第11話 カリウム1
メンバー
カリ?カリウム?
marcy
今回は、肥料の三要素の3つめ
カリウムです。
pino
お願いします。
marcy
カリウム、元素記号では「K」
pino
ケー。
marcy
大文字で「K」って書くよね。
これ、元素の名前的にはカリウムなんだけど、
肥料の話をするときは
「カリ」って呼ばれることが多いよね。
pino
うんうん。
「加える」に「里」ね。
marcy
そう、漢字だと「加里(カリ)」
これ、理由がわかりません(笑)
pino
わかりません?(笑)
里に加える肥料だから、
でいいんじゃない?
marcy
あぁ漢字ね、
里で不足してたってこと?(笑)
pino
「根肥」だし。
marcy
まぁ、漢字はそういう意味で
当てられてる可能性はあるかもだけど…(笑)
一般的な化学の話とか、
ヒトのカラダの話をするときは
「カリウム」って言うじゃん?
でも肥料の話をするときは、
「カリ」って言うし、
文章的にもそう書いてあるのよね。
商品とか、本の説明とかにも。
pino
うんうん。
marcy
なので、けっこうスタンダードな
呼び名なんだけど、
なぜそう呼ぶようになったのかが、
調べてもわからなかった。
言いやすいからかな?
「窒素・リン酸・カリ」って。
でも「リン」は「リン酸」で
名前のびてるし。
pino
たしかに(笑)
理由、またいつかどこかで出会うかな。
marcy
出合ったら教えて(笑)
pino
わかった。
marcy
今回は、そんなカリウム
「カリ」さんのお話です。
カリウムの働き
marcy
カリウムは、
肥料の三要素と言われるくらいなので、
作物体内ではいろいろな仕事をしています。
pino
うん。
marcy
主には、イオンの状態で、
浸透圧の調整をしています。
pino
なるほどね、ヒトでも一緒だね。
marcy
おぉ、そうなのよ。
pino
いえい。
marcy
他には、pHを安定化させたり、
酵素を活性化させたり、
気孔の開閉に関わったりしてます。
あとよく言われるのが、
光合成を促進して、
でんぷんの蓄積を増進させるという働き。
pino
うん、なるほど。
marcy
もうひとつ、
「ショ糖の転流を促進する」という働きも。
pino
ふ~ん。
marcy
カンタンに言うと、
葉っぱで作られたものを、
根や実に送る仕事。
pino
うんうん。
転がして流してるのね。
marcy
そう、糖は葉っぱでできるから、
それを他に配ってる。
pino
ころがす。
だから、カリウムで「K」なんだ!
marcy
あ、「Korogasu」?(笑)
いいんじゃない(笑)
pino
覚えましたね(笑)
marcy
はい(笑)
【カリウムの主な働き】
イオンとして浸透圧の調整
pHの安定化
酵素の活性化
膜浸透、気孔の開閉
光合成能を促進
(でんぷんの蓄積を増進)
ショ糖の転流を促進
(葉でできたものを根や果実に送る)
marcy
また、さっき言ってくれたように、
一般的には「根肥(ねごえ)」と呼ばれる。
pino
うん。
marcy
これは、
「窒素やリンに比べて、カリウムは
根の発育に不可欠だから」と説明される。
ただし、
今見た具体的な働きから考えると、
根に限った仕事ではないことがわかるよね。
葉っぱでできた糖の
転流とかを担当しているし。
pino
うんうん。
marcy
なので、
実際の作物体内での働きと、
肥料として与えたときの実感が、
ちょっと違うのかなって思う。
ふしぎな感じ。
pino
実際にやってる人の
感じなんだろうね。
marcy
うんうん。
もうひとつ、
カリウムの特徴として
作物体内で不溶性の化合物を
作らないとされている。
カラダを支える材料じゃなくて、
水に溶けてて仕事をしているってことだね。
pino
つねに流れ者。
marcy
そうだね(笑)
これ、ヒトの場合も同じで、
カリウムは細胞内液の主要イオン(K⁺)として、
浸透圧を調節して、細胞を維持しているよね。
だから、基本的にカリウムって、
そんな印象のやつ。
pino
調節役なんだね。
なるほどね。
marcy
あと、ヒトの場合は、
カリウム欠乏は基本的に起こりにくい。
もちろん、激しい下痢とか、大量の発汗、
利尿薬の作用などは別だけど、
一般的な食事をしている限り、
欠乏は起こらない。
この点は、作物とは違う部分だね。
pino
作物は欠乏が起こりやすいの?
marcy
だって、肥料の三要素って
言われるくらいだから。
pino
あぁなるほどね。
marcy
うんうん。
植物
→カリウムが不足しやすい
ヒト
→カリウムは不足しにくい
土の中での状態
marcy
次は、そんなカリウムが、
土壌の中でどんな形態で
存在しているか、というお話。
pino
うん、形態ね。
marcy
窒素やリン酸でもみたよね。
カリウムの場合は、
大きく3つのパターンがあります。
pino
また3つ…(´・ω・)
marcy
(笑)
1つめは、さっき言った通り、
水に溶けていることが多いので、
土の中でも、土壌溶液の中に
水溶性カリウムとして存在している。
pino
ふ~ん。
marcy
この状態はきわめて少ない。
ちょっとだけ。
pino
うん。
marcy
2つめは、
土壌粒子に保持されている、
交換性カリウム。
ま、土の粒に電気的に引き寄せられて
くっついているイメージ。
この状態が一番多い。
pino
うんうん。
marcy
3つめが、
鉱物に含まれているものや、
粘土鉱物と強く結合していて、
作物が利用しにくい
非交換性のカリウム。
石や岩に含まれていたり、
別の物質とくっついてしまっている
ものだね。
【カリウムの形態】
1.水溶性カリウム
(土壌溶液中に硫酸塩.塩化物などで存在)
2.交換性カリウム(置換性カリウム)
(粘土粒子に保持)
3.非交換性カリウム
(鉱物に含まれる.粘土鉱物と結合している)
pino
なるほど。
カリウムは、わかりやすい区分やな。
marcy
たしかに(笑)
ちなみにこの3つは、
自然界でバランスがとられているようで。
水溶性や交換性が少なくなると、
非交換性のものが移動してくるらしい。
pino
すごいじゃん(笑)
土の中にいても
均衡を保とうとしてくれている。
marcy
たしかに!
体内の細胞同様、カリウムは
バランスがとりたいんだな(笑)
pino
世界を見てるわ。
marcy
そして、
作物の根が直接利用できるのは、
水溶性と交換性の2つ。
pino
うんうん。
marcy
ただ、土の中のカリウムの
濃度が低いことと、
雨などで流れやすいことで、
カリウムは欠乏しやすい存在になっている。
pino
なるほどね。
そもそも居ないから。
marcy
あと、窒素やリンと違って
「有機態カリウム」がないのよね。
だからカリウムは、
土壌の中で有機化合物の材料には
なりにくい。
これ、さっき「作物体内で不溶性の物質を
構成しない」って言ってたけど、
土の中でも似た状態になってる。
pino
ひとりでいたいのかな。
marcy
あんまり大きなチームは
作らない(笑)
よって、基本的に土壌中のカリウムは、
無機物として存在している。
pino
うん、なるほど。
marcy
じゃぁ、土壌に含まれる
有機物的なカリウムがないのかというと、
それは「作物遺体」になるらしい。
葉っぱとかが落ちたら、
そこにはカリウムが入ってるってことだね。
pino
あぁ~。
これ、ゆっくり供給されるってことかな。
marcy
そうだね、
ゆっくり分解されて出てきて、
水溶性や交換性になる。
だだし、そこから
有機化合物の材料にはならないと。
pino
鉱物の中に戻るってことは
ないかな?(笑)
marcy
それは、ないんじゃないかなぁ~
土の話をしていて、
「途中で岩ができました」ってないし(笑)
ぜいたく吸収。
marcy
そんな状態で存在してるカリウムには、
「植物の根は、土壌にカリウムが
あればあるだけ吸収する」
という特徴もあります。
pino
あ~なるほど。
marcy
これを一般的には、
「ぜいたく吸収」と呼ぶそう。
pino
うんうん。
marcy
ただ、たくさん吸収するんだけど
生きるための要求量は、
窒素ほど多くはない。
pino
なんと。
もともと土に少ないから、
とりあえず取り込んでおけ、
みたいな感じ?
marcy
そうだと思う。
これも実験的に
確かめられていて。
カリウムを大量に施肥しても、
作物の生育や収量は増えない。
でも作物体内のカリウム濃度は上昇する。
pino
へぇ~。
marcy
だから、必要量は満たしているけど、
それ以上に吸っていると。
しかも、カリウムが過剰になると、
拮抗作用でマグネシウムの吸収が減る。
すると体内の塩基バランスが崩れて、
たんぱく質の合成能力などが低下すると。
pino
なんかすごい不本意な…。
カリウム自身はバランス保とうとしているのに、
ぜいたく吸収されるがゆえに、マイナス面が…。
marcy
たしかに(笑)
なので、植物はカリウムを
たくさん吸収するんだけど、
何かの不足を起こす性質ももっている、
ということ。
pino
拮抗作用、あるよね。
作物との関係
marcy
次に、作物とカリウムの
よく言われる関係性を見ておきます。
さっき、光合成や糖の転流を
促進するって言ったよね。
pino
うん。
marcy
これが具体的には、
さつまいもやじゃがいもの
肥大に関係する。
pino
ふ~ん。
marcy
単純に言うと、
でんぷんを蓄えるいも類とか
果実類と関連が強い。
pino
それらに多く要る?
marcy
そうそうそう。
カリウムが活躍するってイメージかな。
それこそ、葉っぱを食べる
ほうれん草とかよりも、
でんぷんを蓄えないといけない
いもの方が、カリウムは欲しいよね。
pino
あぁ、なるほど。
働きを知ってたら、
つながりやすいね。
この野菜にどの栄養素が要るかって。
marcy
たしかに。
ほうれん草は窒素がほしかったもんね。
「成長途中の葉だから」って。
pino
うんうん。
つながってくるね。
marcy
逆に不足すると、
糖・有機酸・アミノ酸の合成が低下する。
これが、トマトやミカンの味に影響するそう。
カリウムが適正なトマトはコクがある、
カリウムが過剰なミカンは酸っぱくなる、
と書いてたよ。
pino
うまく転がせなくなるのかな。
marcy
転流ね(笑)
もうひとつ、カリウム量が適切だと、
「病害抵抗性が増す」もある。
pino
うん。
marcy
これは、リグニンなどの
繊維質が増えることと、
菌の餌になるものが
減少することが要因らしい。
ま、壁が強くなって、
菌のエサが作られなくなると。
pino
うんうん。
なんでカリウム摂ると、
壁が強くなるの?
marcy
おそらく、リグニン(木質)を
作る材料には糖が必要だから、
光合成と転流を促進するカリウムが
活躍するんだと思う。
pino
うわっ、なるほど。
奥深いねぇ。
【作物との関係】
・サツマイモやジャガイモの肥大に関係する
・トマトやミカンの味に影響する
・カリウムが適正だと病害抵抗性が増す