸(可給態リン酸)」と
「難溶性リン酸(不可給態リン酸)」。
【リン酸】
・有効態リン酸(可給態リン酸)
・難溶性リン酸(不可給態リン酸)
pino
分類が細かいな。
くっつき方と、吸えるかどうか。
marcy
そうそう。
そして、さっき登場したアルミニウム型と鉄型は、
不可給態リン酸。作物は使いづらいリン酸。
pino
ふーん。
marcy
一方、カルシウム型
こちらは利用しやすい可給態リン酸。
【リン酸】
・有機態リン酸
・無機態リン酸
カルシウム型(可給態)
アルミニウム型(不可給態)
鉄型(不可給態)
pino
カルシウム要るって言うもんね。
marcy
たしかに。
あと例外もあって、作物の種類によっては、
有機態リン酸や不可給態リン酸の一部を、
自分で分解して利用するものもいる。
pino
すごいじゃん。
marcy
うん(笑)
おそらく微生物との共生とか、
酸の分泌によってだと思う。
pino
なるほどね。
だから、不可給態リン酸でも、
吸収しようとしている奴らがいるってことね。
marcy
そうそう。
なのでこれを踏まえると、
作物が利用できる有効態リン酸には、
無機態のカルシウム型と、
一部の有機態や鉄型、アルミニウム型も
含まれることになる。
【有効態リン酸(可給態リン酸)】
・カルシウム型(無機態)
+
・(一部の)有機態リン酸
・(一部の)アルミニウム型(無機態)
pino
試験問題的には、どう出てるの?
marcy
今の文言がそのままは出てないけれど、
「無機態の中で、アルミニウム型と
鉄型は吸収されにくい」は登場してるね。
pino
はい!
marcy
そして、リンのもうひとつの特徴として
「作物が利用できる割合が少ない」
ということがあります。
これはさっき言った通り、
リン酸は土壌粒子に保持されず
何かと結合してるから。
pino
ふーん。
marcy
なので、リンを肥料として与えても、
その利用効率は10~20%くらいのようです。
これは、窒素やカリウムと比べても低い。
pino
カルシウム型しか
効率よく吸収できないからよね。
marcy
そうそう。
だらか肥料をまいた分だけ
作物が吸ってくれるわけじゃないし、
吸収率は他の養分と比べても少ない。
利用しやすさに影響を与える要因
pino
次!
marcy
今、リン酸の種類と、吸収されにくさを見ました。
次は、そんなリン酸をまいたあとに、
さらに利用しやすさに影響を与えるもの
3つをみていきます。
まいたあと、さらに影響を受けるってこと。
pino
えぇ、デリケート…。
marcy
(笑)
まず1つめが「pH」です。
pino
なるほどね、pH。
marcy
土壌pHが低いと、
土壌のアルミニウムや鉄と結合しやすくなります。
pino
うんうん。
ということは、作物は吸収しにくい。
marcy
そうそう。
こんど反対に高すぎると、
カルシウムと結合はするんだけど、
難溶性の化合物ができてしますそうです。
pino
カルシウムと結合しているのに?えぇ…。
marcy
(笑)
示されている適切範囲としては
pH5.5~6.5となってる。
標準の範囲だね。
pino
うん。
marcy
2つめの影響は、土の種類。
とくに黒ボク土が影響します。
pino
黒ボク土だと?
marcy
黒ボク土は火山灰の土で、
他の土よりアルミニウムを
たくさん含んでいるという特徴がある。
pino
へぇ~。ということは、吸収しにくい。
marcy
そうそう。
アルミニウムと結合するから、
作物は吸収しにくくなる。
pino
あれ?黒ボク土って
リン酸いっぱい含んでるんじゃなかったけ…。
あ、違う、リン酸吸収係数が高いのか。
marcy
…それ、また次回やります(笑)
pino
あぁ~(笑)
marcy
とりあえず、
リン酸吸収係数が高いことは、
「土にリン酸が多いこと」ではなくて、
土がリン酸を固定しているから、
「加えるリン酸がたくさん必要」ってことだね。
pino
そうだった。
marcy
3つめは、地温。
pino
ちおん。
marcy
地面の温度だね。
これが低い場合は、リンが吸収されにくい。
pino
ふんふん。
marcy
これはリンの吸収にエネルギーが必要で、
低温だと根の活性が低下するから、とされてます。
具体的には、地温が20℃から10℃に下がると、
吸収率が1/10程度になるそう。
pino
ふーん。
marcy
これも、窒素・カリウムより、
低温の影響を受けやすいそう。
デリケート。
pino
ほんとに。
marcy
なので、寒い地域や時期は、
リンを多めに施用する工夫が
とられているみたいです。
pino
同じ土でも、
夏と冬だと吸ってくれる量が違うのね。
marcy
以上の3つが主な要因なんだけど、
追加でもう1つ、作物の種類も影響します。
ざっくり言うと、リン酸吸収しやすい作物と、
そうでない作物があるということ。
pino
うん。
marcy
リン酸を吸収するチカラが強いものとして、
コマツナ・ダイコン・サトイモ・
サツマイモ・スイカがある。
pino
へぇー。
marcy
反対に吸収しにくいものとして、
タマネギ・インゲン・レタス・
ホウレンソウ・ニンニクがある。
ここでちょっと、
試験対策的にややこしい部分があって、
最初に言った「リン酸を吸収しやすいもの」は、
言い換えると「リン酸施用効果が低い」
とも言える。
もともと吸収しやすいのだから、
リン酸を肥料として与えても、
その効果は低い、という意味。
pino
なるほど、なるほど。
marcy
反対に、「吸収しにくいもの」は、
「リン酸施用効果が高い」と言われる。
与えてあげれば、その効果がでやすい。
ここややこしいので、注意点だね。
・リン酸を吸収しやすい
(リン酸施用効果が低い)
コマツナ・ダイコン
サトイモ・サツマイモ
スイカ
・リン酸を吸収しにくい
(リン酸施用効果が高い)
タマネギ・インゲン
レタス・ホウレンソウ
ニンニク
pino
ほんとだ。気をつけて読まないと。
marcy
ということで、今回は以上です。
pino
ありがとうございました。
こんなにリン酸を理解したのは初めてです。
marcy
よかったです(笑)
おまけトーク
ま
今回は、
ヒトと比べても同じ部分が多かったよね。
とくに核酸とかATPは、
まったく同じシステムを使ってるし。
ぴ
うんうん。
ま
あと、今の話だと、
リンは肥料の三要素だし、
中でも吸収しにくから肥料の効果が低かったり、
地温やpHの影響で吸収しにくくなるという、
「不足」の話ばっかりだったじゃん。
ぴ
うん。
ま
でもヒトは、
現状だと摂りすぎているから
控えようというポジション。
これが逆なのがおもしろいなぁって。
ぴ
それはまーしーだから気づくけど(笑)
ま
(笑)
リンは一般的な食事をしていれば不足しないし、
加工食品に多いから、
しらない間にたくさん摂ってる。
ぴ
過剰になるとどうなるの?
ま
わかりやすい症状はないけれど、
腎臓や骨に負担がかかるから、
耐容上限量が設定されているね。
ぴ
へぇ。
植物の過剰も、この後でてくる?
ま
出てくるけど、
植物のリン酸過剰は、
基本的に「発症しにくい」という扱いで、
最近少し報告があるよってくらいだね。
ぴ
吸収しにくくても
何かしらはあるってことだね。