第5話 窒素1
メンバー
肥料の3要素
marcy
前回は、
「肥料として与えなくてもいい必須元素」
炭素・水素・酸素を見ました。
今回からは、「肥料の3要素」と呼ばれる
窒素・リン・カリウムを見ていきます。
pino
はい!
marcy
まずはじめに、「肥料の3要素」に
ついて話しておくと、
必須元素があったよね、17種類。
pino
うんうん。
marcy
その中の、多量元素9種類の内、
窒素・リン・カリウムの3つが
こう呼ばれていると。
marcy
これがなぜかと言うと、
ひとつは「土壌中で不足することが多い」から。
pino
うんうん。
marcy
もうひとつは、それに対して
「肥料として与えたときの効果が現れやすい」。
この2つの特徴があるから
肥料の3要素と呼ばれる。
[肥料の3要素]
1.土壌中で不足することが多い
2.肥料として与えたときの効果が現れやすい
pino
なるほど。
marcy
この中でも、
まず窒素から見ていこうと思います。
pino
いっぱい使うから?
marcy
まぁ~そうじゃないかな。
多量元素で初めに見るといえば
窒素になると思うし、
書いてある順番も
だいたい「窒素・リン・カリウム」だし。
pino
呼びやすいリズムだしね(笑)
窒素の特徴
marcy
そんな窒素(N)という元素は、
作物体内に1~5%くらい含まれているそうです。
pino
含まれている…?
marcy
うん、水分を除いた状態で、
体内を元素にバラしてみたら、
数%は窒素、ということ。
pino
なるほどね。
marcy
また、作物が根から養分を
吸収するという視点で見ると、
一番多いのはカリウム(K)で、
その次が窒素(N)。
pino
ふ~ん!
marcy
だから、根が優先して
吸収しようとしている元素、と言えるね。
pino
たしかに。量として多いんだね。
marcy
そうみたい。
あと、さっき窒素が作物体内に
数%あると言ったけど、
これが何の材料になっているかというと?
pino
なんの材料??
marcy
うん、作物体内に窒素があります、
これは何の材料として存在している?
どんな物質として働いている?
pino
組織…細胞…
marcy
たしかに、細胞の材料にもなっているけど、
もう少し具体的にいうと?
pino
ヒント!
marcy
僕たちヒトは、
窒素を何から摂取している?
pino
たんぱく質!
marcy
そう、たんぱく質。
たんぱく質を作るには窒素が必要なので、
作物体内でも「たんぱく質の構成成分」として
存在している。
pino
ふーん。
marcy
そして、たんぱく質という物質は、
植物の中にある「酵素」とか、
生長するときに使う「ホルモン」の
材料でもある。
pino
なるほど。
いろんな構成成分になっている。
marcy
そうそう。もうひとつ、
具体的によく登場するのが、
葉っぱで光合成をするための…
pino
葉緑体?
marcy
そう、葉緑体・葉緑素(クロロフィル)の
構成成分にもなっている。
pino
クロロフィルの材料にもなってるの?
緑色じゃん。
marcy
色(笑)
まぁ、クロロフィルの材料として
一番よく登場するのは…
pino
マグネシウム!
marcy
そう、マグネシウムだけど、
マグネシウムだけじゃなくて、
窒素も材料になっているよ、という理解。
pino
なるほどね!
marcy
だから、もし窒素が完全に欠乏すると、
光合成にも支障がでるということだね。
あとは、核酸の材料にもなっています。
pino
プログラム、設計図。
marcy
そう、遺伝子だよね。DNAとかRNA。
pino
ヒトと一緒。
なのに、ヒトは葉緑体がないのね。
marcy
あったら、
光合成ができた可能性があるけど(笑)
pino
ふしぎ。
marcy
まぁ、その植物を食べる動物から
進化したってことでしょう。
自分で作るより、食べた方がカンタンだろうし。
pino
たしかに、たしかに。
窒素の影響度
marcy
つぎに、窒素の働きを踏まえた特徴なんだけど、
「作物の生育・収量・品質にいちばん影響する」
と言われています。
pino
だから、農業界隈で
よく話題に登場するんだね。
marcy
そうだね、窒素が不足したら
話が始まらない、みたいなポジション。
それこそ「窒素・リン・カリウム」の
順番で呼ぶし。(笑)
pino
しごと場でも、
まず最初にワードとして出てくる気がする。
marcy
あぁ。「まずは窒素」なのか。
pino
うん。
marcy
この「生育・収量・品質影響する」を
もう少し詳しく見ていくと、生育に関しては、
窒素の量が不足すると、生長が悪くなる。
具体的には、草丈が伸びなかったりとか、
分げつが少なくなったりとか、
葉っぱが小さくなったりする。
pino
うんうん。
marcy
その結果、収量も減ってしまう。
pino
うん。
marcy
一方、品質に関しては、窒素が過剰になると、
品質が低下するということが多い。
pino
うんうん。
marcy
例えば、窒素過剰によって、
生育が旺盛で伸びすぎたりとか、
葉っぱの色が濃くなりすぎたり、とかが起こる。
「濃緑色を呈する」って書いてある。
pino
うん。あとは「傷みやすい」も、ある気がする。
marcy
あ~そうそう!
ちょうど次に言おうと思ってた(笑)
pino
葉っぱがとろけて、
傷みやすいイメージ。
marcy
テキストでは
「病害を受けやすくなる」という
書き方がされていた。
この理由はわかる?
pino
はっきりした理由はわからないけど、
イメージとしては、なんだろな、
窒素という材料をたくさん使って
脆くなっている感じ。
marcy
そうそう、脆くなっているんだよね。
pino
度を超えると。
そんな印象があるね。
marcy
おぉ、やっぱり実感としてあるんだ。
一応、書いてあった理由としては、
光合成で糖を作るじゃん?
で、窒素が過剰にあると、作った糖を
たんぱく質の合成材料に使うらしい。
こうなると、割合的に「繊維質を作る」が減る。
pino
どういうこと?
marcy
えっと、繊維質って炭水化物とか、
その一種である食物繊維が材料じゃん?
pino
あぁ、繊維質を作っているのは糖だけど、
糖がたんぱく質の方に回されちゃうから…
marcy
本来作ろうとしていた繊維質の量が
減ってしまうんだって。
pino
ふーん。
marcy
そうすると、
作物のカラダ自体が軟弱になる。
バリアが弱くなるイメージかな。
で、弱くなるから病害を受けやすくなる。
こんな要因で、
品質が低下するパターンもあるみたい。
pino
へぇ、おもしろいね!
marcy
ブレーキがかからないのは、
さっき見た通り
「根が優先して吸収しちゃう」の
影響もあるのかもね。
pino
作物の窒素は、不足しても弱く育つし、
過剰でも弱くなる。
なんか、ヒトだとたんぱく質が
カラダを作る材料としてあるじゃん?
だから、なんで窒素がいっぱいあるのに、
カラダが弱くなるのかと思っていたけど、
植物を丈夫にするのは「糖」と考えたら
納得した。
marcy
そこは、植物とヒトの構造で違う部分だね。
pino
うんうん、食物繊維(糖)の、
役割が違うということだね、
marcy
そうだね、ヒトは食物繊維を
骨格としては利用していない。
ヒトの場合の骨格は、骨と筋肉。
骨の材料はリンとカルシウムとたんぱく質。
筋肉も、たんぱく質。
植物は骨や筋肉がないし、(笑)
代わりに繊維質で支えている、
ということだね。
pino
なるほどね。
しごと中のナゾが一個解けました。
これからは「糖足りなかったんだね~」と思って
見ることにします(笑)
marcy
いいね(笑)
ということで、「窒素を肥料として与える」
として見たときには、「適正な範囲がある」
ということです。
pino
うん。
marcy
そして、かつ、その範囲は、
「作物の種類によっても変わるよね」
ということが、イメージできるかなと
思います。
これが、ひとつ基本の視点。
pino
窒素を考える上での、基本の視点。
marcy
一言で言っちゃえば
「窒素肥料を与える適正範囲がある」
「作物の種類によって違う」だけなんだけど、
これに行きつくために、
今回の理由を知っておくと、
納得につながるかなと思います。
pino
なるほどね。おもしろいなぁ。
葉肥
marcy
さいご、ちょっと話が変わるんだけど、
窒素肥料を一般的に「葉肥(はごえ)」と
呼ぶんだよね。
pino
うんうんうん。
marcy
これ、なんでか知ってる?
pino
なんでか?(笑)
生長するときに入れる肥料だから?
marcy
そうそうそう(笑)
pino
でも「実肥」とかもあるじゃん?
marcy
そう、「花肥・実肥」はリンで、
「根肥」はカリウムのこと。
一般的な呼び方ね。
pino
ふーん。ほしいタイミングでの
肥料ってことだろうね。
marcy
そうそう。
ただ、これって実感レベルの話みたいで。
実際に育てていたら、こう感じることが多い。
pino
あ、だから農家さんとかが
「葉肥」って言ってたら、
窒素肥料のことだってわかるね。
marcy
そういうこと。
加えて説明したかったのは、今回見た通り、
窒素は作物の生育に大きく影響したよね。
たんぱく質や、核酸、
葉緑素の材料になっているから、
確かに葉の生長を促進させる。
けれど、根や実を育てるときにも
必須の栄養素なので、
実が大きくなったり、根が伸びるときに
いらないわけではない、ということ。
pino
なるほどね。
葉っぱだけに影響しているわけじゃない。
でも、窒素肥料の成果が見えやすいのが
初期の生長なんだね。
(つづく)