第7話 窒素3
メンバー
窒素に関わる数値
marcy
今回は窒素の3回目、
数字関係です。
pino
すうじ。
marcy
前回までで、
窒素の役割とか種類をみたよね。
最後に、それに関わる
具体的な数値について
見ておきたいと思います。
pino
はい!
marcy
ここは試験対策の要素が強いので、
あまりおもしろくないかもしれません(笑)
pino
でも数字を覚えていたら、
普段見たときに、わかることが増えるよね。
marcy
あ、そうそう、
いわゆる「金銭感覚」みたいな感じで、
窒素の数字感覚を把握してもらえればいいな、
と思います。
pino
なるほど。
marcy
では、いきなりですが、
窒素を管理するときの値。
野菜類に対して「無機態窒素」を与えるとき、
どれくらい与えればいいか?という
目安があります。
pino
うん。
marcy
無機態窒素のひとつである
「アンモニア態窒素」
これは、土壌100g当たり1~5mg
もうひとつ「硝酸態窒素」は、
100g当たり5~15mgが
目安になります。
「窒素施肥量の目安」
・アンモニア態窒素
1~5mg/100g
・硝酸態窒素
5~15mg/100g
pino
へぇー。
marcy
これより多いと、
過剰に入れすぎているし、
少ないと足らないんじゃないか?と
判断するだいたいの値。
もちろん、作物の種類や
土壌の種類によって異なるので、
ざっくりした数値の感覚です。
pino
うんうん。
どうやって覚えようかな。
marcy
とりあえずこれは、
畑作物の野菜類に対しての話だから、
硝酸態窒素の方を好むはず。
なので、硝酸態の方が多いよね、ということは
前回学んだ知識からわかるかな。
pino
そうか、そうだね。
marcy
あとは、100gに対して、数mgだから、
卵2コに対して、塩ほんのちょっと、
くらいの感覚(笑)
pino
なるほどね(笑)
marcy
ぜんぜん、
ひとつまみもいらないくらい(笑)
アンモニア態窒素の過剰
marcy
さっき言った通り、
作物が利用する窒素は
アンモニア態窒素と
硝酸態窒素だったけれど、
畑作物で考えると硝酸態窒素を好むよね。
pino
うんうん。
marcy
なので、畑作物において
あまり使わない方のアンモニア態窒素が
多すぎると、生育障害が起こることがある。
pino
うん。
marcy
これも数値が登場していて、
目安として土壌100g当たり25mg以上になると、
障害が起こる可能性が高いとされている。
pino
25mg以上。
marcy
さっき、施肥の目安として
アンモニア態窒素は1~5mgが
適正としていたので、
この延長で考えるとイメージしやすいかも。
pino
ふーん。
marcy
これが、上限値としての
数値感覚かな。
pino
はい。
marcy
この障害が起こるのが、なぜかというと、
以前に見た通り、ふつうアンモニア態窒素は
微生物によって硝酸態窒素に変化するよね。
pino
うんうん。
marcy
それが正常なんだけど、
肥料によって過剰になると、
変換が追い付かなくて
ガスができてしまう。
pino
ふーん。
marcy
アンモニアガスとか、
硝酸の一歩手前の亜硝酸のガスとか。
このガスに毒性があるので、
作物に悪影響を与えてしまう。
pino
なるほど。
marcy
他にも、このガスが発生するくらいになると、
土壌を酸性化させるので、
適正pHの範囲から外れてしまう。
あとは直接根に対する毒性もあって、
根の活性が低下する。
pino
うんうん。
marcy
そもそもアンモニアって、
ヒトに対しても毒だよね。
僕たちはたんぱく質を食べて、
代謝の過程でアンモニアが発生するので、
無毒な尿素に変えて尿から捨てるって
システムがある。
だから、植物も動物も、
過剰なアンモニアは毒って印象かな。
pino
うんうん。
marcy
あと、光合成の低下も起こるみたい。
窒素の過剰によって、
他の養分が吸えなくなる。
拮抗作用によって。
pino
それは、
ガスとか関係なくてもあるよね。
marcy
そうだね。
このような様々な要因があって、
生育障害が起こる。
pino
なるほど。
marcy
そしてこのアンモニア態窒素の
過剰に対する強さ弱さは、
作物の種類によって異なる。
一番弱いとされているのがアブラナ科。
ダイコン・キャベツ
ハクサイ・ブロッコリーとかだね。
pino
ふ~ん。
アブラナ科が、弱い。
marcy
そう。
その次が、ナス科。
ピーマン・ナス・トマト
じゃがいもとか。
この次はヒユ科。
ホウレンソウ・フダンソウ。
pino
よく食べる野菜たちだね。
marcy
なぜアブラナ科が弱いのかを調べたけれど、
理由までわかんなかった。
要求量とか、pHの変動とか、
そういう理由があるのかなとは思う。
pino
ふ~ん。
…今回「ふ~ん」しか言ってない(笑)
marcy
まぁ、今回は「ふ~ん」しかないもん(笑)
pino
あ、でもアブラナ科は
デリケートなイメージあるよ。
marcy
そうなんだ。
ありがとう、体感情報だいじ。
作物毎の値
marcy
次に、作物ごとで窒素の値が
出てくるもの。まずホウレンソウ。
pino
うん。
marcy
ホウレンソウで
よい品質を得るためには、
収穫時の残存無機態窒素が、
100g当たり5mg以上必要。
pino
それってどっちでもいいのかな。
硝酸態とアンモニア態窒素。
marcy
ん~おそらく、硝酸態優先だと思うけれど、
書いてあるのは「無機態窒素」という扱いだね。
pino
うんうん。
5mg以上残っている方がいい。
marcy
これ、なんでだと思う?
pino
なんででしょう?
marcy
逆に質問された(笑)
僕たちは、ホウレンソウという野菜の
どんな部分を食べているか。
pino
葉っぱ。
marcy
葉っぱだよね。
葉っぱということは、
種とか蓄えたものではなくて、
成長している途中のものを食べているよね。
pino
あ~なるほどね。
marcy
そう、野菜からしたら
グングン成長してます!という場面だから、
たくさん栄養素が欲しいよね。
pino
成長途中だから。
marcy
そうそう。
だから窒素を切らすのではなく、
しっかり土の中にある状態が、
いい品質のものが獲れる条件になる。
pino
なるほど~
marcy
この視点はおもしろいよね。
野菜と言っても、葉っぱを食べているのか、
養分を蓄えた部分を食べているのか、
花が咲いた後の実を食べているのかで、
植物の成長過程的には
ぜんぜん違うものを食べている。
pino
たしかに、おもしろい。
ホウレンソウ以外にも、
値が設定されているものはあるの?
コマツナとか。
marcy
葉っぱ系では、なかったね。
でも理屈で考えると同じじゃないかな。
pino
そうね、窒素が切れていない方が
望ましいよね。
100g当たり5mg以上、はーい。
marcy
あともうひとつ、キュウリも載っている。
pino
うわ、まーしー大好き、キュウリ。
marcy
…(笑)大事な点をミスってるな。
「大好きじゃない方」なんだけどな(笑)
これは、収穫終了時に、
無機態窒素が100g当たり10mg以上
必要なようです。
pino
葉っぱのときより多い。
marcy
そうなの。この理由としては、
キュウリは長期間連続して
収穫することが関係するそう。
pino
あ~、言ってた。
キュウリはずっと獲れるって。
marcy
なので、この間は
一定量の窒素を維持しないと
後半にバテちゃうから、
一定量窒素を維持しましょう、って
考え方だね。
pino
なるほどね。
種苗会社さんのところに
研修に行ったときにね、
いくつかキュウリの品種があって、
やっぱ長期収穫向きのと、
家庭菜園向きとあった。
marcy
あ~違うんだ。
pino
そう、長く収穫するってことで、
暑さにも病気にも強いものだったり、
家庭菜園向きだと、
ゆっくり育つものがあったり。
marcy
そう分かれてるんだ。
家庭菜園で大量に獲れても困るもんね(笑)
pino
うん。そんなことを思い出した。
marcy
いいね!
窒素過剰の影響
marcy
最後に、
窒素過剰を見ておきます。
pino
うん。
marcy
各作物の、個別の過剰症は
また後の範囲で見るとして、
全体共通の窒素過剰の影響として
「カルシウム・マグネシウムの吸収低下が起こる」
ということがあります。
pino
拮抗作用で?
marcy
そう、その通り。
なので、窒素過剰で何が起こる?って
考えたときに、
カルシウムとマグネシウムの欠乏と
つながっていると。
pino
なるほど。
marcy
そして今答えてもらった通り、
これは養分同士で拮抗作用があるのため。
窒素が優先して吸収されることで、
他のが入りづらくなる。
入りづらくなったものは、
吸収量が低下して欠乏症につながる。
pino
うんうん。
marcy
とくに「アブラナ科」は、
窒素過剰で「カルシウム欠乏が起こりやすい」。
ナス科は、「カルシウム・マグネシウム両方の
欠乏症が起こりやすい」と書かれていました。
pino
なるほど。
marcy
だから、
カルシウムやマグネシウムの
欠乏症が出たときに、
それらが不足している可能性もあるけど、
窒素を入れすぎている可能性もあるってことだね。
pino
それは、よく職場で体感してる。
marcy
おぉ。
pino
議論してる。
marcy
議論(笑)
どっちか、って?
pino
どっちかというより、他にも要因はあって。
窒素が多すぎるか、カルシウムが足りないか、
水が足りなくて吸収できないか、
水はあるけど凍ってしまって吸収できなかったのか
とか。
marcy
いろいろあるんだね。
pino
あるある。
でも症状から、カルシウムが足りない、
ということはわかる。
marcy
そういうことだね。
pino
カルシウムって立場弱いんかな…
marcy
立場…(笑)
pino
大事なのに。
marcy
まぁ、窒素との話だと、
窒素が優先して吸収される影響が大きいよね。
はじめの方で話した通り、
一番吸収されるのがカリウムで、
その次が窒素。
pino
カルシウムとマグネシウムの
拮抗作用もあるの?
marcy
あるある。
カルシウム・マグネシウム・カリウムは
それぞれお互いに拮抗作用をもっている。
pino
それぞれある。たいへんだ。
marcy
だから、「バランス」って
話になるんだろうね。
ということで、窒素は以上になります。
pino
はい!
おまけトーク
ま
3回に分けて窒素を見てきましたが、
なんとなく窒素のことが
わかったでしょうか。
ぴ
なんとなくわかりました。
ま
よかった(笑)
ぴ
窒素は…
やばい、「カラダを育てる」しか
すぐ出てこない(笑)
ま
うん、
「作物の生育と収量に最も大きく関わる」のが
窒素だったよね(笑)
ぴ
あとは、ヨウヒって言われる。
ま
…ん?葉肥(はごえ)?
ぴ
はごえ!(笑)
だから、ホウレンソウに必要。
ま
あぁ確かに、
そう考えると覚えやすいね。
ただし、葉っぱだけじゃなくて、
他の成長にも必要、という話もしたよね。
ぴ
したした。
ま
葉緑体の材料になってたし、
たんぱく質とか酵素の材料にもなっていた。
ぴ
ホルモンの材料にも
なってるって言ってたね。
ま
そんな感じで、
いろんな要因に関わっている、
かなり重要な必須元素。
ぴ
振り返るとおもしろいね。
これ言ってたわ~ってなる(笑)
ま
それこそ、ヒトも窒素を得るために
たんぱく質を食べるし。
植物も、優先して窒素を吸収するので、
どちらにとっても重要視される元素って
イメージ。
ぴ
うんうん。あとは数字を覚えよう。
ま
あと、このあいだ、
虫を食べる植物の話を読んだじゃん?
ぴ
食虫植物ね。
ま
そうそう。
あれが、なんで虫を食べるのかって理由が、
「土壌に窒素が少ないから」で、虫を食べて、
たんぱく質・窒素を得るってことだったよね。
ぴ
うん(笑)
ま
窒素が土壌になければ、
地上から得ようとして進化したのが
おもしろいよね。
ぴ
ヒトは見習ったのかもしれない。
あ、こうやって窒素とればいいやんって。
ま
いや、あれを見てから
変えたわけじゃないやろう(笑)
ぴ
いやぁ、あれを知ったときは衝撃だったな。
ま
目的が窒素なのかってこと?
ぴ
なんか、食虫植物が
虫を食べちゃうのは知ってたけど、
なんでか?までは考えたことなかったからさ。
ま
うんうん。
ぴ
だって、ふつうは花粉を運んでくれる
存在じゃん?虫って。
ま
あーそっか、そっか。
ぴ
自分たちの活動範囲を広げてくれるための
存在なのが、ふつうなのに。
ま
共生というか、仲間だもんね。
それを捕っちゃう。
ぴ
そうそう(笑)
栄養になってもらうって仕組みが、
すごってなったし、なるほどぉってなった。
ま
あれはおもしろかったね。
ぴ
それくらい大事な栄養素ってことだね。