[3級過去問解説]は、土壌医検定3級の過去問(2018-2020年度)を、解説しています。本来の問題は3択ですが、1問ずつバラして、自分でもわかるような解説文を書いています。

1.栽培環境/2.土壌環境

答え
× 半促成栽培は、促成栽培より収穫が遅い

野菜などの栽培において、自然条件とは異なる時期に栽培するための条件や技術の組み合わせを「作型」と呼ぶ。作型には、「品種選択型」と「環境制御型」がある。

「品種選択型」
春播き栽培、夏播き栽培、秋播き栽培

「環境制御型」
普通栽培(露地栽培)、早熟栽培、促成栽培、半促成栽培、抑制栽培などがある。

促成栽培は、保温や加湿による温度管理(ビニールハウスや温室など)を行い、早く収穫する方法である。半促成栽培は、一時的に保温や加湿をする方法であり、普通栽培(露地栽培)よりは早いが、促成栽培よりは遅いタイミングでの収穫となる。

答え
〇 キュウリやピーマンなどは、露地栽培・半促成栽培・促成栽培・抑制栽培を組み合わせて、周年栽培されている

作型によって、行われる地域や播種時期、収穫時期が変わる。(条件をバラすことで、常にどこかで収穫できるようにしている)

答え
× ピーマンは、品種選択型ではなく、露地栽培や促成栽培などの環境制御型によって周年供給されている。

周年供給するための作型としては、「環境制御型」(普通栽培(露地栽培)・早熟栽培・促成栽培・半促成栽培・抑制栽培)と、「品種選択」(春播き栽培・夏播き栽培・冬播き栽培)がある。

主に品種選択によって周年供給されているものには、キャベツやダイコンがある。

答え
団粒構造は、主に微生物によって形成される。

団粒構造とは、土壌粒子(粘土や腐植)が結合して集合体を作ったものである。小さな集合体は、さらに集まって大きな集合体を作る。これにより、土壌の中に大中小の孔隙が生まれる。これは、植物の根も一部関わるが、主には土壌生物・微生物の働きによって作られる。

微生物が有機物を分解する際に、分泌物を出し、これが接着剤の役割をする。

答え
× リン酸吸収係数は、化学的緩衝能でコントロールされるものではない。

土壌には、環境の変化を和らげるための「緩衝能」がある。化学的緩衝能とは、養分量やpHなどの急激な変化を抑える性質である。

電気伝導度(EC)」は、土壌中の電気の伝わりやすさであり、これは土壌中の養分量(特に硝酸態窒素)と関連する。よって化学的緩衝能が関わる。

対して「リン酸吸収係数」は、土壌がリン酸を吸着・固定する能力であり、これは土壌の種類によって概ね一定である。よって化学的緩衝能でコントロールされるものではない。

答え
〇 土壌には、病原菌の急激な増加を抑える生物的緩衝能がある。

生物的緩衝能は、土壌微生物による能力である。

答え
× 土壌の緩衝能は、土壌管理によって変化する

土壌がもつ、環境の変化を和らげるための「緩衝能」には、物理的・化学的・生物的の3つがある。これらは土壌の管理(耕耘や施肥)によって変化する。安定した作物栽培には、緩衝能を上げるための管理が必要である。

答え
× 根で糖は合成されない。葉で合成される。

呼吸」には、外界と酸素・二酸化炭素の出し入れを行う外呼吸と、細胞内外で行う内呼吸がある。内呼吸は、生命活動に必要なエネルギーを得る過程である。

根は、そのエネルギーを利用して、養分の吸収・窒素化合物の合成・生育調整物質(サイトカイニン)の合成などを行う。(サイトカイニンは、植物ホルモンの一種。)

糖の合成は、主に葉で行われるので、根の働きではない。ただし、根から糖の分泌は行われる。

答え
× 落葉果樹は、根にも養分を貯蔵する機能がある

根には、養水分の供給以外にも、養分を貯蔵する機能がある。例えば、サツマイモやダイコンなどは、多くの養分を蓄えている。また、落葉果樹も、翌年のための養分を根に蓄えている。(芽や開花のために使う)

答え
〇 根から分泌される物質は、根の周りの微生物相を豊かにする

根から分泌される根酸(有機酸)は、リン酸の吸収をよくする。また、土壌微生物の餌となる、アミノ酸も分泌される。

答え
ナシに適する土性は、壌土である。

作物には、生育に適した土壌の種類や土性がある。

また、土性の区分(日本農学会法)は、
砂土(さど)
砂壌土
壌土
埴壌土
埴土
(しょくど)
の5つがある。(粘土含量の少ない順)

ナシは、壌土(粘土34%)が最も生育がよいとされる。つまり、比較的粘土が多くて保水性がほしい(ある程度水分要求量が高いが、過湿も過乾も嫌う)という特徴を持つ。

答え
モモに適する土性は、砂壌土である。

モモやブドウは、砂壌土(粘土17%)が最も生育がよいとされる。

つまり、通気性がよい土を好む(ナシよりも乾燥が好き)。とくにモモは、過湿状態になると根腐れを起こしやすい。

答え
黒ボク土に適している作物には、ラッカセイがある。

作物は、土壌の性質と適合すると、高品質で高収量が得られやすい。黒ボク土は、表層の腐植含量が高く土層が深くやわらかいという特徴がある。また、地下水位が低いため、地中で育つ根菜類・イモ類・ラッカセイなどとの相性がよい。

答え
× わが国では、灰色低地土が最も多く分布している。

各地に分布する土壌は、特徴によって分類されている。主なものには、黒ボク土、灰色低地土、褐色森林土、褐色低地土、赤色土・黄色土、グライ土などがある。(土壌が作られる環境要因が異なるため、できあがる土壌の特徴も変わる)

日本の分布面積の多い順では、1.灰色低地土・2.黒ボク土・3.グライ土・4.褐色森林土と褐色低地土・5. 黄色土となっている。

黒ボク土は、火山灰と腐植が材料になっており、日本に特徴的な土壌である。
灰色低地土は、母材が水の影響や酸化によって灰色化したものであり、平野や扇状地などに広く分布している。

ちなみに、畑土壌で最も多いのは黒ボク土、水田土壌で最も多いのは灰色低地土となっている。

答え
〇 西日本の台地や丘陵地では、黄色土や赤色土などが多い。

・台地・丘陵地の土壌
西日本は黄色土や赤色土などの粘土質(緻密な土壌)が多くみられる。対して、北海道や東北・関東・九州では、黒ボク土が多い。

・山地の土壌
主に褐色森林土

・低地の土壌
灰色低地土・グライ土・褐色低地土

*台地・丘陵地は、地域によって種類が違うことが特徴

答え
× 沖積土では、畑作物よりも水稲が栽培されている。

沖積土(ちゅうせきど)は、河川の氾濫などにより、上流の土が低地に堆積したものである。扇状地などに分布し、土壌の種類的には、灰色低地土にあたる。排水はよくないため、主に水田に利用されている。

答え
× 地温の上昇を抑えるために、作土深は少なくとも15~20cmは確保する。

ここでの作土深は、水田の地表面からすき床(耕盤)までの深さのこと。水稲の根が広がるためには一定の広さが必要であり、一般的には15~20cm必要とされる。これが浅いと、根の張りも浅くなり、地温上昇による高温障害を受けやすいとされる。

*すき床(耕盤)
水田の作土真下にある、水を蓄えるためや農業機械の重荷に耐えるために作られた土層。

最近は、作土深が浅くなる傾向(10~12cm)にあり、高温障害を受けやすくなっている。

答え
× 登熟初期には、窒素が切れないようにする

登熟とは、穀物の種子が発育・肥大すること。登熟期に窒素が不足すると、白未熟粒が発生し、品質が低下する。(窒素は作物の生育と収量に大きく関わる元素)

白未熟粒は、外観の品質低下であり、胚乳全体が白くなる場合と、腹や背など一部が白くなる場合がある。

答え
〇 水稲の高温障害対策において、地力窒素の発現を維持するため、堆肥等の有機物を投入する

地力窒素とは、土壌微生物が有機物を分解して作る無機態窒素(アンモニア態窒素・硝酸態窒素)を指す。水稲は地力窒素の依存度が高く、吸収窒素の約60%を占める。そのため、稲わらや堆肥などの有機物の投入が重要となる。

*窒素が不足すると、生育に影響がでるので、高温障害も受けやすくなる。

答え
× 火山灰土の固相率は、一般に16~30%程度が望ましい。

固相率とは、土壌に占める固体(土壌粒子や腐植)の割合である。他には、液相率(水分)と気相率(空気)がある。

固相率は、土壌の種類によってほぼ一定であり、一般的には40~45%が適する。ただし、火山灰土は例外的に、16~30%と低くなっている。

*これは、火山ガラスなど、火山灰土に含まれる組織の特性によるもの。

答え
× 22mm以下であることが望ましい。

土壌の硬さは、土の孔隙率(土全体に対する気相と液相の割合)・有機物含量・土性などによって決まる。これは作物の根の伸長に影響するため、適切な値にする必要がある。

一般的には、土壌を垂直に掘った断面に使用する「山中式土壌硬度計」が用いられる。このとき、22mm以下が望ましく(細根が発達できる)、25mm以上になると根の分布が困難になるとされる。

(mmは、硬度計を土に刺したときに、バネがどれくらい跳ね返るか?という値。よって値が大きいほど、土が硬い、となる)

答え
〇 施肥前の電気伝導度(EC)は、0.3mS/cm以下であることが望ましい。

EC(Electrical Conductivity/電気伝導度)は、土壌中の電気の伝わりやすさであり、塩類濃度の指標である。これは土壌中の養分量、特に硝酸態窒素と関連する。よって、窒素肥料の残存率を知る目安となる。単位は、mS/cm(ミリジーメンス パー センチメートル)

適切なECは、土壌の性質によって異なるが、おおむね0.1〜0.8mS/cmである。

ただし、施肥前の状態でECが高いと生育障害を受ける作物が多くなるため、「施肥前では0.3mS/cm以下であることが望ましい」とされる。

答え
× 有機JAS農産物と、特別栽培農産物のルールは異なる

有機JAS農産物は、「播種前2年以上および栽培期間中に、対象となる農薬・化学肥料を使用していないもの」、特別栽培農産物は、「栽培期間中に、対象となる農薬・化学肥料を減じて生産されたもの」(播種前の使用については規制していない)をさす。

有機JAS農産物は、JAS法に定められた基準を満たしたもの。(任意の規格)
特別栽培農産物は、農林水産省の「特別栽培農産物に係る表示ガイドライン」に基づいて栽培されたものをいう。

答え
〇 有機登録認定機関から認定を受けた農産物のみが、有機JASマークを付け、有機農産物としての表示をすることができる。

全体の流れとしては、以下の通り。
有機農業で生産する→JAS法で定められた基準をクリアしている→有機登録認定機関から認定を受ける→有機JASマークが付く→「有機の表示」をすることができる

答え
× 生育が悪くても、化学肥料や農薬を用いることはできない

有機JAS農産物は、播種前の2年間と栽培期間中に、対象となる肥料や農薬を使うことはできない。この制限があるため、有機農業では、安定した生産ができるまでに数年かかることや、一般的に慣行栽培と比べて収量が低下することが挙げられる。

答え
× 「化学肥料の窒素成分量の節減割合が、慣行レベルの50%以下であること」

特別栽培農産物の条件における化学肥料は、窒素成分量に対して設定されている。また、ここでの「慣行レベル」とは、各地域の慣行的に行われている農薬や化学肥料の使用状況のことである。

答え
× 「節減対象農薬の使用回数が、慣行レベルの50%以下であること」

農林水産省の「特別栽培農産物に係る表示ガイドライン」による。節減対象農薬は、化学合成農薬全般のこと。

答え
〇 「化学肥料の窒素成分量が、慣行レベルの50%以下であること」。

特別栽培農産物の定義は、
1 当該農産物の生産過程等における節減対象農薬の使用回数が、慣行レベルの5割以下であること。
2 当該農産物の生産過程等において使用される化学肥料の窒素成分量が、慣行レベルの5割以下であること。

「特別栽培農産物に係る表示ガイドライン」

答え
× 収穫の前3年以上禁止された農薬や化学肥料を使用していない農地で栽培されたものをいう。

有機農産物の生産の方法についての基準(ほ場)*抜粋
1 多年生の植物から収穫される農産物にあってはその最初の収穫前3年以上
それ以外の農産物にあってはは種又は植付け前2年以上の間

このほ場に使用する種子又は苗等の項、ほ場における肥培管理の項、ほ場又は栽培場における有害動植物の防除の項及び一般管理の項の基準に従い農産物の生産を行っていること。(有機農産物の日本農林規格)

ちなみに、「転換期間中のほ場」については、「転換開始後最初の収穫前1年以上」とされている。転換期間中とは、農薬や化学肥料を使用していないのが「6か月以上3年未満」の場所という意味。ただしこの場合は、商品に「転換期間中有機農産物」と表示しなければならない。

答え
〇 有機JAS規格を満たすことで有機JASマークを付け、有機の表示をすることができる。

有機農業で生産する→JAS法で定められた基準をクリアしている→有機登録認定機関から認定を受ける→有機JASマークが付く→「有機」の表示をすることができる。

答え
× 化学肥料においては、「窒素成分量が慣行レベルの50%以下のもの」とされる。

特別栽培農産物の肥料のルールにおいて、化学肥料の三要素(窒素・リン酸・カリウム)のうち、窒素についての規定がある。

参考
新版 土壌医検定試験既出問題集2018-2020
一般財団法人 日本土壌協会
図解でよくわかる 土・肥料の基本
一般財団法人 日本土壌協会
誠文堂新光社/2021第7刷
土は土である 作物によってよい土とは何か
松中照夫/農文協/2013

3.化学性

答え
× ケイ素は、必須多量元素ではない

植物の多量必須元素は、炭素(C)・水素(H)・酸素(O)・窒素(N)・リン(P)・カリウム(K)・カルシウム(Ca)・マグネシウム(Mg)・イオウ(S)の9種類ある。

ケイ素(Si)は有用元素に分類されており、これは「必須元素ではないが、特定の作物にだけ必要とされるもの」を指す。とくに、稲や麦の有用元素として扱われる。

答え
× 肥料の三要素の中で、カリウムの吸収量が最も多い。ただし、作物の生育に特に大きな影響を与えるのは窒素である。

肥料の三要素とは、窒素・リン酸・カリウムのこと。

作物は、カリウムを最も多く吸収するという特徴がある。(マメ科以外)
カリウムは、光合成や炭水化物の移動、たんぱく質の合成、浸透圧の維持などに関わる。

対して窒素は、作物の生育と収量に最も大きく関わる養分である。たんぱく質・アミノ酸・酵素・葉緑素の構成成分であり、根の生育・茎葉の伸長をよくする。

答え
〇 多量必須元素のうち、酸素・水素・炭素は、肥料として与える必要がない

9種類の多量必須元素、炭素(C)・水素(H)・酸素(O)・窒素(N)・リン(P)・カリウム(K)・カルシウム(Ca)・マグネシウム(Mg)・イオウ(S)のうち、酸素・水素・炭素の3つは、自然界(空気中や土壌の水分)から必要分を補給される。そのため、普通は肥料として施用することはない。

答え
× 土壌のpHが高いと、マンガンやホウ素の欠乏症が発生しやすい。(ジャガイモのそうか病は、発生しやすい。)

土壌のpHが高い(アルカリ性になる)と、マンガンやホウ素などが根から吸収されにくくなり、欠乏症が発生しやすい。反対に、pHが低い(酸性になる)と、マンガンの溶解性が増加して過剰症が発生しやすくなる。

ジャガイモのそうか病(瘡痂病)は、表皮にかさぶたのような病斑がみられる病気である。細菌(ストレプトマイセス属菌)が原因となる。こちらは、pHが6.5以上の中性~アルカリ性に傾いていると、発生しやすい。

*そうか病は、病変部分を除けば食べられるが、見た目が悪くなるので、市場価値が下がる。

答え
〇 土壌の電気伝導度(EC)が高いと、作物が萎れやすく(枯れやすく)なる。また、カルシウムの欠乏症などが発生しやすい。

EC(Electrical Conductivity/電気伝導度)は、土壌中の電気の伝わりやすさであり、塩類濃度の指標である。塩類濃度が基準値以上に高くなると、土壌溶液の浸透圧が高くなり、根からの水分吸収が妨げられて作物が枯れやすくなる。

また、化学肥料の副成分(肥料に入っているメイン以外の成分)である硫酸イオンや塩素イオンが過剰になると、カルシウムやマグネシウムと結合し、土壌表面に集積する。そのため、カルシウム欠乏が起こりやすくなる。

答え
× 過剰や欠乏の影響が生育・収量に最も現れやすいのは、窒素である。

窒素は、主にたんぱく質の構成成分として働き、作物の生育・収量に最も影響する。

リン酸の過剰による障害は、比較的発生しにくいとされる。ただし過剰障害の報告はあり、カリウム・マグネシウムの交換性塩基含量の低下、亜鉛・鉄の吸収抑制などが起こる。

答え
× ナトリウムは、テンサイやシュンギクの生育にとって有用元素である。

有用元素は「必須元素ではないが、特定の作物にだけ必要とされるもの」を指す。

イネケイ素が代表的であり、他にもテンサイシュンギクにとってのナトリウムがある。

(*綿(ワタ)については、ナトリウムを除いても生育に大きな影響がでない、と報告しているものがありました。)

答え
〇 ケイ素は、水稲にとっての有用元素である。

ケイ素と水稲
・ケイ素不足水田では、ケイ酸施用により、収量・品質向上が期待できる
・高温障害を軽減することが期待できる
・病害抵抗性の向上が期待できる

答え
× ホウ素は、必須微量元素である。

ホウレンソウに限らず、ホウ素は植物にとっての必須微量元素である。とくにアブラナ科の野菜は要求量が多いため、不足しやすい。

・必須微量元素
植物の生命活動に必要な要素のうち、必要量の少ないものを指す。
鉄(Fe)・マンガン(Mn)・亜鉛(Zn)・銅(Cu)・塩素(Cl)・モリブデン(Mo)・ニッケル(Ni)・ホウ素(B)の8種類。

答え
マグネシウム

窒素・マグネシウム・硫黄は、すべて作物の多量必須元素である。
中でも、窒素と硫黄たんぱく質の構成元素であり、マグネシウムは、葉緑体の構成元素となる。

答え
× 黒ボク土や赤黄色土では、リン酸は作物に利用されにくい

土壌に含まれるアルミニウムや鉄が、リン酸と結合すると、作物はリン酸を吸収できなくなる。(リン酸が固定される)
この程度は、腐植の割合やpHによって変動するが、土壌の種類も影響する。

なかでも黒ボク土は、天然の腐植が多いが、酸性が強いため、活性アルミニウムがリン酸を固定しやすい

この割合は「リン酸吸収係数」と呼ばれ、乾土100gが吸収固定するリン酸の量(mg)で表される。目安は「1200」で、火山灰土は1,500以上、非火山灰土は500~1,000程度であることが多い。1,000以下の土壌では、あまり問題にならないが、1,500以上だと土壌改良が必要となる。

黒ボク土は、リン酸吸収係数が1,500以上である。

答え
× リン酸が土壌中で鉄やアルミニウムと結合すると、作物に利用されにくくなる

土壌に含まれるアルミニウムや鉄が、リン酸と結合すると、作物はリン酸を吸収できなくなる。(リン酸が固定される)

これは、水に溶けにくい難溶性のリン酸に変わるためである。

答え
〇 畑地よりも、水田環境下の方が、リン酸は作物に吸収されやすい状態となる。

水田の土壌は、水を溜めることによって、大気からの酸素供給が制限される。また、酸化された鉄や二酸化マンガンなどが、微生物によって利用される。その結果、土壌は還元状態になっている。

還元状態が進むと、水(H₂O)が関連する化学反応が起こり、pHが上昇する。pHが上昇すると、リン酸の固定力が低下するため、リン酸の可溶性が上昇する。よって、リン酸は作物に吸収されやすい状態となっている。

*pHを上昇させる化学反応とは、水素イオン(H⁺)を消費して、水(H₂O)を作る反応。

答え
埴壌土

陽イオン交換容量(CEC/(Cation Exchange Capacity/カチオン エクスチェンジ キャパシティ)とは、土壌粒子が陽イオンを吸着できる最大量を指す。

土壌粒子(粘土鉱物や腐植)は、通常マイナスの電気を帯びている。そのため、陽イオン(プラスの電気)を引きつける力がある。土壌に必要な養分の中で、アンモニア(窒素)・カリウム・カルシウム・マグネシウムは陽イオンになるため、マイナスの電気を帯びた土に吸着される。

よって、CECが高ければ、それだけたくさんの養分を保持できることを表す。

CECは、粘土含量が多い土で大きいという特徴がある。土性で考えると、
埴土>埴壌土>壌土>砂壌土>砂土
の順になる。

*砂質でCECが低いのは、腐植が少ないから。

答え
× 腐植は、土壌中で粘土粒子などと有機・無機複合体を形成して存在しているものが多い

腐植は、動植物の遺体を微生物が分解する事でできる。黒色の土壌有機物であり、土壌中では、単独で存在するものもあるが、多くは粘土粒子などと有機・無機複合体を形成している。

腐植には、作物に供給する養分の貯蔵庫・団粒構造の形成・陽イオン交換容量(CEC)の上昇による保肥力の増加などの役割がある。

答え
〇 腐植物質の陽イオン交換容量(CEC)は、粘土鉱物より大きい

粘土鉱物は、粘土を構成する微細な粒子のことである。(砂や火山灰から流れ出た無機物から生成される)

対して腐植(腐植物質)は、動植物の遺体を微生物が分解する事でできる、黒色の土壌有機物である。

腐植物質は陽イオン(カルシウム・マグネシウム・カリウム)を維持する力が強く、保肥力を高める。(肥料の持ちがよくなる)

*腐植と腐植物質
動植物の遺体を微生物が分解し、黒色の物質にまで変化したものを「腐植物質」、変化の過程にある成分を「非腐植物質」と呼ぶ。「腐植」は、「腐植物質」だけを指す場合(狭義)と、「腐植物質」「非腐植物質」をまとめて指す場合(広義)がある。

答え
× 腐植は、リン酸の固定(リン酸吸収係数)には影響しない

腐植は、陽イオン(カルシウム・マグネシウム・カリウム)を維持する力が強く、保肥力を高める。(肥料の持ちがよくなる)。これは陽イオン交換容量(CEC)に影響する。

リン酸の固定(リン酸吸収係数)は、主にpHの低下(酸性化)が影響する。

答え モリブデン

マンガン・ホウ素・モリブデンは、いずれも植物の微量必須元素である。また、微量必須元素の中で、欠乏症や過剰症の問題が多いのは、マンガンホウ素とされている。

土壌のpHがアルカリ性域(pH7以上)になると、微量必須元素である鉄・マンガン・ホウ素・亜鉛・銅は、溶解性が低下して根から吸収されにくくなる。反対に、pHが5以下の強酸性になると、溶解性が上昇して過剰症が発生しやすくなる。

対してモリブデンは、酸性で溶解性が低下、アルカリ性で溶解性が上昇する、という特徴がある。

答え
マンガン欠乏症

土壌のpHが高くなる(アルカリ性になる)と、微量必須元素である鉄・マンガン・ホウ素・亜鉛・銅は、溶解性が低下して根から吸収されにくくなる。よって、マンガンやホウ素は、欠乏症のリスクが上がる

多量必須元素であるカルシウムは、酸性で吸収されにくく、アルカリ性で吸収されやすい、という特徴がある。

*イメージとしては、アルカリ性で吸収率が上がるカルシウムやモリブデンが少数派。

答え
インゲン

土壌の塩類濃度は、EC(Electrical Conductivity/電気伝導度)の値で示される。適切なECは土壌の種類によって異なるが、濃度が高いと、根からの水分吸収が妨げられ、濃度障害が起こる。

塩類濃度障害が起こる原因は、
・過剰な肥料や堆肥によって硝酸イオンやカリウムが蓄積すること
・化学肥料の副成分である硫酸イオンや塩素イオンが残留すること
などが挙げられる。

また、濃度障害の特徴として、
・作物によって、障害の受けやすさが異なる
(イチゴ・インゲンなどは受けやすい。ホウレンソウ・ハクサイなどは受けにくい。)

・土壌の種類や土性によって、障害の受けやすさが異なる
(保肥力の低い砂質ではECが高くなりやすい。緩衝能が低いため)
・使用する肥料の種類によって、障害の受けやすさが異なる
(同じ成分の場合、有機質よりも無機質肥料がECを高めやすい)
などが挙げられる。

答え
〇 土壌pHが低いと、根こぶ病が発生しやすい

根こぶ病は、主にアブラナ科に発生する土壌伝染病。糸状菌(かび)の一種が原因。感染すると地際近くの根に、大小のこぶが多数形成され、これにより、水分や栄養の吸収が妨げられる。生育は進まず、枯死することが多い。

また、根こぶ病は、土壌が酸性域(pH4.5~6.5)で多発するとされており、中性域(7.2以上)にして発生を減らす、という対策がとられている。

答え
× 土壌pHが低いと、マンガン過剰症になりやすい。

マンガンは、植物の微量必須元素である。中でも、欠乏症や過剰症の問題が多いとされている。

土壌のpHがアルカリ性域(pH7以上)になると、微量必須元素である鉄・マンガン・ホウ素・亜鉛・銅は、溶解性が低下して根から吸収されにくくなる。反対に、pHが5以下の強酸性になると、溶解性が上昇して過剰症が発生しやすくなる

答え
× 土壌pHが高いと、ジャガイモのそうか病が発生しやすい。

そうか病は、ジャガイモやニンジン・ダイコンなどで起こる病害。細菌(ストレプトマイセス属菌)が原因となる。表皮にかさぶたのような病斑がみられる。

中性~アルカリ性域(pHが6.5以上)で発生しやすいとされ、酸性域(5.0前後)にして発生を減らす、という対策がとられている。

答え
× 軽減のためにソルガムトウモロコシを栽培し、持ち出すとよい。

高くなったEC(電気伝導度)改善のためには、施肥量の低減(とくに塩化物や硫化物の無機肥料)・クリーニングクロップの導入などが行われる。

クリーニングクロップとは、過剰に蓄積した肥料成分を吸収する目的で栽培される作物のこと。吸肥力の強いソルガム(イネ科)やトウモロコシが用いられる。ECを下げたい土壌でこれらを栽培し、育った後に持ち出せば、肥料成分(ECを高めるもと)を減らすことができる。

ちなみにマリーゴールドは、ネグサレセンチュウ対策として栽培される。

答え
〇 塩化カリウム>硫酸カリウム>過リン酸石灰の順に、ECを高めやすい。

EC(電気伝導度)は、使用する肥料によって影響の受けやすさが異なる。
・有機質肥料より、無機質肥料の方が、ECを高めやすい
・硫酸塩よりも、塩化物の方が、ECを高めやすい
*例えば窒素肥料では、硫酸アンモニウム(硫安)よりも、塩化アンモニウム(塩安)の方が、ECを高めやすい

また、過リン酸石灰は、リン酸肥料の中でECを上げやすい成分とされる。(塩化~や硫酸~ほどではない)

*よって今回は、「塩化~」>「硫酸~」の順番になっていることを確認して判断する問題。

答え
× 無機質肥料の方が、有機質肥料よりもECを急激に高める

EC(電気伝導度)は、使用する肥料によって影響の受けやすさが異なる。
・有機質肥料より、無機質肥料の方が、ECを高めやすい
・硫酸塩よりも、塩化物の方が、ECを高めやすい

これは、無機質肥料(化学肥料)の肥効が早いことが影響する。(分解せずにすぐ使える状態の成分になっている→土壌中の養分が急激に増える→ECが高まる)

答え
× 多くの野菜は、アンモニア態窒素よりも、硝酸態窒素を好んで吸収する

土壌中の窒素は、「有機態窒素」「無機態窒素」に大別される。この「無機態窒素」には、アンモニア態窒素や硝酸態窒素が含まれる。

アンモニア態窒素とは、アンモニア(NH3)の形で存在する窒素(N)を指す。同じく硝酸態窒素も、硝酸(HNO3)の形で存在する窒素を指す。(イオン状態の場合もある)

一般的に作物が直接利用できるのは、「無機態窒素」(アンモニア態窒素・硝酸態窒素)である。また、作物の種類によって好みが異なり、水稲やレンコン(酸素の少ない土壌の中で生育するもの)は、アンモニア態窒素を好み、野菜などの畑作物は、硝酸態窒素を好む

*アンモニアは、ヒトにも植物にも有害となる場合が多い物質。よって畑作物は、アンモニア態窒素が多いと、障害を受ける場合もある。

答え
× 窒素を過剰に施肥して、軟弱徒長気味に生育すると、病害に罹りやすくなる

窒素と作物生育の関係において、「窒素が多すぎると、病害虫に罹りやすくなる」という点が挙げられる。これは、窒素が過剰になることで生育障害が発生し、軟弱徒長気味に生育してしまうことが原因。また、過繫茂(かはんも)状態になり、風通しが悪くなることも影響する。

*徒長(とちょう)は、作物や樹木の茎や枝などが、むだにのびてしまうこと。
*繫茂(はんも)は、草木が盛んに生い茂ること。

答え
〇 無機態窒素とは、アンモニア態窒素と硝酸態窒素の合計である。

土壌中の窒素は、「有機態窒素」と「無機態窒素」に大別される。この「無機態窒素」には、アンモニア態窒素や硝酸態窒素が含まれる。

アンモニア態窒素とは、アンモニア(NH3)の形で存在する窒素(N)を指す。同じく硝酸態窒素も、硝酸(HNO3)の形で存在する窒素を指す。(イオン状態の場合もある)

一般的に作物が直接利用できるのは、「無機態窒素」(アンモニア態窒素・硝酸態窒素)である。

ちなみに、土壌中のほとんどの窒素は、有機態窒素(堆肥や有機質肥料、微生物菌体など)として存在している。(だから、無機態窒素を増やすことが大切)

答え
× 窒素施用量が多いと、茶のうまみ成分が増加する

茶は、うま味成分として多くのアミノ酸を含む。(テアニン、グルタミン酸、グルタミン、アルギニン、アスパラギンなど)

そのため、アミノ酸の成分である窒素肥料が、多く使われる傾向にある。

答え
× 窒素施用量が多いと、米のたんぱく質含量が増加する

窒素は、水稲の生育にとくに影響する。(窒素が材料となってできるたんぱく質は、作物の体の構成成分)

ただし、米のたんぱく質含量が多くなると、食味は低下する。(米の味を優先するなら、たんぱく質含量は減らしたい。)そのため、窒素施用量が多いと食味は低下する。

答え
〇 窒素施用量が多いと、ほうれん草のビタミンC含量が減少する

ほうれん草は、窒素施用量が増加すると、一般的に収量が増加する傾向にある。ただし、ビタミンC含量の低下や、硝酸含量の増加がみられる。

答え
黒ボク土

黒ボク土は、火山灰と腐植が材料になっている、日本に特徴的な土壌である。天然の腐植が多いが、酸性が強いため、活性アルミニウムがリン酸を固定しやすい。(土壌に含まれるアルミニウムや鉄が、リン酸と結合すると、作物はリン酸を吸収できなくなる

この割合は「リン酸吸収係数」と呼ばれ、乾土100gが吸収固定するリン酸の量(mg)で表される。目安は「1200」で、火山灰土は1,500以上、非火山灰土は500~1,000程度であることが多い。1,000以下の土壌では、あまり問題にならないが、1,500以上だと土壌改良が必要となる。

黒ボク土は、リン酸吸収係数が1,500以上である。

答え
〇 土壌中の交換性カリウム含量が適正であれば、農作物の病害抵抗性が増す

カリウムには、細胞壁の主成分であるリグニンを増加させる働きがある。これにより、細胞壁が物理的に強化され、病害抵抗性を増加させる。

*交換性カリウムとは、土壌に含まれるカリウムのうち、作物の根から吸収されやすいものを指す。(土壌粒子に保持されたものや、水溶性のもの。粘土鉱物と結合したものは吸収されにくいので除く。)

ただし、カリウムが過剰になると、病害の発生を促進させる一面もあるので、注意が必要。例えばブロッコリーは、カリウム過剰でベト病(花蕾黒変症が起こる)に罹りやすくなる。

答え
× 土壌中の交換性カリウムが過剰になると、農作物の品質や食味が低下する

代表的なものとして、ミカンやモモの糖度低下、ミカンの酸味増加がある。これは、カリウムがデンプンの合成やショ糖の転流に関わっているためである。

*転流は、植物が光合成で作ったものなどを、作った場所から別の器官や組織に輸送すること。

答え
× カリウムは、作物体内で移動しやすい

作物に含まれる元素には、作物体内を移動しやすいものと、移動しにくいものがある。(体内でどのように存在しているかで、特徴が異なる。)

移動しやすい元素としては、カリウムをはじめ、窒素、リン、マグネシウムなどがある。

移動しやすいということは、土壌からの供給が不足したとき、体内にあるものを新しい葉に供給できるので、欠乏症状は下葉(古い葉)に現れやすい。

答え
〇 油脂作物、果菜類、果実類は、マグネシウムの要求度が高い

マグネシウムは、葉緑素の構成元素として働き、葉や果実に多く含まれる。作物の種類によって、要求度が高いものがある。ダイズなどの油脂作物(油脂の採取を目的とする作物)や果菜類(果実や種実を食べる野菜)、ブドウなどの果実類はその代表である。

答え
× マグネシウムは、作物体内で移動が速いため、欠乏症は一般に下位葉から現れる。

作物に含まれる元素には、作物体内を移動しやすいものと、移動しにくいものがある。(体内でどのように存在しているかで、特徴が異なる。)

移動しやすい元素としては、カリウム、窒素、リン、マグネシウムなどがある。

移動しやすいということは、土壌からの供給が不足したとき、体内のものを新しい葉に供給できるので、欠乏症状は下葉(古い葉)に現れやすい。

答え
× マグネシウムは、リン酸の吸収を促進する働きがある。

マグネシウムは、リン酸の吸収を促進する相乗作用をもつ。メカニズムは完全に解明されていないが、イオンによる影響(マグネシウムは陽イオン・リン酸は陰イオンになる)、植物がバランスよく吸収する性質などが影響すると考えられている。

ちなみに、マグネシウムが吸収を抑制するもの(拮抗作用)として、カリウムとカルシウムがある。

答え
× カルシウム欠乏症は、土壌水分不足や土壌の電気伝導度(EC)の高まり、他の塩基類のバランスの関係で発生することが多い。

カルシウム欠乏症の起こりやすい条件として、次のようなものがある。
・土壌の水分不足(カルシウムは水分とともに吸収される)
・アンモニア態窒素が多い(カルシウムはアンモニア態窒素と拮抗関係)
・塩類濃度が高い(塩類濃度=ECが高いと、根からの水分の吸収が抑制される)
・塩基バランスが崩れている(ここでの塩基はカリウム・マグネシウム・カルシウムのこと。カルシウムとカリウム・マグネシウムは、拮抗関係にある)

答え
〇 カルシウムの過剰は、拮抗作用によってカリウムとマグネシウムの吸収を抑制する

カルシウム吸収に対して拮抗作用を持つものとして、カリウムマグネシウムがある。

この関係は、カリウム・マグネシウム視点でも同じであり、それぞれがそれぞれに対して拮抗作用を持っている。(どれかが過剰になると、残り2つの吸収が抑制される。)

答え
〇 カルシウムは、作物の必須元素であり、土壌pHを調整する働きがある

カルシウムには、「作物の必須元素」・「土壌pHを調整する」という2つの役割がある。

「土壌pHを調整する」について
土壌中のカルシウムは、主に3つの形態で存在する。
1.土壌溶液中カルシウム
2.交換性カルシウム
3.難溶性塩(炭酸カルシウムなど)

*交換性カルシウムは、土壌粒子が保持しているカルシウムのことであり、塩基飽和度に関わる。

*塩基飽和度とは、陽イオン交換容量(CEC)に対して、どれだけ交換性塩基(カルシウム・マグネシウム・カリウム)が満たされているかの割合。(土の胃袋の大きさであるCECに対して、今どれくらいの塩基を食べて満腹かの指標)
[交換性塩基総量/CEC×100]

塩基飽和度は土壌pHと関係があり、塩基飽和度が高くなれば、土壌pHも高くなる(アルカリ性)傾向にある。(保持される水素イオンH⁺が減る)

カルシウムは施肥したとき、他の塩基(マグネシウム・カリウム)よりも、「2.交換性」になりやすいという特徴がある。(マグネシウムやカリウムは、「1.土壌溶液」濃度に反映されやすい)

つまり、カルシウムは塩基飽和度を高めやすいので、pHを上げやすい(土壌pHを調整する)ということができる。

まとめると、土壌中のカルシウム含量が低下すると、pHが低下(酸性化)する。また、カルシウムが過剰になると、pHが上昇(アルカリ性化)する。

答え
× 塩基バランスとは、土壌中に含まれているカリウム、マグネシウム、カルシウムの比率をいう。

農業用語における塩基バランスとは、カリウム、マグネシウム、カルシウム、ナトリウムなどの「交換性の陽イオン」の比率をいう。とくにカリウム、マグネシウム、カルシウムの3つが重要視される。

例えば、塩基飽和度(%)の計算に使われる「交換性塩基総量」も、カリウム、マグネシウム、カルシウムの合計値である。

答え
〇 塩基バランスを診断する項目として、一般に苦土/加里比や、石灰/苦土比が用いられている。

苦土→マグネシウム
加里→カリウム
石灰→カルシウム

土壌診断では、カリウム、マグネシウム、カルシウムの飽和度とともに、それぞれの比(バランス)も重要視される。この3つはお互いに拮抗作用があるため、どれかが過剰になると、他のものの吸収が阻害される。

・苦土/加里比(マグネシウム/カリウム比)は、2~6が望ましい
(2以下でマグネシウム欠乏症が発生)
・石灰/苦土比(カルシウム/マグネシウム比)は、4~8が望ましい

答え
× 土壌中の交換性カリウム含量が過剰の場合、加里(カリウム)肥料を減らすことが良い。

交換性カリウムは、土壌粒子が保持しているカリウムのことであり、塩基飽和度や塩基バランスに関わる。

塩基飽和度や塩基バランスの改善においては、
・塩基飽和度が高すぎる場合は、各肥料を減らす
・塩基バランスが悪く、塩基飽和度が低い場合は、不足している養分の肥料を補給する
・塩基バランスが悪く、塩基飽和度が高い場合は、過剰になっている養分の肥料を減らす

が基本となる。

今回の場合、「カリウムが過剰」なので、マグネシウムやカルシウムを補給するのではなく、まずは「カリウムを控えること」が優先される。

答え
〇 アブラナ科作物は、ホウ素の要求度が高く、連作により欠乏症が発生しやすい

ホウ素は、作物における微量必須元素である。主に細胞壁の維持に必要な成分として働く。ホウ素が欠乏すると、細胞分裂や組織形成に影響がでる。(組織の亀裂やコルク化)

ホウ素が欠乏しやすい条件としては次のようなものがある。
・土壌のアルカリ化(pH上昇)
・圃場の乾燥
・アブラナ科野菜の連作

アブラナ科(ダイコンやキャベツ等)は、ホウ素の要求度が高いという特徴がある。また、これらの作物は、毎年続けて作付けされることが多い。そのためホウ素欠乏のリスクが高くなっている。

答え
× ホウ素は、土壌がpH7.0以上になると、根から吸収されにくくなり、欠乏症が発生しやすい。

ホウ素が欠乏しやすい条件
・土壌のアルカリ化(pH上昇)
・圃場の乾燥
・アブラナ科野菜の連作

土壌pHが7.0以上(アルカリ性)になると、不可給態のホウ素が多くなる。すると根から吸収されにくくなり、欠乏症が発生しやすい。(pHを上昇させる石灰肥料などに注意が必要。)

答え
〇 ホウ素は、高温や乾燥条件で吸収されにくくなり、欠乏しやすくなる。

ホウ素が欠乏しやすい条件
・土壌のアルカリ化(pH上昇)
・圃場の乾燥
・アブラナ科野菜の連作

圃場の温度が高くなり、乾燥状態になると、ホウ素は吸収されにくくなる。

答え
〇 マンガン欠乏症は、土壌が中性からアルカリ性になると発生しやすい

マンガンは、作物における微量必須元素である。主に葉緑体の形成に関与する。欠乏すると、クロロシス症(葉脈間の黄化)が起こる。

マンガンが欠乏しやすい条件としては、次の2つがある。
・土壌のアルカリ化(pH上昇)
・養分の溶脱しやすい圃場

土壌のpHが6.5以上(中性~アルカリ性)になると、不可給態(4価)のマンガンが多くなる。すると根から吸収されにくくなり、欠乏症が発生しやすい。(pHを上昇させる石灰肥料などに注意が必要。)

答え
× マンガン欠乏症は、土壌が中性からアルカリ性になると発生しやすい

マンガンが欠乏しやすい条件
・土壌のアルカリ化(pH上昇)
・養分の溶脱しやすい圃場

反対に、土壌が酸性になると過剰症が発生しやすくなる。

答え
× マンガン過剰症は、排水性が悪い土壌で発生しやすい。

マンガンの過剰症が発生しやすい条件
・土壌の酸性化(pH低下)
・土壌の排水不良

土壌の排水性が悪くなり還元状態になると、溶解性が高い(2価)マンガンとなり、過剰症のリスクが上昇する。

答え
× マンガン過剰症は、土壌が酸性になると発生しやすい。

マンガンの過剰症が発生しやすい条件
・土壌の酸性化(pH低下)
・土壌の排水不良

土壌のpHが5.0以下(強酸性)になると、マンガンの溶解性が上昇する。そのため、過剰症のリスクが上がる。

答え
× マンガン過剰症は、葉先や葉の緑部分に発生しやすい。

例えばミカンだと、葉先に褐色の小斑点が生じる。

ちなみに欠乏症の場合は、上位葉に症状が現れやすい。(植物の生体内で移動しにくい、生長部位で必要とされる元素である、という特徴のため)

答え
〇 マンガン過剰症は、排水性が悪い土壌で発生しやすい。

マンガンの過剰症が発生しやすい条件
・土壌の酸性化(pH低下)
・土壌の排水不良

土壌の排水性が悪くなり還元状態になると、溶解性が高い(2価)マンガンとなり、過剰症のリスクが上昇する。

答え
× 水稲の秋落ち現象が発生する土壌では、作土の遊離酸化鉄、マンガン、ケイ酸含量が少ない

「秋落ち現象」とは、生育前期(栄養成長期)が順調であるにもかかわらず、後期になって生育が急激に衰え、収量が低下する現象をいう。老朽化水田で多くみられ、このような水田を「秋落ち水田」と呼ぶ。

この原因として挙げられるのが、還元状態で発生する硫化水素である。この硫化水素が根を障害し、呼吸や養分の吸収を阻害する。

硫化水素は、通常の水田では土壌中の鉄やマンガンと結合し、無害になっているが、これらが不足した老朽化水田では、障害が発生しやすい。

遊離酸化鉄は、硫化水素から根を守る働きがある。(硫化鉄に変化させて無害化・根の周囲に酸化鉄の被膜を作る)

答え
〇 遊離酸化鉄は、硫化水素が起こす根の障害を防ぐ効果を持っている。

還元状態で発生する硫化水素は、水稲の根を障害し、呼吸や養分の吸収を阻害する。

遊離酸化鉄は、硫化水素を無害な硫化鉄に変化させたり、根の周囲に酸化鉄の被膜を作ったりして、根を守る働きがある。

答え
〇 遊離酸化鉄は、稲わらを鋤き込んだ水田で発生する有機酸を減少させるため、水稲収量の向上が期待できる。

還元状態の水田で起こる根腐れの原因には、稲わらの施用後の分解で発生する有機酸も影響する。特に寒冷地などでは、鋤き込んだ稲わらの分解が遅くなるため、春先にガスや有害な有機酸が発生しやすい。(水稲の茎数減少・収量低下が起こる)

遊離酸化鉄には、分解で生じる有機酸を減少させる効果がある。

答え
〇 ケイ酸には、水稲の耐倒伏性の向上や、受光態勢の向上効果があり、光合成の促進効果を生む。

ケイ酸は、ケイ素・酸素・水素を含む化合物の総称。また、ケイ素は、水稲にとっての有用元素。

ケイ酸が根から吸収されると、ケイ化細胞の増加や、表皮クチクラ層下に集積し、耐倒伏性を向上させる。すると受光態勢(葉の直立など)が向上し、光合成の能力も向上する。

答え
× 水稲のケイ酸含有率が高まると、米粒中のたんぱく質含量が低下する傾向にある。

食味がよいとされる米は、米粒中のたんぱく質含量が少ない。また、ケイ酸には、葉身含有率が高くなると、収量が増加し、米粒中のたんぱく質含量が少なくなるという傾向がある。

これは、ケイ酸によって、吸収窒素当たりの炭水化物生産量が高くなることで、米粒中のたんぱく質含量が相対的に低下するため、と考えられている。
(ケイ酸の影響によって光合成が活発になると、光合成によって作られる炭水化物(でんぷん)が多くなる。すると相対的にたんぱく質の量が減る。)

答え
〇 ケイ酸不足の水田では、ケイ酸の施用によって、水稲の収量や品質向上が期待される。

水稲に対するケイ酸の影響は次の通り。
・ケイ酸不足の水田では、ケイ酸の施用による収量や品質の向上
(光合成能力の向上、たんぱく質含有量の低下)
・高温障害の軽減
(葉温の低下)
・病害抵抗性の向上
(ケイ素が表皮組織に沈積し、病原菌の侵入を物理的に防ぐ)

答え
転炉さい

転炉さい(てんろさい)とは、含鉄資材の1つである。てんろ石灰・転炉スラグとも呼ばれる。カルシウム、マグネシウム、ケイ酸、鉄など多くの成分を含み、微量要素の補給効果が期待できる。

*転炉は、製鉄に使う設備の1つ。
*さい(滓)は、残りかすの意。(スラグとも呼ぶ)

水稲の秋落ち現象は、遊離酸化鉄によって改善できるため、鉄を含んだ資材である「転炉さい」が有効である。

参考
新版 土壌医検定試験既出問題集2018-2020
一般財団法人 日本土壌協会
図解でよくわかる 土・肥料の基本
一般財団法人 日本土壌協会
誠文堂新光社/2021第7刷
土は土である 作物によってよい土とは何か
松中照夫/農文協/2013

4.物理性

答え
× 多くの作物の作土層は25cmでよいが、根菜類は30cm以上ごぼうは60cm以上が望ましい

作土層とは、作物の根が容易に伸びることができる範囲である。一般的には、ヒトが耕したやわらかい部分を指す。

多くの野菜や畑作物は、作土層が25cmあれば十分とされる。(25cmまでは、収量が増加傾向にある)
ただし、ダイコン等の根菜類では30cm以上、ごぼうでは60cm以上が望ましいとされる。

答え
× 有効土層には、耕盤層や、場合によって緻密層が含まれる。耕盤層に達するまでの土層は、作土層である。

作物に関わる土層の深さは、作土層や有効土層で表される。

・作土層
作物の根が容易に伸びることができる範囲(一般的には、ヒトが耕した範囲)
・有効土層
作物の根が貫入することが可能な範囲
作土層に加え、その下にある耕盤、その下にある緻密層(硬度29mm未満)が含まれる

(イメージ)
 土壌表面
↓作土層
↓耕盤層
↓緻密層
 礫(れき)

答え
〇 有効土層は、根が十分に伸長する可能性がある全土層をいう。

有効土層には、耕した範囲(作土層)に加え、その下にある耕盤、またはその下にある緻密層(硬度29mm未満)が含まれる。

(土壌硬度が29mmを超えると、根が十分に伸長できなくなる。)

答え
ボトムプラウによる耕耘

土層の改善には、深さ・硬さ・通気性・透水性などの種類があり、それぞれ適した機械や有機物、緑肥作物などが利用される。

堆肥(有機物)の施用は、硬さや通気性の改善に用いられる。(改善には数年を要する)

サブソイラー(心土破砕機)は、耕盤や心土層(耕盤より下の硬い部分)を破壊し、透水性の改善に用いられる。

ボトムプラウは、作土層を深くするために用いられる。「プラウ」は、土を耕す機械。「ボトム(発土板)」は、土壌を破砕し反転するためのパーツ。(一般的にプラウといえば、ボトムプラウを指す。)

答え
× 山中式土壌硬度計の読みで20mm前後になると、根量が急激に減少する。

土壌の硬さは、一般的に土壌を垂直に掘った断面に使用する「山中式土壌硬度計」が用いられる。(値が大きいほど、土が硬いことを表す)
根は、この値が20mm未満でよく発達する。また、20mm前後になると量が急激に減少し、25mm以上になると根の分布が困難になるとされる。

*一般の畑の硬度は、22mm以下が望ましい(細根が発達できる)とされている。

答え
〇 土壌硬度の測定結果から、耕盤層の存在や、その硬さの程度を把握することができる。

土壌の深さ別に硬度を測定すると、耕盤層が存在する位置と、その硬度が把握できる。例えば、土層の浅い位置に耕盤層があると、根が深く発達できないため、作物の生育が劣る場合がある。つまり、根の発達阻害要因がわかる。(ダイコンなどは、耕盤層の位置の影響が大きい。)

答え
× 土壌硬度の測定結果は、主に根の伸長難易の判定に利用される。

根は、土壌の硬さによって発達の影響を受ける。そのため土壌硬度の測定結果は、主に根の伸長難易の判定に利用される。

三相分布は、土壌の固相・液相・気相の割合である。測定には専門の機器を要するため、土壌をサンプリングし、専門の機関に依頼する。

仮比重(容積比重)は、土壌の硬さや通気性を表す指標である。単位容積(100ml)当たりの、固相重量で示される。(膨軟な土壌ほど、値は小さくなる。)
三相分布同様に、土壌硬度の測定だけでは判定できない。

答え
× 土壌の固相には、土壌粒子・腐植・土壌生物(微生物・小動物)を含む。

土壌は、固体・液体(水)・気体(空気)で構成されている。
このうち、固体部分を固相と呼び、土壌粒子・腐植・土壌生物(微生物・小動物)が含まれる。

答え
× 土壌の孔隙率は、気相と液相を合わせた割合をいう。

土壌は、固体・液体(水)・気体(空気)で構成されている。それぞれを固相・液相・気相と呼び、この割合が作物の生育に影響を与える。

中でも液相と気相は、固相(土壌粒子)の隙間にあるものなので、「孔隙(こうげき)」とも呼ばれる。よって、土壌全体に占める液相と気相の割合を、孔隙率と呼ぶ。

答え
〇 非火山灰土の三相分布は、固相が45~50%液相・気相がそれぞれ20~30%が望ましい。

作物に対して、固相は養分を、液相は水分を、気相は酸素を供給する。そのため、このバランスが崩れると生育に影響が出る。

ちなみに、火山灰土は固相率が16~30%と低いので、目安も変わる。

答え
ギニアグラス

緑肥作物は、土壌の物理性・化学性・生物性の改善や、雑草の抑制、景観美化など、様々な目的で利用される。(つまり育てる種類によって、効果が違う。)

例えば
ギニアグラスは、ち密性や通気性の改善(物理性)
マリーゴールドは、ネグサレセンチュウの抑制効果(生物性)
レンゲは、空中窒素の肥料化(化学性)
で栽培される。

答え
〇 作土の液相と気相の割合は、降雨によって変化する

液相は、土壌粒子間に入り込んだ水、気相は、水に満たされていない空気の部分を指す。この2つは相反する性質を持っており、片方が大きくなると、もう片方が小さくなる

例えば、降雨や灌水により、気相の多くが液相となる。また、時間が経つと地下に浸透したり、作物に吸収されたりするので、気相の割合が戻ってくる。

答え
× 作土の固相率は、作物の栽培管理によって変化する

作土の固相率は、土壌の種類によってほとんど一定の値である。(火山灰土で16-30%、非火山灰土で40-45%)

ただし、作物の栽培管理(例えば堆肥の施用など)によって変化する。

答え
× 望ましい三相分布は、固相45-50%、液相20-30%、気相20-30%である。(非火山灰土の場合)

特に気相率が10%以下になると、生育障害が起こる。

答え
〇 孔隙率は、液相率と気相率の和で求められる。

孔隙(こうげき)とは、固相の間にある隙間のことを指す。つまり、水と空気の部分であり、液相と気相のこと。

答え
× 黒ボク土では、土壌の仮比重が0.8を超えると排水が不良になり、根群の伸長が悪くなる

仮比重(容積比重)とは、単位容積当たりの固相重量(g/1cm³)であり、土の硬さや通気性を表す。膨軟な土壌ほど、値は小さくなる。(固体が少なく、空気が多くなるから)

黒ボク土では0.8、非火山灰土では1.3〜1.4が上限の目安であり、これを超えると排水不良となる。

答え
× 山中式土壌硬度計の値が、約20mm以上になると、根量が急激に減少する。

山中式硬度計では、
・18〜20mmまでは根が容易に発達できる
・これを超えると根量が急激に減少する
・25mm以上になると根の分布がほとんど見られない

となっている。

答え
× pF値は、畑土壌の水分状態を表す指標である。

pF値は、土壌水分のエネルギー状態を表す。(土壌に保持された水分を、作物が引き離すのに必要な力。土壌と水分が結びついている強さ。)水分の状態(つまり)を表すのであって、の指標ではないことに注意。

pF値が高くなると、水分が存在していても作物が吸収できなくなり、萎れる。ほとんどの作物が枯死する点を「永久しおれ点(永久萎凋点)」と呼び、pF4.2に相当する。

水田で消費される水量の目安は、日減水深(減水深)である。

答え
× 土壌中の塩類濃度の指標は、電気伝導度(EC)である。

電気伝導度(EC)が高くなると、土壌溶液の浸透圧が高くなり、根からの水分吸収が妨げられる。

答え
〇 pF値は、畑における土壌水分状態の指標となるもので、数値が一定水準より大きくなると、作物が枯れ始める

例えば、作物が枯れ始める「初期しおれ点(初期萎凋点)」はpF3.8、ほとんどの作物が枯死する「永久しおれ点(永久萎凋点)」はpF4.2である。

答え
× 日減水深が少なすぎると、土壌への酸素供給が少なくなり、有機酸や硫化水素の被害を受けやすくなる

日減水深(減水深)は、水田で消費される水量の目安である。(表面の水位低下)

水稲は、日減水深が20〜30mm/日のときに最も収量が高いとされる。

また、日減水深が大きすぎると、湛水による保温期間が短くなり、冷水害が出たり、肥料の損失が大きくなったりする。

答え
× 水稲は、日減水深が20〜30mm/日のときに最も収量が高い。

40〜50mm/日は、排水性が良すぎる状態であり、代掻き(水を張った田の土を砕く)、床締め、客土(土を運び入れる)、ベントナイト施用(土壌改良剤)などの対策が行われる。

ちなみに、日減水深が50mm/日を超えると、漏水過多水田とされる。

答え
〇 日減水深に影響を与えるのは、根による吸水、水面蒸発、地下浸透などである。

水田における減水深は、
・稲による水分の吸収
・葉面からの蒸散
・水面からの蒸発
・土壌中への降下浸透量
・畦への浸透量

の総和で測定される。

答え
〇 作物が健全に生育できるpFは、[1.5〜1.8]〜[2.7〜3.0]の範囲である。(易効性有効水/生長有効水と呼ぶ)

pF値は、土壌水分のエネルギー状態を表す。(土壌に保持された水分を、作物が引き離すのに必要な力。土壌と水分が結びついている強さ。)

pFが1.5を下回ると、重力によって土壌から水分が失われる。また、3.8を超えると作物が吸収できなくなって萎れる

答え
× 重力水は、根が湿害を受ける水分であり、吸水可能な重要な水分ではない

圃場容水量とは、土壌に十分な水分が加えられた後1〜2日経過して、重力水が排除されたときの水分状態である。畑土壌が重力に抗って保持できる、最大の水分量を表す。

対して重力水は、降水や灌水で一時的に土壌に止まるが、重力の作用で下方に排除される水を指す。(土壌の保水力を上回る水分なので、過剰水とも呼ぶ)

圃場容水量は、pFで1.5〜1.8の範囲。重力水は、それ以外である。

答え
× 作物が枯れ始める初期しおれ点は、通常pF3.8に相当する。

pF値は、畑における土壌水分状態の指標となるもので、数値が一定水準より大きくなると、作物が枯れ始める。

例えば、作物が枯れ始める「初期しおれ点(初期萎凋点)」はpF3.8、ほとんどの作物が枯死する「永久しおれ点(永久萎凋点)」はpF4.2である。

参考
新版 土壌医検定試験既出問題集2018-2020
一般財団法人 日本土壌協会
図解でよくわかる 土・肥料の基本
一般財団法人 日本土壌協会
誠文堂新光社/2021第7刷
土は土である 作物によってよい土とは何か
松中照夫/農文協/2013

5.生物性

答え
〇 糸状菌、細菌、放線菌のうちで、最も小さいものは細菌である。

土壌微生物には、菌類や藻類がいる。また、菌類には、糸状菌、細菌、放線菌が含まれる。

*糸状菌は、「真菌(カビ)」の一種なので、「細菌」とは別もの
*放線菌は、「細菌」の仲間

菌類の大きさは、糸状菌(2~10μm)>放線菌>細菌(0.5~4μm)となっている。

答え
〇 水田では、酸素の少ない土壌でも生息できる細菌が多い

水田は、酸素の少ない嫌気的土壌となることが多い。よって、酸素の少ない土壌でも生息できる細菌が多く、酸素を必要とする糸状菌は少ない、という特徴がある。また、藻類や原生動物(アメーバ・べん毛虫など)が多い傾向にある。

答え
× 畑では、酸素を多く必要とする糸状菌が最も多い
(ここでの量は、菌数ではなく、土壌に対するkg数)

畑は水分が少ないため、藻類や原生動物が少なく、菌類が多いという特徴がある。
なかでも糸状菌は、酸素を必要とする(好気性)、水分が少なくても増殖できる、餌となる有機物が多い、などの条件から、畑に多い

*土壌の微生物は、「菌の数」だけで考えると、「細菌」が最も多い。ただし、「土壌面積に対するkg数」で考えると、細胞が大いことや、菌糸を伸ばす分が含まれるため、「糸状菌が最も多い」という言い方がされる。

答え
〇 糸状菌による土壌病害の多くは、土壌pHが酸性のときに多発しやすい。

土壌病害と土壌の化学性においては、とくにpHとの関連が大きい。一般的に糸状菌による病害は、pHが低い(酸性)で多くなり、高い(アルカリ性)で少なくなる傾向にある。

例えば、アブラナ科に多い根こぶ病は、pHを7.2~7.4に上げることにより、発病が抑制される。(糸状菌が出す胞子の鞭毛の機能が低下し、感染力が低下するためとされる。)

答え
× ジャガイモそうか病の発生を抑制するためには、土壌pHを酸性にする。

ジャガイモそうか病(糸状菌)は、pHが高い(中性~アルカリ性)で発生が多くなる、という特徴がある。発生を抑制するためには、pHを5.0付近(酸性)にする。

答え
× ハクサイなどの根こぶ病は、土壌pHが低下すると発生が多くなり、上昇すると発生が少なくなる

アブラナ科に多い根こぶ病(糸状菌)は、pHを7.2~7.4に上げることにより、発病が抑制される。(糸状菌が出す胞子の鞭毛の機能が低下し、感染力が低下するためとされる。)

答え
× 普通畑で、菌数が最も多いのは細菌である。

土壌微生物には、菌類や藻類がいる。また、菌類には、糸状菌、細菌、放線菌が含まれる。

*糸状菌は、「真菌(カビ)」の一種なので、「細菌」とは別もの
*放線菌は、「細菌」の仲間

畑土壌での菌類の数は、
・生体重比率が最も高いのは「糸状菌」
・菌数が最も多いのは「細菌」

とされる。

(生体重比率で糸状菌が多くなるのは、他より細胞が大きいこと、分泌する胞子の量なども考慮されるため。)

答え
〇 土壌微生物の細胞の大きさは、細菌<放線菌<糸状菌である。

(大)
糸状菌(2~10μm)
放線菌
細菌(0.5~4μm)
(小)

答え
〇 水田では、酸素の少ない土壌で生息できる細菌が多い

水田は、酸素の少ない嫌気的土壌となることが多い。よって、酸素の少ない土壌でも生息できる細菌が多く、酸素を必要とする糸状菌は少ない。また、藻類や原生動物(アメーバ・べん毛虫など)が多い傾向にある。

答え
〇 キュウリのつる割れ病は、土壌pHが6.0未満で多発しやすい

キュウリのつる割れ病は、糸状菌が原因となる、導管病の1つである。
一般的に糸状菌による病害は、pHが低い(酸性)で多くなり、高い(アルカリ性)で少なくなる傾向にある。

*導管病は、菌が作物体内の導管に侵入し、水の上昇を妨げる。地上部が萎凋する(枯れる)。

【土壌病害の分類】
・柔組織病(組織が壊死)
・導管病(導管閉塞による萎凋)
・肥大病(異常分裂・肥大)

答え
× ジャガイモのそうか病の発生を抑制するためには、土壌pH5.0程度で管理する。

ジャガイモのそうか病は、放線菌が原因となる、柔組織病の1つである。表皮にかさぶたのような病斑がみられる。pHが6.5以上の中性~アルカリ性に傾いていると発生しやすい。対策として、土壌pH5.0程度で管理される。

*そうか病は、病変部分を除けば食べられるが、見た目が悪くなるので、市場価値が下がる。

答え
× ハクサイなどの根こぶ病は、土壌pHが低下すると発生が多くなり、上昇すると発生が少なくなる

アブラナ科に多い根こぶ病(糸状菌)は、pHを7.2~7.4に上げることにより、発病が抑制される。(糸状菌が出す胞子の鞭毛の機能が低下し、感染力が低下するためとされる。)

答え
〇 土壌生物の感染経路のうち、糸状菌の感染源となるのは、胞子や菌核などの耐久体である。

糸状菌の感染経路は、胞子(厚膜胞子・休眠胞子・分生胞子)や、菌核である。菌核とは、菌糸が組織状になった耐久体であり、環境に対する抵抗力が非常に強い。(土の中で数年生存する)

耐久体となった菌核は、作物の根が伸びてくると発芽し、菌糸を伸ばして作物に侵入・増殖する。再び耐久体にもなるので、排除することがむずかしい。同じ土壌での、作物の栽培間隔が短いと、感染率が高くなる。

答え
× 根圏微生物が多様化すると、有害センチュウの増加は抑制される

土壌病害の原因には、菌類の他にセンチュウもいる。(線形動物の一種。体長は0.3〜1mm程度)

【センチュウの分類】
・捕食性センチュウ
・腐生性センチュウ
・寄生性センチュウ(作物に被害を与える)

主な「寄生性センチュウ」
・ネコブセンチュウ
・ネグサレセンチュウ
・シストセンチュウ

根圏(こんけん)とは、根の影響が及ぶ範囲を指す。ここでは、根による養分吸収や呼吸、根から分泌されるアミノ酸・糖・有機酸などの影響を受ける。そして、この範囲で生息している微生物を、「根圏微生物」と呼ぶ。

根圏微生物が多様になると、病原微生物や有害センチュウの増殖が抑制される。これは、非病原性の微生物やセンチュウが増加することで、有害なものを排除するためである。
(よって非病原性の生物も、病害発生の抑制効果をもっていると言える。)

根圏微生物を多様化させるためには、堆肥等の有機物が効果的とされる。

答え
× 根圏微生物が多様化しても、病原微生物の密度が高いと、増殖は抑制できない

根圏微生物が多様化すると、病原微生物や有害センチュウの増殖が抑制される。ただし、そもそもの病原微生物の密度が高い状態では、この抑制効果は発揮されない。

答え
〇 シストセンチュウは、ジャガイモなどの特定作物に被害を及ぼす

主な「寄生性センチュウ」(有害)
・ネコブセンチュウ
・ネグサレセンチュウ
・シストセンチュウ

シストセンチュウは、特定作物に被害を及ぼし、特にジャガイモのシストセンチュウ害が有名である。根に寄生したセンチュウが養分を吸収し、生育障害や葉色の退色が起こり、収量が低下する。

*シストとは、メスの成体が変化した球形のもの。低温や乾燥に強い。内部に卵をもっており、年に30%ほどが自然消滅するが、土壌中で10年以上生存できる。

答え
× ネコブセンチュウは、野菜・果樹・樹木など多くの植物に被害を及ぼす

ネコブセンチュウは名前の通り、植物の根にコブを作り、伸長の抑制や萎れなどを起こす。広範囲に寄生し、被害が起こるのは、アブラナ科・ナス科・ウリ科など様々である。

答え
× ネグサレセンチュウは、畑作物・樹木など多くの植物に被害を及ぼす

ネグサレセンチュウも、ネコブセンチュウ同様に、多くの植物に被害をもたらす多犯性である。

感染すると、根や根茎、塊茎などに壊死が生じ、根の発達が障害される。

答え
× 窒素の過剰は、病害虫の被害を受けやすくなる

肥料養分の過不足は、土壌の病害発生に影響を与える。
窒素の場合、過剰になると、作物が軟弱に育ち、病害虫の被害を受けやすくなる。(病害抵抗性に関わるフェノール化合物の減少、リグニン含有率の低下のため)

*フェノール化合物は、ベンゼン環(芳香環)に水酸基(ヒドロキシ基)を持つ化合物の総称(狭義的には、ヒドロキシベンゼン自体を指す)
ヒドロキシ基を複数持つものが、ポリフェノール
*リグニン(木質素)は、植物体の細胞壁の強化などに関わる物質

答え
× トマト青枯病を軽減するためには、同じナス科であるピーマンを輪作体系に組み入れることを避ける

トマト青枯病は、細菌が原因となる、導管病の1つである。
また輪作体系とは、種類の異なる作物を、同じ圃場で、一定の期間と順序で繰り返し栽培する作付け体系を指す。連作障害を防ぐ効果として、土壌微生物相の単純化を防ぐ・病原力の強化を防ぐ・病原菌密度の低下、などがある。

輪作体系に組み込む作物は、異なる科の作物を用いることが基本。トマトとピーマンは、両方ともナス科なので、ピーマンを組み入れた場合、青枯病がピーマンにも感染してしまう。

答え
〇 太陽熱による土壌消毒を行う場合、土壌を湛水する必要がある

土壌病害対策の1つに、熱による土壌消毒がある。

【熱による土壌消毒】
・太陽熱土壌消毒
・土壌還元消毒
・蒸気土壌消毒
・熱水土壌消毒
*熱による土壌消毒以外の方法として、「農薬による土壌消毒」がある

この中の「太陽熱土壌消毒」は、太陽熱を利用し、病原菌を死滅させる方法。ほとんどの病原菌は、地温45℃以上・7日間で死滅するという特性を利用している。
方法としては、夏季にハウス内を密閉し、うねを全面マルチ、うね間を湛水して、20日間程度放置する
湛水する(水をためる)のは、水が温度上昇と維持に役立つ媒体となることと、酸素欠乏状態にすることで、酸素を必要とする菌やセンチュウが低温で死滅するようになるためである。

よって、太陽熱による土壌消毒を行う場合、土壌を湛水することが重要なポイントとなる。

答え
〇 ジャガイモそうか病は、中性土壌で発病が激しいので、土壌pHを5.0前後に調整する

ジャガイモのそうか病は、放線菌が原因となる、柔組織病の1つである。表皮にかさぶたのような病斑がみられる。pHが6.5以上の中性~アルカリ性に傾いていると発生しやすい。対策として、土壌pH5.0程度で管理される。

*そうか病は、病変部分を除けば食べられるが、見た目が悪くなるので、市場価値が下がる。

答え
× 糸状菌による土壌病害は、酸性土壌で多発し、アルカリ性土壌で少なくなる傾向にある。

土壌病害と土壌の化学性においては、とくにpHとの関連が大きい。一般的に糸状菌による病害は、pHが低い(酸性)で多くなり、高い(アルカリ性)で少なくなる傾向にある。

*糸状菌による病害には、立枯病・つる割病などがある。これは、糸状菌が酸性~中性域で増加する性質があるため。(反対に、細菌・放線菌は、中性~微アルカリ性で増加する傾向)

答え
× キュウリ、スイカ等のつる割れ病は、石灰肥料施用によって少なくなる。

キュウリなどののつる割れ病は、糸状菌が原因となる、導管病の1つである。
一般的に糸状菌による病害は、pHが低い(酸性)で多くなり、高い(アルカリ性)で少なくなる傾向にある。

石灰には、土壌pHを上昇させる効果があるため、石灰肥料施用によって土壌を中性〜弱アルカリ性にすれば、発生が軽減できる。

ちなみに、多くの土壌病害において、リン酸の過剰は発病を助長するといわれる。

答え
〇 熱利用の土壌消毒法には、太陽熱土壌消毒、土壌還元消毒、熱水や蒸気による土壌消毒がある。

土壌病害対策の1つに、熱による土壌消毒がある。

【熱による土壌消毒】
・太陽熱土壌消毒
・土壌還元消毒
・蒸気土壌消毒
・熱水土壌消毒

*熱による土壌消毒以外の方法として、「農薬による土壌消毒」がある

答え
× 熱利用の土壌消毒で、耐性菌が発生することはない

熱利用の土壌消毒の特徴として、
・病原菌、有害センチュウが死滅する
・残留性がない
・耐性菌が発生しない
・比較的環境にやさしい

がある。

*耐性菌は、「農薬による土壌消毒」で問題になる。

答え
× 太陽熱土壌還元消毒は、ふすまや米ぬかを土壌に鋤き込み、ハウスを密閉して行う。

土壌還元消毒は、微生物に利用されやすい有機物(ふすま、米ぬか)を土壌に鋤き込み、太陽熱土壌消毒を行う方法である。有機物によって微生物の増殖を促進させ、酸素の消費量を多くする。すると、より強い還元状態になり、低温でも病原菌が死滅するようになる。

6.生育障害

答え
〇 トマトの乱形果は、樹勢が強く低温が続くと発生しやすい

作物の生育障害は、大きく3つのタイプに分類できる。
1.土壌の化学性、物理性、生物性に起因するもの
2.資材の使用に起因するもの
3.環境変化に起因するもの

このうち「3.環境変化に起因するもの」には、米の高温障害や、果菜類や果樹の結実障害が含まれる。(作物の生育は、気象条件の変化を受けやすいので、温度や日照によって収量・品質が左右されやすい)

トマトの乱形果は結実障害の1つであり、果実が楕円形になったり、分裂したようになった状態をさす。(窓空き果・チャック果は、乱形果の一種)
乱形果が発生する要因は、低温と強すぎる樹勢とされる。

*樹勢は、樹木の生育状態(生長する勢い)を指す言葉。窒素の過剰や養分水分の不適切な管理で強くなりすぎる。

答え
× キュウリの曲がり果は、養分不足などにより樹勢が弱くなると発生しやすい。

作物の生育障害のタイプ
1.土壌の化学性、物理性、生物性に起因するもの
2.資材の使用に起因するもの
3.環境変化に起因するもの(米の高温障害や、果菜類や果樹の結実障害)

キュウリの曲がり果は、環境変化に起因する、結実障害の1つである。尻太り果、尻細り果、肩こけ果など、さまざまな形で曲がる。

原因としては、日照不足・乾燥・養分不足が重なり、樹勢が弱くなることがあげられる。(同化産物の転流量が少なくなるため)

答え
〇 リンゴは、排水不良で樹勢が強いとつる割れ果が発生しやすい

作物の生育障害のタイプ
1.土壌の化学性、物理性、生物性に起因するもの
2.資材の使用に起因するもの
3.環境変化に起因するもの(米の高温障害や、果菜類や果樹の結実障害)

リンゴのつる割れ果は、環境変化に起因する、結実障害の1つである。果実内部に亀裂が生じ、それが外部へと進む。

発生が多いのは、
・8月に雨量が多い年
・排水不良でリンゴの樹勢が強い場合

とされている。対策には、排水対策や窒素の施肥管理が重要である。

答え
〇 未熟堆肥を施肥すると、有機酸等の有害物質によって根が障害を受けやすい

作物の生育障害は、大きく3つのタイプに分類できる。
1.土壌の化学性、物理性、生物性に起因するもの
2.資材の使用に起因するもの
3.環境変化に起因するもの

この内「2. 資材の使用に起因するもの」には、【堆肥】や【有機質肥料】の施用が含まれる。

【堆肥の施用による障害】
・未熟堆肥の施用
・C/N比が高い堆肥の施用
・ECの高い堆肥の施用
・過剰施用

【有機質肥料の施用による障害】
・施用時期
・ハウス内での多量施用

未熟堆肥の施肥」では、腐熟過程で発生する有機酸などの有害物質が、根に障害を与える。
未熟な堆肥が土壌に入る→微生物が急激に増加→酸素を消費して土壌が還元状態になる→根に障害が起こる+嫌気性微生物が増える→有機酸(生育阻害物質)が生成→生育不良
(育苗や根菜類で発生が多い)

答え
〇 油かす等の有機質肥料を、土壌に混和施用直後に播種を行うと、発芽障害が発生しやすい

【有機質肥料の施用による障害】
・施用時期
・ハウス内での多量施用

施用時期として、有機質肥料を土壌に施用直後の播種は避ける。施用すると微生物による分解が始まり、熱が発生したり、生育に有害な物質が発生する。予防として、施用後一定期間が過ぎてから播種する。

答え
× 水稲は、堆肥を過剰施用すると倒伏が起こり、収量や品質が低下する

【堆肥の施用による障害】
・未熟堆肥の施用
・C/N比が高い堆肥の施用
・ECの高い堆肥の施用
・過剰施用

堆肥の「過剰施用」として、水稲の倒伏(収量・品質の低下)があげられる。堆肥は、多く施用するほど生育向上効果が得られるわけではない。

答え
有効態ケイ酸の減少

【水稲に対するケイ酸の影響】
・ケイ酸不足の水田では、ケイ酸の施用による収量や品質の向上
(光合成能力の向上、たんぱく質含有量の低下)
・高温障害の軽減
(葉温の低下)
・病害抵抗性の向上
(ケイ素が表皮組織に沈積し、病原菌の侵入を物理的に防ぐ)

水稲の「高温による玄米の品質低下」とは、「白未熟粒」である。ケイ酸は、葉の蒸散作用を活性化し葉温を低下させることから、白未熟粒を防ぐとされる。

*マグネシウム不足も米の品質に影響するが、「高温障害」で考えると、ケイ酸の方が適切。
*リン酸は、不足すると収量が低下する。過剰になると、葉先枯れが生じる。

参考
新版 土壌医検定試験既出問題集2018-2020
一般財団法人 日本土壌協会
図解でよくわかる 土・肥料の基本
一般財団法人 日本土壌協会
誠文堂新光社/2021第7刷
土は土である 作物によってよい土とは何か
松中照夫/農文協/2013

7.土壌・施肥管理

答え
〇 有機質肥料の肥料成分は、化学肥料と比較して一般に低くい。窒素成分では4~10%程度を含むものが多い。

「有機質肥料」には、大豆や菜種の油かす、魚かす、骨粉、カニ殻などが含まれる。

有機質肥料の特徴
・化学肥料に比べて全体的に肥料成分が低い
(窒素成分で4~10%程度)
・比較的、窒素とリン酸が多いものが多く、カリウムが少ないものが多い
・窒素肥効が緩効性

答え
× 有機質肥料の窒素は、一般に緩効性である。

有機質肥料の窒素肥効は、土壌中の微生物によって分解されて発現する。よって、一般的に緩効性(ゆっくり効く)である。

答え
× 植物質有機質肥料は、動物質有機質肥料と比べて、施用初期に窒素の肥効が低い

有機質肥料には、植物質・動物質・有機性廃棄物がある。
動物質(魚かすなど)は、炭素率(C/N比)が3~4程度、植物質は4~6程度のものが多い。平均的な炭素率が低い分、動物質の方が、施用初期の窒素の肥効が高い

*炭素率(C/N比)
全炭素(C)と全窒素(N)の比。有機質資材の肥料効果を評価するための指標。炭素率が低いと、有機物から無機態窒素が速やかに放出され、作物に供給されることを示す。(肥料効果が高い)

答え
パーライト

土壌改良資材とは、土壌の物理性、化学性、生物性などを改善し、地力や生産性を高める目的で施すものである。肥料効果を兼ねるものもあるが、区別して考えられることが多い。また、土壌改良資材の中には、地力増進法で規定されている「政令指定土壌改良資材(12種類)」がある。

【主な政令指定土壌改良資材】
「物理性の改善」
・透水性改善(バーミキュライト)
・保水性改善(パーライト、泥炭)
・団粒形成
・膨軟化(バーク堆肥)
・水田の漏水防止(ベントナイト)
「化学性の改善」
・保肥力改善(ゼオライト)
・リン酸供給能改善

パーライトは、火山岩の一種を砕いて焼成して膨張させたもの。多孔質で軽く、壊れにくい。孔隙に水分が保たれるため、保水性の改善に用いられる。(保肥力はほとんどない)

バーミキュライトは、鉱物である「ひる石」を焼成して膨張させたもの。通気性、透水性、保水力に優れ、保肥力も高い。主に、透水性通気性の改善に用いられる。

バーク堆肥は、樹皮を材料にした堆肥。通気性がよく、多孔質で保水性もよい。ただし肥料効果は期待できない。主に、土壌の膨軟化に利用される。

答え
× C/N比が10以下の有機質資材を連用しても、腐植含量は高まらない

・炭素率(C/N比)
全炭素(C)と全窒素(N)の比。有機質資材の肥料効果を評価するための指標。炭素率が低いと、有機物から無機態窒素が速やかに放出され、作物に供給されることを示す。(肥料効果が高い)

炭素率(C/N比)は、おおむね「低い(10以下)」「中間(11~19)」「高い(20以上)」で区別される。比が小さい(窒素Nが多い)ということは、無機態窒素がすぐに放出されるので、土壌の有機物含量は上昇しにくい。(すぐに養分として使われるので、腐植などの有機物を蓄積する、という効果は低い)

腐植含量を高めるためるなら、炭素率(C/N比)が高いものの方が適する。

答え
× 施用年の窒素の発現量が大きい有機質資材は、C/N比10以下のものである。

有機質資材は、炭素率(C/N比)によって効果が異なる。

【炭素率(C/N比)と肥効】
・10以下(施用年の窒素発現量が多い/有機物含量は高まらない)
・11~19(施用年にある程度の窒素発現、翌年以降も継続)
・20以上(施用年の窒素発現量が少ない/有機物含量が高まる)
*25以上になると窒素飢餓が起こる

C/N比が低い(10以下)と、速やかに微生物に分解され、無機態窒素が作られる。

答え
〇 C/N比が20以上の有機質資材は、施用年の窒素発現量が少ない。また、C/N比が25以上では、窒素飢餓が生じることがある

【炭素率(C/N比)と肥効】
・10以下(施用年の窒素発現量が多い/有機物含量は高まらない)
・11~19(施用年にある程度の窒素発現、翌年以降も継続)
・20以上(施用年の窒素発現量が少ない/有機物含量が高まる)
*25以上になると窒素飢餓が起こる

窒素飢餓(窒素の有機化)とは、微生物の急激な増殖により、作物が利用できる窒素が一時的に不足することをいう。

微生物は、有機物に含まれる炭素をエネルギー源、窒素をたんぱく質源として利用し増殖する。C/N比25以上の資材(炭素が多く窒素が少ない)を投与すると、炭素を利用するために必要な窒素が足らないので、土壌中の窒素が利用される。すると作物が利用する窒素が不足し、生育に障害がでる。対策としては、「完熟堆肥を用いる」「未熟なものは窒素を加えて有機物の分解を促進する」「土壌中の窒素濃度を高める」などの方法がある

答え
× 堆肥は、炭素率(C/N比)が高くなるほど、施用当年の無機態窒素の発現量が少なくなる

【炭素率(C/N比)と肥効】
・10以下(施用年の窒素発現量が多い/有機物含量は高まらない)
・11~19(施用年にある程度の窒素発現、翌年以降も継続)
・20以上(施用年の窒素発現量が少ない/有機物含量が高まる)
*25以上になると窒素飢餓が起こる

C/N比が低い(10以下)と、速やかに微生物に分解され、無機態窒素が作られる。反対に、比が高いと、施用当年の窒素量は少ないが、数年かけて長く窒素を供給できる。

答え
× 畑地の腐植含量を維持していくための牛ふん堆肥の施用量は、黄色土で3t/10a程度黒ボク土で2t/10a程度である。

土壌中の有機物が、微生物の働きによって分解され発現する無機態窒素を、「地力窒素」と呼ぶ。地力窒素には、土壌の種類・地温・水分・酸素・pH・腐植含量が影響する。(最も影響するのが地温。次いで腐植含量。)

つまり、地力窒素の維持には腐植が関わり、腐植を供給するための堆肥施用が重要となる。

【腐植含量を維持しるための施用量】
(牛ふん堆肥)
・水田(灰色低地土)1t/10a
・畑地(黒ボク土)2t/10a
・畑地(黄色土)3t/10a

(黒ボク土は、もともと腐植が多い土壌のため、施用量が少なくて済むと考えられる。)

答え
〇 同じ種類の堆肥でも、副資材の種類や製造法によって、窒素含量などに大きな違いがある

近年の堆肥は、副資材の種類や、製造方法が多様化している。そのため、同じ種類の堆肥(例えば家畜ふん堆肥)でも、窒素含量などに大きな違いがある。

よって、どれくらいの無機態窒素を期待できるかは、表示してある炭素率(C/N比)で判断することが望ましい。

答え
〇 C/N比が10以下の有機資材は、施用年の窒素の発現が多く、土壌有機物含量は高まらない

・炭素率(C/N比)
全炭素(C)と全窒素(N)の比。有機質資材の肥料効果を評価するための指標。炭素率が低いと、有機物から無機態窒素が速やかに放出され、作物に供給されることを示す。(肥料効果が高い)

【炭素率(C/N比)と肥効】
・10以下(施用年の窒素発現量が多い/有機物含量は高まらない)
・11~19(施用年にある程度の窒素発現、翌年以降も継続)
・20以上(施用年の窒素発現量が少ない/有機物含量が高まる)
*25以上になると窒素飢餓が起こる

C/N比が低い(10以下)と、速やかに微生物に分解され、無機態窒素が作られる。反対に、比が高いと、施用当年の窒素量は少ないが、数年かけて長く窒素を供給できる。

答え
× C/N比が10~20の有機質資材は、施用年にある程度窒素が発現し、翌年以降も継続する。そのため、連用により、施用年から土壌有機物含量が高まる

【炭素率(C/N比)と肥効】
・10以下(施用年の窒素発現量が多い/有機物含量は高まらない)
・11~19(施用年にある程度の窒素発現、翌年以降も継続)
・20以上(施用年の窒素発現量が少ない/有機物含量が高まる)
*25以上になると窒素飢餓が起こる

答え
× C/N比が20以上の有機質資材は、施用年の窒素発現量は少ない。代わりに、有機物含量が高まりやすい。

【炭素率(C/N比)と肥効】
・10以下(施用年の窒素発現量が多い/有機物含量は高まらない)
・11~19(施用年にある程度の窒素発現、翌年以降も継続)
・20以上(施用年の窒素発現量が少ない/有機物含量が高まる)
*25以上になると窒素飢餓が起こる

答え
× 葉面散布剤は、肥料として登録が必要である。

葉面散布(ようめんさんぷ)とは、肥料成分を植物に吸収させるために、液状肥料を葉面に散布することをいう。植物は、根からだけでなく、葉からも養分を吸収できる。

答え
〇 特殊肥料は、販売開始前までに、都道府県知事に届け出をする必要がある。

肥料は、肥料取締法により、普通肥料・特殊肥料の2つに分類される。

普通肥料は、基本的に農林水産大臣の登録を受けた者が生産することができる。肥料の成分には規格があり、有効成分が保証されている。

対して特殊肥料の生産や販売は、都道府県知事に届出をすることにより行なうことができる。(ただし、種類は農林水産大臣が指定する)

答え
× 粉末にしない油かすは、保証票の添付は必要ない

有機質肥料とは、動植物質資材や、有機性廃棄物を原料にした肥料の総称。一般的には、化学合成された無機質肥料(化学肥料)と対比される。

有機質肥料は、肥料取締法において、「普通肥料」に含まれるものと、「特殊肥料」に含まれるものに分類される。

・普通肥料の有機質肥料
粉末にしたもの、有害成分含有の可能性があるもの
・特殊肥料の有機質肥料
粉末にしていないもの、有害成分含有の懸念が少ないもの

よって、「粉末にしない油かす」は、「特殊肥料の有機質肥料」に含まれる。

また、「普通肥料」には、保証成分量や正味重量を記載した保証票の添付が必要であるが、「特殊肥料」の場合は必要ない。

答え
〇 過リン酸石灰は、生理的中性肥料である。

肥料には、主成分とともに副成分が含まれる。肥料を施用した場合、この影響により土壌pHが変化するものがある。(生理的反応)

引用/2.肥料の種類と特色/農林水産省
https://www.maff.go.jp/j/seisan/kankyo/hozen_type/h_sehi_kizyun/pdf/gum10.pdf

・生理的酸性肥料
化学的には中性であるが、肥料成分が吸収されたあと、酸性の副成分が残るもの
(硫安/硫酸アンモニア、塩安/塩化アンモニア)

・生理的中性肥料
肥料成分が吸収されたあと、酸性やアルカリ性の副成分が残らないもの
(尿素、過リン酸石灰

・生理的アルカリ性肥料
化学的には中性か酸性であるが、肥料成分が吸収されたあと、アルカリ性の副成分が残るもの
(熔成リン肥、石灰窒素)

答え
× 尿素は、生理的中性肥料である。

・生理的酸性肥料
化学的には中性であるが、肥料成分が吸収されたあと、酸性の副成分が残るもの
(硫安/硫酸アンモニア、塩安/塩化アンモニア)

・生理的中性肥料
肥料成分が吸収されたあと、酸性やアルカリ性の副成分が残らないもの
尿素、過リン酸石灰)

・生理的アルカリ性肥料
化学的には中性か酸性であるが、肥料成分が吸収されたあと、アルカリ性の副成分が残るもの
(熔成リン肥、石灰窒素)

答え
× 熔成リン肥は、生理的アルカリ性肥料である。

・生理的酸性肥料
化学的には中性であるが、肥料成分が吸収されたあと、酸性の副成分が残るもの
(硫安/硫酸アンモニア、塩安/塩化アンモニア)

・生理的中性肥料
肥料成分が吸収されたあと、酸性やアルカリ性の副成分が残らないもの
(尿素、過リン酸石灰)

・生理的アルカリ性肥料
化学的には中性か酸性であるが、肥料成分が吸収されたあと、アルカリ性の副成分が残るもの
熔成リン肥、石灰窒素)

答え
〇 畝内施肥法は、専用の施肥機械が必要である

畑地における施肥法には、「全面全層施肥法」「畝内施肥法」「育苗ポット施肥」などがある。

畝内施肥法は、畝の中のみに施肥する方法で、作物の根が広がる範囲にのみ肥料を与える。施肥の位置によって、「畝内施肥」「畝内部分施肥」「畝内局所施肥」に分類される。
施肥位置を特定して行うので、専用の施肥機械が必要となる。(その分、施肥量を減少させることができる)

答え
× 水稲の側条施肥法は、初期生育が確保される

水稲の施肥法には、「全面全層施肥」「側条施肥」「育苗箱施肥」などがある。

側条施肥は、作条(種をまくために掘った浅い溝)の側方3~5cm・深さ3~5cmの位置に施肥する方法である。(つまり、水田全体に施肥するわけではない)
初期成育が確保されるとともに、施肥の省力化や節減ができる。(移植作業と基肥施肥が同時にできるため)

答え
〇 育苗時に培土に施肥を混合して、定植時や移植後の施肥を省略、あるいは低減する技術が、水田作や畑作ともに導入されている。

水田における「育苗箱施肥」や、畑地における「育苗ポット施肥」は、育苗時に培土に施肥を混合して、定植時や移植後の施肥を省略、あるいは低減する技術である。(圃場に移してからの、追肥が減らせる)

答え
× 水稲の育苗箱全量施肥法は、普及地域が限定的である

水稲の育苗箱全量施肥法は、作付け期間分の窒素肥料を育苗箱に入れる方法である。育苗期の追肥や本田での基肥・追肥を省略することができる。作業効率が高く省力的であるが、初期成育が劣るので、地力の劣る水田や育苗時期が寒い地帯の水田には向かないとされている。

答え
〇 水稲の全面全層施肥は、作業効率が高く脱窒防止効果がある

水稲の全面全層施肥は、水田の作土全層に肥料を施肥すること。作業効率が高く、全層に施肥するので、脱窒防止効果がある

・脱窒(だっちつ)
土壌中の窒素化合物が、微生物の作用により、空気中へ失われること。水田で窒素肥料の肥効が少ないのは脱窒作用による。また、畑でも、雨水の影響により脱窒が起こる。

答え
× 水稲の側条施肥法は、初期生育が確保される

水稲の施肥法には、「全面全層施肥」「側条施肥」「育苗箱施肥」などがある。

側条施肥は、作条(種をまくために掘った浅い溝)の側方3~5cm・深さ3~5cmの位置に施肥する方法である。(つまり、水田全体に施肥するわけではない)
初期成育が確保されるとともに、施肥の省力化や節減ができる。(移植作業と基肥施肥が同時にできるため)

答え
〇 側条施肥田植方式では、一般に施肥量が10~30%低減できる。

水稲の施肥法には、「全面全層施肥」「側条施肥」「育苗箱施肥」などがある。

側条施肥は、作条(種をまくために掘った浅い溝)の側方3~5cm・深さ3~5cmの位置に施肥する方法である。(つまり、水田全体に施肥するわけではない)

苗近くに施肥するため、全面全層施肥に比べて、施肥量が10~30%低減できる

答え
× 露地野菜畑では、全面全層施肥法が多い。

全面全層施肥法が最も多く、一部で畝内施肥や畝内部分施肥が行われている。

答え
× 樹園地では、一般に表面施肥が行われている。

樹園地の施肥法には、「表面施肥」「局所施肥」などがある。

表面施肥は、樹木の根が伸びている周辺を中心に施肥する方法である。

参考
新版 土壌医検定試験既出問題集2018-2020
一般財団法人 日本土壌協会
図解でよくわかる 土・肥料の基本
一般財団法人 日本土壌協会
誠文堂新光社/2021第7刷
土は土である 作物によってよい土とは何か
松中照夫/農文協/2013

8.主要作物

答え
× 水稲では、出穂後に穂への養分の転流が主体となるため、加里と窒素を穂肥として施用する必要がある。

穂肥(ほごえ)は、穂の発育をよくする目的で施される追肥のことをいう。穂の分化が始まる出穂(しゅっすい)前の20~25日頃に施肥する。

水稲においてリン酸は、生育初期に影響するので、基肥として施用する。対して窒素と加里(カリウム)は、生育とともに吸収量が増えるため、基肥に加えて追肥でも施用する。

よって、出穂における追肥(穂肥)は、加里と窒素が必要となる。

答え
〇 リンゴは、果実の肥大期に窒素が多く供給されると、着色が悪くなりやすい

・リンゴにおける土壌・施肥管理の注意点
1.翌年の生産維持も考慮した施肥管理を行う
2.果実の肥大充実期には、品質向上のために窒素供給を漸減する
3.土壌診断に基づき、養分バランスがとれるようにする
4.土壌の通気性・排水性などが低下しないように土壌改良する

「2」において、果実が肥大する夏から秋にかけての窒素供給が多いと、糖度や着色の向上が阻害される。(色に関しては、窒素施肥量が多いと、アントシアニンの生成が阻害されると考えられる)

答え
× トマトの収量向上のためには、生育初期は肥料を抑制気味にする

トマトなどの果菜類は、収穫が開始されると、茎葉の生長と果実の肥大が並行して進む。そのため、生育初期は肥料を抑制気味にし、収穫開始後に追肥をして土壌中無機態窒素含量を10mg/100g以上を保つ。

トマトは、茎葉の生長、果実の肥大、収穫のバランスが崩れると、乱形果などの障害が発生しやすいとされる。

答え
× 水稲は、出穂期まで窒素を多く必要とする

分げつ期は、茎数が増える時期。(種まきから60日目頃)
出穂期(しゅっすいき)は穂が出る時期(種まきから120日目頃)

水稲は、出穂期まで窒素を多く必要とする。これは、栄養成長(葉や茎が成長すること)が続くためとされる。その後の開花・登熟期においても、葉の生産能力に必要な窒素を供給し、収穫時点で土壌中の無機態窒素が切れるようにすることが望ましい。

答え
× 水稲は、出穂開花後に窒素を多く必要とするので、出穂期の前に追肥(穂肥)を施用するのが一般的である。

穂肥(ほごえ)は、穂の発育をよくする目的で施される追肥のことをいう。穂の分化が始まる出穂(しゅっすい)前の20~25日頃に施肥する

答え
〇 水稲が吸収する窒素のうち6~7割は、土壌有機物が分解して発現してくる地力窒素に由来する。

土壌中の有機物が、微生物の働きによって分解され発現する無機態窒素を、「地力窒素」と呼ぶ。地力窒素には、土壌の種類・地温・水分・酸素・pH・腐植含量が影響する。(最も影響するのが地温。次いで腐植含量。)

水稲は地力窒素の依存度が高く、吸収窒素の約60%を占める。そのため、稲わらや堆肥などの有機物の投入が重要となる。

答え
〇 水稲栽培では、収穫時点に土壌中の無機態窒素が切れるようにする

水稲は、出穂期まで窒素を多く必要とする。これは、栄養成長(葉や茎が成長すること)が続くためとされる。また、その後の開花・登熟期においても、葉の生産能力に必要な窒素を供給する。ただし、収穫時点では、土壌中の無機態窒素が切れるようにすることが望ましい。(理由不明)

答え
× 水稲は、開花期・登熟期に窒素やカリウムを多く必要とするので、穂肥期に追肥する。

水稲において窒素とカリウムは、生育とともに吸収量が増えるため、基肥に加えて追肥でも施用する。よって出穂における追肥(穂肥)は、窒素とカリウム(加里)が必要となる。

・穂肥(ほごえ)
穂の発育をよくする目的で施される追肥のこと。穂の分化が始まる出穂(しゅっすい)前の20~25日頃に施肥する。

対してリン酸は、生育初期に影響するので、基肥として施用する。

答え
× 水稲は、出穂期まで窒素を多く必要とする

分げつ期は、茎数が増える時期。(種まきから60日目頃)
出穂期(しゅっすいき)は穂が出る時期(種まきから120日目頃)

水稲は、出穂期まで窒素を多く必要とする。これは、栄養成長(葉や茎が成長すること)が続くためとされる。その後の開花・登熟期においても、葉の生産能力に必要な窒素を供給し、収穫時点で土壌中の無機態窒素が切れるようにすることが望ましい。

答え
〇 ホウレンソウを年に数回作付けする場合には、跡地土壌中の残存無機態窒素を考慮して、基肥を減らすことが望ましい

ホウレンソウは、生育途中で葉を収穫する。そのため、収穫期に向けて土壌中の無機態窒素を漸減させながらも、収穫時には一定以上の窒素が残るようにする必要がある。(収穫時に、葉の活性を維持させるため)

ただし、ホウレンソウは年に数回作付けする場合が多く、その際、土壌の窒素が多くなりすぎると、収量・品質が低下する。(葉の硝酸態窒素が多くなる)
そのため、前作の土壌中の残存無機態窒素を考慮して、基肥を減らすなどの工夫がされる。

答え
× 収穫期の土壌中無機態窒素含量は、最低限5mg/100g前後必要である。

ホウレンソウは、生育途中で葉を収穫する。そのため、収穫期に向けて土壌中の無機態窒素を漸減させながらも、収穫時には一定以上の窒素が残るようにする必要がある。(収穫時に、葉の活性を維持させるため)

この茎葉の活性維持には、土壌中無機態窒素含量が(硝酸態窒素で)5~10mg/100g前後必要とされている。これを下回ると、葉の退色・黄化、生育の停滞が起こる。

答え
〇 ホウレンソウは生育期間が短いので、必要な養分を全量基肥として施用する

ホウレンソウは、おおむね播種から収穫まで1~2カ月程度である。栽培期間が短いため、生育に必要な養分を、全量基肥として施用する。

答え
× トマトは、生育初期は肥料を抑制気味にし、収穫開始後に追肥をして無機態窒素濃度の変動を少なくする。

トマトなどの果菜類は、収穫が開始されると、茎葉の生長と果実の肥大が並行して進む。そのため、生育初期は肥料を抑制気味にし、収穫開始後に追肥をして土壌中無機態窒素含量を10mg/100g以上を保つ。

トマトは、茎葉の生長、果実の肥大、収穫のバランスが崩れると、乱形果などの障害が発生しやすいとされる。

答え
× トマトは、収穫を開始したら肥切れを起こさないよう、無機態窒素含量が10mg/100gを下回らないよう追肥を行う。

トマトなどの果菜類は、収穫が開始されると、茎葉の生長と果実の肥大が並行して進む。そのため、生育初期は肥料を抑制気味にし、収穫開始後に追肥をして土壌中無機態窒素含量を10mg/100g以上を保つ

トマトは、茎葉の生長、果実の肥大、収穫のバランスが崩れると、乱形果などの障害が発生しやすいとされる。

答え
〇 トマトの施肥管理において、リン酸は生育初期から十分に供給する必要がある。

リン酸は、トマトの根の発達など初期の生育に影響する。そのため、基肥として施用し、生育初期から十分に供給する。対してカリウムは、果実の肥大に影響するため、果実の肥大期以降、肥料切れにならないように管理する。

答え
× キクは過湿に弱く孔隙率が高い土壌が適する

キクは過湿に弱いため、孔隙率が高い土壌が適する。また、根にストレスを与えないよう、作土が深く、通気性・排水性がよい土壌にすることが大切とされる。

答え
〇 キクは、定植から出蕾期にかけて窒素供給量を増やす。その後は供給量をやや下げて、窒素の吸収を制限する

出蕾以降に窒素が多いと、日持ち性の低下、病害に罹りやすいなどの影響が出る。

*出蕾(しゅつらい)は、つぼみが出てくること

答え
〇 ハウスでのキクの連作は、電気伝導度(EC)が高くなりやすいため、濃度障害を受けないような土壌管理が必要である。

キクの施肥管理として、塩類が集積しないよう注意する必要がある。とくにハウスでキクを連作している圃場では、硝酸や硫酸などの塩類が集積したり、リン酸が過剰になっている場合が多い。キクは定植時に濃度障害を受けやすいため、これを予防する土壌管理が必要である。

答え
× 果実が肥大する時期に多量の窒素質肥料を施肥すると、果実糖度が低下し着色が悪くなる

リンゴなどの果樹において、果実が肥大する夏から秋にかけての窒素供給が多いと、糖度や着色の向上が阻害される。(色に関しては、窒素施肥量が多いと、アントシアニンの生成が阻害されると考えられる)

答え
× 果実収穫期やその直後は、翌年分を考慮した施肥管理を行う

果樹の特徴として、翌年の生産維持を考慮した施肥管理があげられる。本年の果実がなりすぎないように摘果を行うとともに、翌年分のために貯蔵養分が蓄積していくよう施肥する。

例えばリンゴの場合、収穫期から落葉期までは、樹体内に貯蔵養分を蓄積する時期となる。そのため、収穫期かその直後に養分を供給する。(これをお礼肥と呼ぶ)

答え
〇 リンゴのビターピット症は、カルシウム欠乏症であり、窒素肥料が多いと発生しやすい

ビターピット症では、果実の表面に褐色の斑点がみられる。これは、石灰(カルシウム)の欠乏症であるが、窒素やカリウムの過剰など、養分バランスが崩れた場合に発生しやすくなる。

答え
〇 リンゴは、春の発芽、開花、結実に使う養分の多くを、根などの樹体に蓄えている

リンゴは、発芽、開花、結実の時期では、まだ葉が展開していない(じゅうぶんな光合成ができない)。そのため、この時期は根などに蓄えた貯蔵養分が利用される
新葉が展開された後は、養分転換期となり、葉による光合成産物が、養分供給の主体となる。

答え
× リンゴは、6~7月頃の窒素の養分吸収が盛んな時期に、窒素供給を制限する必要がある

リンゴなどの果樹において、果実が肥大する夏から秋にかけての窒素供給が多いと、糖度や着色の向上が阻害される。(色に関しては、窒素施肥量が多いと、アントシアニンの生成が阻害されると考えられる)

6~7月頃は、窒素の吸収量が盛んで、光合成産物の増加量が多くなる時期である。新梢伸長は停止し、果実の発育が盛んになる。この頃から、窒素供給を制限し始める。

答え
〇 リンゴは、翌年に備えて収穫期頃にお礼肥をして、樹勢の回復を図る

果樹の特徴として、翌年の生産維持を考慮した施肥管理があげられる。本年の果実がなりすぎないように摘果を行うとともに、翌年分のために貯蔵養分が蓄積していくよう施肥する。

例えばリンゴの場合、収穫期から落葉期までは、樹体内に貯蔵養分を蓄積する時期となる。そのため、収穫期かその直後に養分を供給する。(これをお礼肥と呼ぶ)

*樹勢は、樹木の生育状態(生長する勢い)を指す言葉。

参考
新版 土壌医検定試験既出問題集2018-2020
一般財団法人 日本土壌協会
図解でよくわかる 土・肥料の基本
一般財団法人 日本土壌協会
誠文堂新光社/2021第7刷
土は土である 作物によってよい土とは何か
松中照夫/農文協/2013

9.土壌診断

答え
× 一般的に行われている土壌の化学性診断は、生育障害の未然防止のための予防診断が主である。

土壌診断には、化学性診断(pH・養分など)、物理性診断(土の硬さ・孔隙率など)、生物性診断(糸状菌の密度・B/F値など)の3つがある。

また、診断の目的は、「予防診断」(生育障害を未然に防止するリスク回避)と、「対策診断」(生育障害の発生要因を特定して対策する)がある。

化学性診断は最も多く行われている診断であり、多くは、「予防診断」である。(一部「対策診断」も行われる)

答え
× 一般的に行われている土壌の物理性診断は、圃場で調査・測定が行われる対策診断が主である。

土壌診断には、化学性診断、物理性診断、生物性診断の3つがある。また、診断の目的は、「予防診断」(生育障害を未然に防止するリスク回避)と、「対策診断」(生育障害の発生要因を特定して対策する)がある。

物理性診断の多くは、対策診断である。圃場での調査・測定が中心に行われる。

答え
〇 一般的に行われている土壌の生物性診断は、予防診断と対策診断の両方が行われることが多い。

土壌診断には、化学性診断、物理性診断、生物性診断の3つがある。また、診断の目的は、「予防診断」(生育障害を未然に防止するリスク回避)と、「対策診断」(生育障害の発生要因を特定して対策する)がある。

生物性診断は、微生物相のバランスを見る「予防診断」と、病害やセンチュウ害の特定を行う「対策診断」が両方行われることが多い。

答え
電気伝導度(EC)

化学性診断の項目は、変化しやすいもの(診断頻度が多い方がよいもの)と、変化しにくいもの(診断頻度が少なくてよいもの)に分けられる。

・変化しやすいもの(診断頻度が多い方がよいもの)
pH、電気伝導度(EC)、無機態窒素、有効態リン酸、交換性カリウム、交換性マグネシウム、交換性カルシウム、塩基バランス

・変化しにくいもの(診断頻度が少なくてよいもの)
陽イオン交換容量(CEC)、リン酸吸収係数、腐植含量、全窒素含量

EC(Electrical Conductivity/電気伝導度)は、土壌中の電気の伝わりやすさであり、塩類濃度の指標である。これは土壌中の養分量、特に硝酸態窒素と関連する。

答え
遊離酸化鉄

化学性診断の中で、特に水田で重視される項目として、「遊離酸化鉄」「有効態ケイ酸」がある。

遊離酸化鉄は、秋落ち現象の原因となる硫化水素から、根を守る働きがある。(硫化鉄に変化させて無害化・根の周囲に酸化鉄の被膜を作る)

水稲に対するケイ酸の影響には、
・収量や品質の向上(光合成能力の向上、たんぱく質含有量の低下)
・高温障害の軽減(葉温の低下)
・病害抵抗性の向上(ケイ素が表皮組織に沈積し、病原菌の侵入を物理的に防ぐ)
などがある。

答え
10袋

化学肥料「A」(1袋20kg・窒素含量15%保証)には、3kgの窒素が含まれる。
(20kg×0.15=3kg)
窒素を30kgを施用したい場合には、30kg÷3kg=「10袋」必要となる。

参考
新版 土壌医検定試験既出問題集2018-2020
一般財団法人 日本土壌協会
図解でよくわかる 土・肥料の基本
一般財団法人 日本土壌協会
誠文堂新光社/2021第7刷
土は土である 作物によってよい土とは何か
松中照夫/農文協/2013

[数字の暗記]は、土壌医検定3級の出題範囲の中から、単に数字として暗記する部分を集めたものです。数字は、繰り返し解いて、感覚をつかむしかない…!(全156問)

25-30℃

17℃以下

20℃

15-20℃

13℃

22-28℃

2mm

34%

17%

15-20cm

20-30mm

5.5-6.5

15mg

0.8%

26℃

25cm

30cm

60cm

45-50%

20-30%

22mm

0.3mS/cm

2.5mS/cm

2-6

10-100mg

6.0-6.5

60cm

30-40cm

2m

20mm

22mm

100cm、60-70cm

30-40cm、60cm

5.5-6.5

6.0-7.0

4.0-5.0

2年、3年

9種類

8種類

2-6

4-8

1,500

30-280meq/100g

6.0-6.5

6.0-7.0

5

7.2-7.4

5

1.5mS/cm

6.5

25kg

5mg

7

5.5-6.5

100mg

10~100mg

100mg

20mg

20-50mg

50mg

10mg

2

60-90%

150

2-6

2

4-8

7

100kg

15mg

0.8%

2

29

10-12cm

12-15cm

20-25cm

15-30cm

15-20cm

25cm以上

30cm以上

60cm以上

22mm

20-23mm

20-22mm

20mm

0.8

1.3-1.4

40-45%

16-30%

20-30%、10%

(1.5〜1.8)〜(2.7〜3.0)

3.8

4.2

2.5

50mm/日

100mm/日

700、140kg
値を修正しました 2/10)

70-75%

20-25%

5%

70-80%

10℃

25-30日

15℃

15℃

10年

70%

2-3ヶ月

7.2-7.4

5前後

25

8月

20

20

25

10

10-20

20

10-20

20

17-19

11

9

15℃、20-25℃

60-70%

1t

2-3t

30%

3-4

4-6

10

25℃

3-5cm、4-6cm

10-30%

20-40%

20-30%

50%、4倍

8-9月

1-2ヶ月

5mg

3,500mg

5.0、6.0〜7.0

10mg

30cm、20cm

80%、95%

5ヶ所

30cm

40cm

500g

2mm目

60-70cm、1m

30cm

14-24mm

100ml、50mm、51mm

20kg

10a

第4回[数字の暗記]おわり。