第6話 窒素2

メンバー

marcy
pino

窒素の種類

marcy

 前回は、窒素の役割をみました。
 今回はその続きとして、
 窒素の種類をみていきます。

pino

 種類?

marcy

 うん、「窒素」という元素は、
 基本的に1種類じゃん?

pino

 うん。

marcy

 でも、作物を育てるとか、
 肥料を与えるとかを考えるときは、
 土の中にある窒素はどんな種類か?も
 考える必要がある。

pino

 ふーん、なるほど。

marcy

 言い換えると、窒素という元素が、
 元素単体の状態でいるわけではない。
 なにかしらの化合物として
 入っているわけよね、土の中に。

pino

 うんうん。

marcy

 このときに分類の視点があって、
 大きくは2種類。

pino

 2種類。…答えるの?(笑)

marcy

 ぜひ(笑)

pino

 ……。

marcy

 では見ていきましょう(笑)
 まず大きな分類として登場するのが
 「有機態窒素」と「無機態窒素」。

窒素 — 有機態窒素
   — 無機態窒素

pino

 あぁー!
 これは出てきませんでした。

marcy

 もっと細かい分類を想像していたかな?

 有機態窒素は、名前の通り、
 有機物に含まれている窒素のこと。

 具体的には、前回みた
 「たんぱく質」に含まれる窒素とか。
 たんぱく質は有機物だから、
 ここに含まれる窒素は、「有機態窒素」。

pino

 うん。

marcy

 他には、「アミノ酸」や「尿素」に
 含まれる窒素もある。

 これらは、「動物や植物の遺体が
 完全に分解されていないもの」とか、
 「堆肥」とか、「有機質肥料」に
 含まれている。

pino

 尿素はなんで?

marcy

 尿素も有機物だから。

pino

 窒素も含まれているの?

marcy

 そうそう。尿素は窒素を含む化合物で、
 化学式だと「CH₄N₂O」だね。
 炭素1コ、水素4コ、窒素2コ、酸素1コから
 できているね。

pino

 ふーん、知らなかった。

marcy

 まぁ動物の糞尿とかにも
 尿素が含まれているし、
 そこに含まれている窒素は、
 「有機態窒素」ということだね。

pino

 なるほど。

marcy

 この「有機態窒素」が、大分類の1つめ。

窒素 — 有機態窒素
    (たんぱく質、アミノ酸、
     尿素などに含まれる)
   — 無機態窒素

ほそく。
尿素は一般的には有機物ですが、肥料の窒素成分を考えるとき、厳密には「有機態窒素」ではなく、独立した「尿素態窒素」に分類されます。今回は「無機態窒素ではない」という意味で、有機態窒素として扱っています。

marcy

 そしてもうひとつが「無機態窒素」。
 これも名前の通り、
 無機物に含まれている窒素のこと。
 無機物ということは、
 有機物ではない、ということ。

pino

 うん。

marcy

 ざっくり言っちゃうと、
 「炭素(C)を含まない化合物」のこと。

pino

 炭素が含まれると有機物なの?

marcy

 基本的にはそう。
 炭素(C)を含む化合物が有機物。
 注意しないといけないのは、
 例外として、二酸化炭素(CO₂)などは、
 炭素を含んでいても、構造が単純なので
 無機物に分類される。

pino

 へぇー、なるほど。

marcy

 なので、ここでのざっくりしたイメージは、
 有機物は複雑で大きい化合物で、
 反対に無機物は小さくシンプルな感じかな。

pino

 なるほど。

marcy

 そして、無機態窒素の中でも、
 作物が利用できるのは、基本的に2つ。

pino

 2つ。

marcy

 それがなんだったかというと…

pino

 アンモニア態窒素と、硝酸態窒素!

marcy

 正解!そうそう。

 アンモニアは、NH₄
 硝酸は、NO₃
 炭素は入ってないから、
 ここに含まれる窒素は、「無機態窒素」。

pino

 アンモニアがNH₄
 硝酸はNO₃
 はい。

marcy

 ということで、
 この「アンモニア態窒素」と
 「硝酸態窒素」が、
 作物が利用できる窒素として登場します。

窒素 — 有機態窒素
    (たんぱく質、アミノ酸、
     尿素などに含まれる)
   — 無機態窒素

    (アンモニア態窒素、
     硝酸態窒素)

pino

 うんうん。


無機態窒素の使い分け

marcy

 この2つの使い分けとして、
 畑作物は、硝酸態窒素を好んで使う。
 対して、水稲とかレンコンなど
 水中で育つ作物は、アンモニア態窒素を
 利用することが多い。

pino

 うんうん。

marcy

 つまり、無機態窒素には2種類あって、
 作物によって「こっちがほしいです!」が
 違うということだね。

無機態窒素 → アンモニア態窒素
       (水中で育つ作物が好む)
      硝酸態窒素
       (畑作物が好む)

pino

 なるほど。

marcy

 どうしてこういう違いがあると思う?
 畑作物は「硝酸態がいいっす!」って言ってるし、
 水中のは「アンモニア態がいいっす!」って
 言ってる理由。

pino

 考えたことなかった。

marcy

 僕もなかったよ(笑)

pino

 (笑)

marcy

 これを考えるときに前提となるのが、
 アンモニア態窒素と硝酸態窒素が、
 化学反応でつながっているということ。

pino

 アンモニアに、
 硝酸菌が作用して変わるんでしょ?

marcy

 おぉ正解。その通りです。

pino

 あ、「いる・いないか」か!

marcy

 なんか気づいた(笑)

 一回、前提を整理すると、
 土壌の窒素化合物として、
 アンモニア態窒素(NH₄-N)
 亜硝酸態窒素(NO₂-N)
 硝酸態窒素(NO₃-N)などがあると。

 この3つは化学変化でつながっていて、
 微生物の硝酸化成という作用で
 酸化されて変化していく。

NH₄(アンモニア)
↓酸化
NO₂(亜硝酸)
↓酸化
NO₃(硝酸)

 つまり、硝酸(NO₃)は、一番酸化された状態。
 酸化されるということは、酸素がいるよね。
 だから酸素が多い畑の方が、
 硝酸がたくさんあるし、畑作物はこちらを好む。

 対して水中の土壌は、
 還元状態で酸素が少ないから、
 酸化される前のアンモニア態窒素が多く、
 こちらを好む作物が多い。

pino

 なるほどぉ。
 硝酸菌によって、アンモニア態窒素が
 硝酸態窒素に変わることは知っていたけど、
 酸化しているってことだったんだね。

marcy

 そうだね。

pino

 へぇ。

marcy

 だから、
 微生物が起こす変化を踏まえたうえで、
 その環境で使いやすいものを
 作物が選んでいる、とも捉えられるね。

 ざっとまとめると、
 「窒素」という物質にも、
 作物育生や肥料視点では「種類」がある。

 そして植物の種類によって、
 「利用しやすい窒素がある」ということが、
 ここで把握したかったことです。

pino

 はい!


地力窒素

marcy

 もうひとつ、「地力窒素」という
 キーワードを見ておきます。

pino

 うん。

marcy

 「地力窒素」って試験でも出てくるけど、
 何を指している言葉か。

pino

 …なんて言ったらいいの…(笑)
 地力が保持できる窒素のチカラ…
 なんか違うな(笑)

marcy

 あぁ、それはちょっと
 名前に引っ張られすぎているかな。

 地力が保持できる量というよりは、
 地力によって提供される窒素
 みたいなイメージ。

pino

 量じゃないんだ。

marcy

 うん。さっき、
 「無機態窒素」のアンモニア態窒素と
 硝酸態窒素はつながっているよ、って
 話をしたじゃん?
 地力窒素はもう一歩戻ってもらって、
 「有機態窒素」と「無機態窒素」も
 つながっているよって話で。

pino

 うんうん。

marcy

 土の中に有機態窒素がありますと。
 例えば堆肥をまくと、ここに含まれる
 たんぱく質やアミノ酸の窒素が入る。
 この有機態窒素の一部は、
 微生物によって、だんだん分解されます。

pino

 うん。

marcy

 分解されると、有機物が外れて、
 無機態窒素に変化します

pino

 うん。

marcy

 これが変化したら、
 作物は利用できるようになるよね。

pino

 うん。

marcy

 この、変化によって出てきた窒素を、
 「地力窒素」と呼ぶ。

pino

 ふーん!

marcy

 なので、
 有機態窒素の状態で、土に窒素が入っていても、
 作物からしたら「使えない」もの。

 でも、微生物が分解してくれたら
 「使える」ようになる。
 土の中では、この変化が常に起こっているから、
 作物からしたら、
 「使える窒素が少しずつ供給される」
 ということになる。

 「地力窒素」は、この辺りの話だね。

 なので堆肥とかが
 「ゆっくり効いてくる」というのは、
 こういうことが起こっているから。
 入れた瞬間は、作物からしたら
 「使えない状態の窒素」。

 対して化学肥料は、
 無機態窒素で入っていることが多いから、
 「すぐ使える窒素」がやってくるということ。

pino

 うん。

marcy

 この「地力窒素」というキーワードは、
 今後もよく登場するので、
 今回のことを思い出してもらうと、
 話がわかりやすくなると思う。

pino

 この図でいうと、
 全部が地力窒素ということ?

marcy

 これで言うと、
 例えば尿素がアンモニアに変化するじゃん?
 この変化した量が地力窒素。

pino

 うんうん!そういうことか!


アミノ酸も吸収できる!?

marcy

 ということで、基本的に作物は、
 「無機態窒素」を利用する。

 ただ、例外というか、
 最近の研究を踏まえると、
 「アミノ酸」、有機態窒素だよね、
 これをそのまま根から吸収して
 利用している作物もあることが、
 明らかになってきているそうです。

pino

 へぇ~。

marcy

 実験では、大麦とか稲のことが載っていた。
 もしかしたら今後は、
 作物の窒素利用の考え方が、
 どんどん変わってくるかもしれないね。

pino

 無機物の状態まで小さくならなくても、
 アミノ酸くらいの大きさの有機物だったら、
 使えるってことよね。

marcy

 そうそう。

pino

 なるほどね~。

marcy

 考え方が変わってきてるのは、
 おもしろいよね。

pino

 アミノ酸のうま味を吸収してる…。

marcy

 味を感じてるのかなぁ、作物は(笑)
 あ、でも書いてあったのは、
 どのアミノ酸でもいいわけじゃなくて、
 吸収するアミノ酸の種類は
 決まっているみたい。
 好みはある(笑)

pino

 やっぱ選んでるじゃん(笑)


おまけトーク


分子レベルでそんな違いがあるなんて
いままで全然気にしたことなかった。
大きくなったらわかるよ?
たんぱく質と炭水化物は違うとか。


あぁ、レイヤーが変われば。


だって、尿素には炭素が入っているから、
それで吸収できないって、
なんか不思議だよね。


うんうん、おもしろいと思う。
ま、言い換えると、尿素の状態で安定して
土の中にあることが少ないんじゃないかな?
微生物が分解しちゃうし。

だったら、作物からしたら、
一瞬しか存在しない尿素を
吸収するシステムを作るよりは、
それが分解されて最終的にできあがるものを
吸収するシステムを作る方が、
合理的ではあるよね。


あぁ。
ヒトが葉緑体を持たなくていいや
となったのと一緒だ。


一緒なのか(笑)


(笑)


作物も自分のカラダのシステムは、
その環境を踏まえたうえで
進化しているし、
その前提には微生物の存在があるよね。


土の勉強が終わったあと、
私たちは微生物とか菌とか
その辺りにいきそう…


あるよ(笑)


土を勉強すればするほど…


微生物じゃん!ってなってくる(笑)


ありえますよ。


作物育生は土だよってなって、
土は結局、微生物だよってなっていくという。


土を作っているのは微生物だから(笑)


(笑)

さっきヒトの話が出たけど、
今回読んていて思ったのは、
ヒトも窒素は必須元素じゃん?
これを僕らは、食べ物の中の
たんぱく質として摂取してる。
で、消化管で分解して、基本的には
アミノ酸の状態まで小さくして、
腸から吸収している。

ということは、僕らは、
「有機態窒素」で取り込んで利用している、
ということだね。
これは植物とは違うところ。

これも結局、ヒトが食物連鎖の
上位にいる動物だから、
有機態窒素を利用できるシステムに
しておかないといけなかったんだな、
ってわかるよね。


なるほどね。


もしヒトが無機態しか利用できなかったら、
「肉食っても意味ねぇ」みたいになる。


うん。


もしくは、腸の中で、
もっと分解できるように
なってたかもしれない。


もっといっぱい菌を飼ってて。


可能性はある(笑)
でもそれをするよりは、
アミノ酸で吸収できた方がいいよねって
なったんだろうね。


すでに、無機態窒素を吸う植物って
存在がいるからね。
すごいねぇ。


逆を言うと僕らは、
直接、硝酸態窒素や
アンモニア態窒素を食べても、
栄養にならないんじゃないかなぁ、たぶん。


それができたら、
土食べてたら生きていけるもんね。


たしかに(笑)

もどる