[基礎理解]は、『図解でよくわかる 土・肥料の基本』の内容を、marcyが問題形式にしたものです。形式は「土壌医検定2級」に合わせて「4択」にしています(ただし、問題と解説は自身で作ったものであり、問い方や文体は実際の試験とは異なります)。3つのブロック(土・栄養素・肥料)に分かれており、全51問です。土壌に関する全体像を把握することを目的にしています。(わからないながらも進むことが前提で、登場する言葉やジャンルと知り合いになればOK!)

ブロック1[土]

 1回1番(土ってどんなヤツか)

土壌についての記述である。
正しいのはどれか。1つ選べ。
(1)土壌の生成は、植物遺体の分解から始まる。
(2)粘土鉱物は、腐食から生成される。
(3)「人為」は、土壌生成因子に含まれる。
(4)土壌層位のB層(集積層)には、腐植が多く含まれる。

【3】

(1)× 土壌の生成は、岩石(母岩)の風化から始まる。
その後、土壌母材の移動・蓄積(岩石から砂へ)→ 土壌化の開始(粘土鉱物の生成、植物遺体の分解・腐植化)→ 土壌化の進行(団粒構造の形成)・土壌層の分化と進む。

(2)× 粘土鉱物は、砂や火山灰から流れ出た無機物から生成される。
粘土鉱物は、粘土を構成する微細な粒子のことである。
腐植は、動植物の遺体を微生物が分解する事でできる。黒色の土壌有機物である。

(3) 「人為」は、土壌生成因子に含まれる。
土壌という自然体(独自の形態)を作るための生成因子には、母材、気候、地形、生物、時間、人為がある。これらが関わることで、土壌が生まれる。例えば水田は、人為が大きく関わった土壌である。

(4)× 土壌層位のA層(溶脱層)には、腐植が多く含まれる。
土壌層は、大きく3つに分類され、地表面からA層・B層・C層と呼ぶ。B層(集積層)は、粘土、鉄化合物などが多く含まれる。C層は、母岩や母岩の崩壊物を含む。

参考
図解でよくわかる 土・肥料の基本
一般財団法人 日本土壌協会
誠文堂新光社/2021第7刷
ページ8.9

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 1回2番(土のカラダの割合)

土壌の三相構造と団粒構造についての記述である。
正しいのはどれか。1つ選べ。
(1)土壌の三相構造に、空気は含まれない。
(2)固相率は、約40%が適する。
(3)固相率と水分率を合わせて、孔隙率と呼ぶ。
(4)団粒構造が発達すると、孔隙率が低下する。

【2】

(1)× 土壌の三相構造に、空気は含まれる
三相構造は、固相(土壌粒子、動植物分解物)、液相(水分)、気相(空気)からなる。

(2) 固相率は、約40%が適する。
三相構造の分布割合は、固相40%、液相30%、気相30%が目安である。

(3)× 空気率水分率を合わせて、孔隙率と呼ぶ。(こうげき→すきまのこと)
つまり、土壌の三相の内訳=固相率+孔隙率(水分率+空気率)となる。

(4)× 団粒構造が発達すると、孔隙率が上昇する。
団粒構造とは、土壌粒子(粘土や腐植)が結合して集合体を作ったものである。小さな集合体は、さらに集まって大きな集合体を作る。これにより、土壌の中に大中小の孔隙が生まれる。

参考
図解でよくわかる 土・肥料の基本
一般財団法人 日本土壌協会
誠文堂新光社/2021第7刷
ページ10.11

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 1回3番(土のカラダを作るもの1)

土壌有機物・腐植についての記述である。
正しいのはどれか。1つ選べ。
(1)有機物とは、窒素(N)を含む物質の総称である。
(2)腐植物質は、陽イオンの吸着力が大きい。
(3)腐植物質は、土壌中のアルミニウムを活性化し、リン酸との結合を促進する。
(4)黒ボク土は、腐植が多くリン酸が充足している土壌である。

【2】

(1)× 有機物とは、炭素(C)を含む有機物の総称である。
堆肥、落ち葉、わら、もみがらなどは全て有機物である。有機物は微生物によって分解され、腐植(黒い物質)へと変わる。言い換えると、腐植は、微生物による有機物の利用残渣である。

(2) 腐植物質は、陽イオンの吸着力が大きい
複雑な組成をもち、分解されにくい有機化合物を腐植物質(腐植質)と呼ぶ。腐植物質は陽イオン(カルシウム・マグネシウム・カリウム)を維持する力が強く、保肥力を高める。(肥料の持ちがよくなる)

(3)× 腐植物質は、アルミニウムを不活性化し、リン酸との結合を抑制する。
土壌に含まれるアルミニウムがリン酸と結合すると、作物はリン酸を吸収できなくなる。腐植物質はアルミニウムと結合することで不活性化し、リン酸を効きやすくする。

(4)× 黒ボク土は、腐植が多いが、リン酸が欠乏しやすい土壌である。
黒ボク土(くろぼくど)は、火山灰を母材とする土壌であり、日本の畑の約半分を占める。天然の腐植が多いが、酸性が強いため、活性アルミニウムがリン酸を固定しやすい。つまり、腐植は多いが、作物にとってはリン酸が欠乏しやすい土壌である。

参考
図解でよくわかる 土・肥料の基本
一般財団法人 日本土壌協会
誠文堂新光社/2021第7刷
ページ12.13

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 1回4番(土のカラダを作るもの2)

土壌生物についての記述である。
誤っているのはどれか。1つ選べ。
(1)ミミズは、土壌動物の「巨形動物」に分類される。
(2)数が最も多い土壌微生物は、細菌である。
(3)重量割合が最も高い土壌微生物は、糸状菌である。
(4)土壌特有のにおいは、藻類がつくる。

【4】

(1) ミミズは、土壌動物の「巨形動物」に分類される。
土壌の中には「土壌動物」と「土壌微生物」が生息している。「土壌動物」は4つに分類され、大きい順に巨形動物・大形動物・中形動物・小形動物となる。巨形動物(20mm以上)には、トカゲ・ヘビ・モグラ・ミミズなどが含まれる。

(2) 数が最も多い土壌微生物は、細菌である。
土壌微生物は、細菌・放線菌・糸状菌・藻類に大別される。土壌1g中には1億以上の微生物が生息し、数は細菌が最も多い。

(3) 重量割合が最も高い土壌微生物は、糸状菌である。
糸状菌とは、カビのこと。数は、細菌よりも少ない(1/10〜1/100程度)。ただし土壌中に菌糸を伸ばしており、重量割合でみると、細菌より高くなる。

(4)× 土壌特有のにおいは、放線菌がつくる。
放線菌は、細菌と糸状菌(カビ)の間の性質をもつ微生物。分類上は、一応細菌の仲間。糸状菌のように菌糸も伸ばす。抗生物質を作るものもいる。(抗生物質→微生物がつくり、他の微生物や細胞の機能を阻害する物質のこと。)藻類は、窒素固定能力などをもつ。

参考
図解でよくわかる 土・肥料の基本
一般財団法人 日本土壌協会
誠文堂新光社/2021第7刷
ページ14.15

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 1回5番(土のカラダの一部ができるまで1)

微生物による有機物の分解についての記述である。
順番として正しいのはどれか。1つ選べ。
(1)でんぷん・たんぱく質 → ペクチン → セルロース → リグニン
(2)でんぷん・たんぱく質 → セルロース → ペクチン → リグニン
(3)リグニン → でんぷん・たんぱく質 → ペクチン → セルロース
(4)リグニン → セルロース → ペクチン → でんぷん・たんぱく質

【1】

(1) でんぷん・たんぱく質 ペクチンセルロースリグニン

有機物分解の、大まかな流れは以下の通り。
1.でんぷん(糖)・たんぱく質(アミノ酸)などの細胞内の物質(好気性細菌、糸状菌)
2.細胞壁成分のペクチン
3.繊維素であるセルロース(放線菌)
4.木質素であるリグニン(糸状菌の仲間の担子菌(きのこ類))

リグニンは化学的に安定で、微生物によって最も分解されにくい物質である。

参考
図解でよくわかる 土・肥料の基本
一般財団法人 日本土壌協会
誠文堂新光社/2021第7刷
ページ14.15

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 1回6番(土の種類とどこにいるか)

土壌と分布についての記述である。
組み合わせとして正しいのはどれか。1つ選べ。
(1)褐色森林土 ー 低地
(2)グライ土 ー 台地
(3)黒ボク土 ー 山地
(4)赤色土・黄色土 ー 丘陵地

【4】

(1)× 褐色森林土 ー 山地・丘陵地
(2)× グライ土 ー 低地
(3)× 黒ボク土 ー 台地(・丘陵地)
(4) 赤色土・黄色土 ー 丘陵地

日本の主な土壌群と分布は次の通り。
(高地から)
『山地』褐色森林土
『低山・丘陵地・台地』赤色土、黄色土、黒ボク土
『低地』褐色低地土、灰色低地土、グライ土
『その他』泥炭土

参考
図解でよくわかる 土・肥料の基本
一般財団法人 日本土壌協会
誠文堂新光社/2021第7刷
ページ18.19

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 1回7番(土の種類と特徴)

土壌群の特徴についての記述である。
正しいのはどれか。1つ選べ。
(1)赤色土・黄色土は、腐植層が発達している。
(2)黒ボク土は、火山灰が母材となる。
(3)灰色低地土は、主に果樹園や茶園として利用される。
(4)グライ土は、排水良好である。

【2】

(1)× 赤色土・黄色土は、腐植層が少ない
丘陵地に分布する赤色土・黄色土は、常緑広葉樹林の下で生成され、B層が酸化鉄によって赤黄色になっている。腐植層は発達せず、かたく耕起しにくいという特徴がある。果樹園や茶園、野菜畑として利用される。

(2) 黒ボク土は、火山灰が母材となる。
台地や丘陵地に分布する黒ボク土は、火山灰が母材となる。腐植が多く、透水性や通気性にも優れている。ただし、酸性が強く、アルミニウムがリン酸を固定しやすい。(作物がリン酸を吸収しにくい)

(3)× 灰色低地土は、主に水田として利用される。
低地に分布する灰色低地土は、扇状地や平野部の土壌である。排水性がよく、灌漑することで水田に利用されることが多い。また、田畑転換による野菜作りも行われる。

(4)× グライ土は、排水不良である。
低地に分布するグライ土は、沖積地の凹地に堆積する。排水は不良であり、そのため還元状態(酸素の欠乏)によるグライ化(酸化鉄ができて土が青灰色になる)が起こる。主に水田に利用されている。

参考
図解でよくわかる 土・肥料の基本
一般財団法人 日本土壌協会
誠文堂新光社/2021第7刷
ページ18.19

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 1回8番(土の性質を分類する)

土性についての記述である。
正しいのはどれか。1つ選べ。
(1)土性は、礫(れき)の割合で区分される。
(2)日本の土性は、12種に区分される。
(3)壌土の簡易的な判定方法として、「指でつまんだ土をマッチ棒くらいの太さにできる」が目安となる。
(4)壌土の粘土割合は、25.0〜37.5%である。

【4】

(1)× 土性は、砂・微砂(シルト)・粘土の割合で区分される。
土壌は、礫(粒径2mm以上)と鉱物粒子(2mm以下)が集まってできている。
また鉱物粒子は、砂(2〜0.02mm)、微砂(シルト)(0.02〜0.002mm)・粘土(0.002mm以下)に分類される。土性とは、この鉱物粒子(砂・微砂・粘土)の割合によって土壌を分類したものである。よって礫は含まれない。

(2)× 日本の土性は、5種に区分される。
日本農学会法によると、土性は「砂土」「砂壌土」「壌土」「埴壌土」「埴土(しょくど)」の5つに分類されている。12種は、国際的な区分である。

※「壌土」は、土性(砂や粘土の割合)で登場する分類名の1つ。土全体を意味する「土壌」とは異なるので注意。

(3)× 壌土の簡易的な判定方法として、「指でつまんだ土を鉛筆くらいの太さにできる」が目安となる。
一般的に作物に適した土性は、「壌土」である。これを簡易的に判断する場合、親指と人差し指でつまんだ土を、鉛筆くらいの太さにできるかが目安となる。(砂が多いとまとまらず、粘土が多いともっと細くできる。)「マッチ棒くらいの太さにできる」は、埴壌土の目安である、

(4) 壌土の粘土割合は、25.0〜37.5%である。
作物に適する「壌土」は、分析による粘土割合が25.0〜37.5%とされる。ただし、ヒトが触った
感覚では「砂と粘土が半々の感じ(ツルツルザラザラ)」となる。

参考
図解でよくわかる 土・肥料の基本
一般財団法人 日本土壌協会
誠文堂新光社/2021第7刷
ページ20.21

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 1回9番(土が過ごす環境の違い)

畑と水田についての記述である。
正しいのはどれか。1つ選べ。
(1)わが国の畑土壌は、約半分を灰色低地土が占める。
(2)畑土壌は、水田土壌に比べて肥料への依存度が高い。
(3)水田土壌は、作土層の上に「すき床」をつくる。
(4)水田土壌は、畑土壌に比べて連作障害が起こりやすい。

【2】

(1)× わが国の畑土壌は、約半分を黒ボク土が占める。
土壌は大きく畑と水田に分けられる。
畑土壌の多くが黒ボク土(47%)、次いで褐色森林土(16%)、褐色低地土(13%)、赤色土・黄色土(8%)となっている。対して水田は、灰色低地土(37%)が最も多く、次いでグライ土(31%)となる。

(2) 畑土壌は、水田土壌に比べて肥料への依存度が高い
畑土壌は、表面が空気に触れており、微生物の硝酸化成作用(アンモニアが硝酸になる)が活発であること(硝酸は水に溶けて流出しやすい)、灌漑水(人工的な給排水)による養分補給がないこと、などが理由としてあげられる。

対して水田は、湛水によってリン酸が吸収されやすくなること、灌漑水からの補給があること、水中に生息するラン藻類によって窒素固定(空気中の窒素から窒素化合物をつくる)が活発になること、などが理由としてあげられる。

(3)× 水田土壌は、作土層のに「すき床」をつくる。
水田土壌は、作土層(耕耘される層)の下に、すき床(荷重に耐えるために圧密された層)をつくる。これにより、水漏れを少なくして長期間湛水する。

湛水(たんすい)→水をためること

(4)× 水田土壌は、畑土壌に比べて連作障害が起こりにくい
水田土壌は、夏季の湛水による還元状態と、冬季の落水による酸化状態が繰り返される。これにより微生物が入れ替わるため、病原菌の集積が少ない。また、有害な物質や過剰な養分も排水によって流されるので、連作障害が起こりにくいとされる。

参考
図解でよくわかる 土・肥料の基本
一般財団法人 日本土壌協会
誠文堂新光社/2021第7刷
ページ22.23

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 1回10番(土の友達)

ミミズについての記述である。
誤っているのはどれか。1つ選べ。
(1)英語でEarthworm(アースワーム)と呼ぶ。
(2)土の反転作用をもつ。
(3)糞土は、pH5以下である。
(4)体表面から出す粘液には、アンモニアが含まれる。

【3】

(1) 英語でEarthworm(アースワーム)と呼ぶ。
地球の虫という名がつけられ、古くから働きが研究されてきた。

(2) 土の反転作用をもつ。
ミミズは地表の落ち葉片などを食べ、糞のかたまり(糞土)を地表面に出す習性がある(ミミズの出入り口には、糞の山・糞塚がある)。これにより、地表の有機物が土中に移動し、土中の無機物が地表に移動する。また、糞は有機質と無機質が混合した団粒物質となる。

(3)× 糞土は、pH6程度である。
ミミズの糞土は、腸管にある石灰腺の働きにより約pH6(弱酸性)となる。土壌の適度なpHは5.5〜6.5なので、好ましい状態となる。ちなみに、一般的にpH5以下になると、作物は養分を吸収しにくくなる。

(4)体表面から出す粘液には、アンモニアが含まれる。
ミミズは、体表面からアンモニアを含んだ尿を出しながら移動する。そのため土壌中の窒素が増える。

参考
図解でよくわかる 土・肥料の基本
一般財団法人 日本土壌協会
誠文堂新光社/2021第7刷
24ページ

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 1回11番(土の能力はどこからくるか)

地力についての記述である。
正しいのはどれか。1つ選べ。
(1)地力(土壌生産力)をもたらす要因は、5つに分類されている。
(2)排水性は、化学的要因に分類される。
(3)pHは、物理的要因に分類される。
(4)窒素固定力は、生物的要因に分類される。

【4】

(1)× 地力(土壌生産力)をもたらす要因は、3つに分類されている。
地力とは、「土壌の性質に由来する農地の生産力」(地力増進法によって定義)である。この能力には、通気性・排水性・保肥力・空気と水分のバランス・pH(酸性度)・有機物の量などが関わる。そしてこれらの要因は、物理的・化学的・生物的の3つに分けて考えられる。

(2)× 排水性は、物理的要因に分類される。
物理的要因には、作土層の厚さ・耕耘の難易・保水力・排水性・耐風食性・耐水食性などが含まれる。

(3)× pHは、化学的要因に分類される。
化学的要因には、養分供給力・pH(緩衝力)・酸化還元力・有害物質の有無などがある。

(4) 窒素固定力は、生物的要因に分類される。
生物的要因には、有機物分解力・窒素固定力・病害虫抑止力・微生物による有害化学物質分解力などがある。

参考
図解でよくわかる 土・肥料の基本
一般財団法人 日本土壌協会
誠文堂新光社/2021第7刷
26.27ページ

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 1回12番(土のカラダの一部ができるまで2)

単粒構造・団粒構造についての記述である。
正しいのはどれか。1つ選べ。
(1)保水性(水もち)と透水性(水はけ)は、両立できる性質である。
(2)単粒構造は、団粒構造に比べ土壌中の隙間が多い。
(3)一次団粒(ミクロ団粒)は、砂やシルトが結合している。
(4)透水性の悪い単粒構造の土壌には、粘土と有機物を加える。

【1】

(1) 保水性(水もち)と透水性(水はけ)は、両立できる性質である。
適度な団粒構造がある土壌では、保水性(水もち)と透水性(水はけ)が両立されている。団粒中の小さな隙間で水分が保持され、大きな隙間で空気の保持や、排水のための通り道ができている。

(2)× 単粒構造は、団粒構造に比べ土壌中の隙間が少ない
単粒構造は、粘土や砂などの粒子が均一に組成されている構造を指す。粘土が多い単粒構造では、水分が多いとベタベタの粘土状態、乾燥するとカチカチの塗り壁状態となる。また、砂が多い単粒構造では、透水性はよいが保水性がほとんどなく、土壌浸食(雨や風で流れ出る)を起こしやすい。団粒構造が作られると土壌中の隙間が増え、これらの状態が改善される。

(3)× 一次団粒(ミクロ団粒)は、粘土などが結合している。
土壌粒子(粘土)と腐植物質・微生物の出す粘物質(多糖類など)が結合したものを「有機・無機複合体」と呼ぶ。一次団粒(ミクロ団粒)は、この有機・無機複合体が結合してできる。

そして、一次団粒が集まり、土壌粒子(砂やシルト)・粗大有機物(堆肥など)・微生物(カビの菌糸など)と結合すると、二次団粒(マクロ団粒)が作られる。

※土壌の鉱物粒子は、小さい方から「粘土→シルト(微砂)→砂」だったので、一次団粒は「粘土」が結合している、二次団粒は「シルトと砂」が結合しているという理解。

(4)× 透水性の悪い単粒構造の土壌には、と有機物を加える。
単粒構造の土壌を団粒化させるためには、土壌の状態によって加えるものを変える。
・透水性の悪い重粘土壌(粘土が多い)には、粒子が大きい砂や有機物を加える。
・保水性の悪い砂質土壌(砂が多い)には、粒子が小さい粘土や有機物を加える。
※どちらも有機物が必要である。

参考
図解でよくわかる 土・肥料の基本
一般財団法人 日本土壌協会
誠文堂新光社/2021第7刷
28.29ページ

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 1回13番(土の胃の大きさ)

土の保肥料についての記述である。
正しいのはどれか。1つ選べ。
(1)土壌粒子(粘土鉱物や腐植)は、通常プラスの電気を帯びている。
(2)粘土や腐植が多い土壌では、CEC(陽イオン交換容量)は高くなる。
(3)日本の粘土鉱物の多くは、永久陰電荷である。
(4)適切なCECの目安は、15mEq/100g未満である。

【2】

(1)× 土壌粒子(粘土鉱物や腐植)は、通常マイナスの電気を帯びている。
そのため、陽イオン(プラスの電気)を引きつける力がある。土壌に必要な養分の中で、アンモニア(窒素)・カリウム・カルシウム・マグネシウムは陽イオンになるため、マイナスの電気を帯びた土に吸着される。

*アンモニア(NH₄⁺)、カリウム(K⁺)、カルシウム(Ca²⁺)、マグネシウム(Mg²⁺)

(2) 粘土や腐植が多い土壌では、CEC(陽イオン交換容量)は高くなる
土壌粒子が陽イオンを吸着できる最大量を、CEC(Cation Exchange Capacity/カチオン エクスチェンジ キャパシティ/陽イオン交換容量)と呼ぶ。土壌のCECは、含まれる粘土鉱物の種類と量、腐植の量によって決まる。そのため、粘土や腐植が多い土壌では、CECは高くなる。また、CECが高ければ、それだけたくさんの養分を保持できることを表す。

※Cation(カチオン)は、陽イオンの意味

(3)× 日本の粘土鉱物の多くは、pH依存性陰電荷である。
粘土鉱物の種類には、保肥力が変わらない「永久陰電荷」と、pHによって変化する「pH依存性陰電荷」がある。日本に多い土壌鉱物の多く(ハロイサイトやアロフェン)はpH依存性陰電荷であるため、pHが下がると保肥力が低下する。畑で酸性改良(pH調整)が必要なのはこのためである。

(4)× 適切なCECの目安は、15〜30mEq/100gである。
例えばCEC30mEq/100gの場合、1価の陽イオン(アンモニア・カリウム)であれば30コ保持できる、2価の陽イオン(カルシウム・マグネシウム)であれば15コ保持できるという意味になる。

※mEq(ミリ当量/ミリ イクイバレント/メック)
ここでの当量は、電解質(イオン)の量を表す単位。具体的な質量(グラム)ではなく、持っている電気の量に視点を合わせた単位というイメージ。

参考
図解でよくわかる 土・肥料の基本
一般財団法人 日本土壌協会
誠文堂新光社/2021第7刷
30.31ページ

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 1回14番(土の満腹度)

塩基飽和度についての記述である。
正しいのはどれか。1つ選べ。
(1)塩基飽和度を決める陽イオンに、水素イオン(H⁺)は含まれない。
(2)塩基飽和度は、50%前後が適切な状態である。
(3)交換性塩基の当量比は、カルシウム:マグネシウム:カリウム=1:1:1が適切である。
(4)pHが低いほど、塩基飽和度は高くなる。

【1】

(1) 塩基飽和度を決める陽イオンに、水素イオン(H⁺)は含まれない
塩基飽和度とは、CEC(陽イオン交換容量)に、どれくらい交換性塩基(陽イオン)が含まれているかの割合を示したものである。この交換性塩基(陽イオン)には、カルシウム・マグネシウム・カリウムが含まれ、水素イオンやナトリウムは含まれない。

例えば、CEC14、カルシウム4、マグネシウム4、カリウム2、水素イオン1(単位はmEq)の場合、(4+4+2)/14=71.4%となる。

(2)× 塩基飽和度は、60-80%前後が適切な状態である。
60%以下は不足気味である。また、100%を超えると土壌溶液の濃度が高くなり、根に濃度障害が起こる。

(3)× 交換性塩基の当量比は、カルシウム:マグネシウム:カリウム=5:2:1が適切である。
これら3つの陽イオンは、お互いに拮抗作用を持っており、どれかが過剰になると、他の2つの吸収が抑制される。

(4)× pHが低いほど、塩基飽和度は低くなる
塩基飽和度とpHには関連性があり、pHが低い(酸性)と塩基飽和度も低くなり、pHが高い(アルカリ性)と塩基飽和度も高くなる。

塩基飽和度80%(適切)の場合、土壌pHは約6.5(弱酸性)となる。

参考
図解でよくわかる 土・肥料の基本
一般財団法人 日本土壌協会
誠文堂新光社/2021第7刷
32.33ページ

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 1回15番(土の体温.平熱はどれくらいか)

pH(土壌の酸性度)についての記述である。
正しいのはどれか。1つ選べ。
(1)我が国での好適pHは、4.5〜5.5である。
(2)pHが5以下になると、鉄・マンガンの溶解性が低下する。
(3)pHが5以下になると、アルミニウムの溶解性が低下する。
(4)pHが5以下になると、細菌・放線菌の活動が低下する。

【4】

※pHは、溶液中の水素イオン(H⁺)の濃度を示す指標。値の範囲は0〜14。7が中性・それより低くなると酸性・高くなるとアルカリ性を示す。例えば、水素イオンが多くなれば値は低下し、酸性となる。

(1)× 我が国での好適pHは、5.5〜6.5である。
この範囲だと、養分(窒素・リン酸・カリウムなど)の溶解性が高く、作物が利用しやすい。また、日本は酸性寄りの土が多いため、酸性側に適する作物が選ばれてきたことも要因のひとつである。

※地力増進法では、普通畑の改良目標値は6.0〜6.5

(2)× pHが5以下になると、鉄・マンガンの溶解性が過剰に上昇する。
一般的な養分は、pHが過度に高くなったり・低くなったりすると、溶解性が低下する(作物が利用しにくくなる)。ただし鉄・マンガンは、pHが低く(酸性が強く)なると過剰に溶け出し、作物に悪影響を与える。

(3)× pHが5以下になると、アルミニウムの溶解性が上昇する。
アルミニウムは作物の養分ではないが、pHが低く(酸性が強く)なると溶解性が高くなり、根の生長を阻害する(酸性障害)。また、リン酸と結合し、リン酸の効きを悪くする。

(4) pHが5以下になると、細菌・放線菌の活動が低下する。
pHは、土壌微生物にも影響を与える。pHが酸性に傾き5.5以下になると、細菌や放線菌の活動が低下する。これにより、有機物の分解が遅延する。

参考
図解でよくわかる 土・肥料の基本
一般財団法人 日本土壌協会
誠文堂新光社/2021第7刷
38.39ページ

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 1回16番(土の体温と創作物の関係)

作物の好適pHについての記述である。
正しいのはどれか。1つ選べ。
(1)ほうれん草は、pH6.0〜6.5が適する。
(2)稲は、pH5.5〜6.5が適する。
(3)じゃがいもは、pH6.5〜7.0が適する。
(4)茶は、pH5.5〜6.5が適する。

【2】

我が国で育てられる作物の好適pHは、おおむね5.5〜6.5である。中でも、6.0〜6.5が多い。ただし、例外的により酸性を好むもの・中性寄りを好むものもある。

(1)× ほうれん草は、pH6.5〜7.0が適する。
ほうれん草、大麦、イチジクなどは高いpH(弱酸性〜中性)を好む。

(2) 稲は、pH5.5〜6.5が適する。
稲、いちご、かぶ、にんじん、玉ねぎ、ごぼう、梅、りんごなどは、標準的なpH範囲を好む。

(3)× じゃがいもは、pH5.0〜6.5が適する。
じゃがいもの好適pHは、酸性側(低い値)に広く、高いpHは好まない。

(4)× 茶は、pH4.5〜5.5が適する。
茶、ブルーベリー、くりなどは、例外的に低いpH(強い酸性)を好む。

※ここでのpHの高い低いは、4.5〜7.0という限られた範囲の中での比較。高いpHを好むと言っても、完全にアルカリ性(pH8や9)のものはない。

参考
図解でよくわかる 土・肥料の基本
一般財団法人 日本土壌協会
誠文堂新光社/2021第7刷
38.39ページ

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 1回17番(土の血圧)

EC(電気伝導度)についての記述である。
誤っているのはどれか。1つ選べ。
(1)土壌中の、硝酸態窒素が関わる。
(2)土壌の肥料養分が多いと、値は高くなる。
(3)適切なEC値は、土壌の種類に関わらず一定である。
(4)EC値は、基肥の施肥量補正の目安になる。

【3】

(1) 土壌中の、硝酸態窒素が関わる。
EC(Electrical Conductivity/電気伝導度)は、土壌中の電気の伝わりやすさであり、塩類濃度の指標である。これは土壌中の養分量、特に硝酸態窒素と関連する。よって、窒素肥料の残存率を知る目安となる。

※硝酸態窒素(硝酸性窒素)
硝酸イオン(NO₃⁻)の形で存在する窒素のこと。移動性が大きく、水によって溶脱されやすい。土壌中では、アンモニア性窒素(NH4⁺)(土壌粒子に固定されて移動しにくい)と比較される。

(2) 土壌の肥料養分が多いと、値は高くなる
肥料養分が多いと、土壌溶液は電気を通しやすくなる。そのためEC値(電気の伝導度)は高くなる。ただし、高すぎると根が濃度障害を受ける(土壌溶液の浸透圧が高まり、根の水分吸収・養分吸収が阻害される)。

単位は、mS/cm(ミリジーメンス パー センチメートル)

(3)× 適切なEC値は、土壌の種類によって異なる
適切なECはおおむね0.1〜0.8mS/cmである。ただし上限値は、粗粒質土(砂質)0.4、中粒質土0.7、細粒質土(粘質)0.8と、土壌の種類によって異なる。

(4) EC値は、基肥の施肥量補正の目安になる。
EC値は土壌中の養分と関連するため、値によって基肥の施肥量補正(加える窒素・カリウム量をどう調節するか)の目安になる。例えば、EC「0.3以下では基準の施肥量」・「0.8では1/2量」・「1.6以上では無施用」などとなる。

EC 1.0mS/cm= 硝酸態窒素 20mg/100g程度である。

参考
図解でよくわかる 土・肥料の基本
一般財団法人 日本土壌協会
誠文堂新光社/2021第7刷
42.43ページ

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 1回18番(土が健康診断で引っかかるパターン)

不適切な土壌パターンについての記述である。
誤っているのはどれか。1つ選べ。
(1)高pH・高EC型は、肥料の施しすぎが原因となる。
(2)高pH・低EC型は、炭酸カルシウムの施しすぎが原因となる。
(3)低pH・低EC型は、積極的な施肥が必要である。
(4)低pH・高EC型は、窒素肥料が不足している。

【4】

(1) 高pH・高EC型は、肥料の施しすぎが原因となる。
肥料(基肥・追肥)の施しすぎは、EC(電気伝導度)上昇の原因となる。また、高pH(アルカリ性寄り)は、酸性改良剤(炭酸カルシウム)の施しすぎが原因となる。対策としては、水を溜めて排水し、過剰な養分や酸性改良剤を洗い流す、無肥料栽培を行うなどが考えられる。

(2) 高pH・低EC型は、炭酸カルシウムの施しすぎが原因となる。
この型は、酸性改良剤(炭酸カルシウム)を施しすぎているが、肥料が不足している状態である。対策としては、硫酸系肥料(土壌の酸性化を促す)を使うことが考えられる。

(3) 低pH・低EC型は、積極的な施肥が必要である。
この型は、肥料、酸性改良剤ともに不足している状態である。対策として、積極的に肥料・有機物、酸性改良剤を与えることが考えられる。

(4)× 低pH・高EC型は、窒素肥料が過剰である。
この型の低pHは、交換性塩基の不足(塩基飽和度の低下)ではなく、窒素養分(硝酸態窒素)の過剰が原因である場合が多い。(特に、EC0.5以上、塩基飽和度70%以上の場合)(硝酸態窒素は酸性の性質をもつため)

よってこの場合は、炭酸カルシウムなどでpHを上昇させてはいけない。水を溜めて排水し、過剰な養分を洗い流すなどの対策が必要となる。

参考
図解でよくわかる 土・肥料の基本
一般財団法人 日本土壌協会
誠文堂新光社/2021第7刷
36.37.40ページ

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ブロック2[栄養素]

 1回19番(植物の必須栄養素1)

植物の多量必須元素についての記述である。
正しいのはどれか。1つ選べ。
(1)窒素(N)・リン(P)・カリウム(K)の3種類である。
(2)窒素は、作物の生育と収量に大きな影響を与える。
(3)リンは、光合成や細胞内浸透圧の調整に関わる。
(4)カリウムは、エネルギー伝達や化学反応の構成成分として関わる。

【2】

(1)× 炭素(C)・水素(H)・酸素(O)・窒素(N)・リン(P)・カリウム(K)・カルシウム(Ca)・マグネシウム(Mg)・イオウ(S)の9種類である。

植物の生育に必要な元素のうち、比較的多量に必要とするものを多量必要元素と呼ぶ。9種類のうち、炭素(C)・水素(H)・酸素(O)は、大気中の酸素(O2)・二酸化炭素(CO2)、土壌中の水(H2O)から供給される。そのため、一般的に肥料養分としては考えない。また、残り6種類のうち、窒素(N)・リン(P)・カリウム(K)は、肥料の3要素と呼ばれ、重要視される。

(2) 窒素は、作物の生育と収量に大きな影響を与える。
窒素(N)は、たんぱく質・アミノ酸、葉緑素、酵素の構成成分である。光合成や、作物の生育、収量、品質に大きく関わる。また、茎葉を伸ばして葉色を濃くするので、「葉肥(はごえ)」と呼ばれる。

(3)× リンは、エネルギー伝達や化学反応の構成成分として関わる。
リン(P)は、核酸(DNA・RNA)やリン脂質の構成成分である。ATP(アデノシン三リン酸)として、体内のエネルギー伝達にも関わる。また、開花や結実にも関わるので、「花肥」「実肥」と呼ばれる。

(4)× カリウムは、光合成や細胞内浸透圧の調整に関わる。
カリウム(K)は、重要な化合物の構成成分としての働きは少ないが、細胞内浸透圧やpHの調節、酵素の活性化に関わる。また、根の発育を促進させるため、「根肥」と呼ばれる。

参考
図解でよくわかる 土・肥料の基本
一般財団法人 日本土壌協会
誠文堂新光社/2021第7刷
30.61
農学基礎シリーズ 新版 土壌学の基礎 生成・機能・肥沃度・環境
松中照夫/農文協/2018
132ページ

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 1回20番(植物の必須栄養素2)

植物の多量必須元素についての記述である。
誤っているのはどれか。1つ選べ。
(1)カルシウム(Ca)は、細胞膜の維持や細胞内の情報伝達に関わる。
(2)マグネシウム(Mg)は、葉緑素の構成成分である。
(3)イオウ(S)は、たんぱく質・アミノ酸・ビタミンの構成成分である。
(4)鉄(Fe)は、葉緑素合成に関与する。

【4】

(1) カルシウム(Ca)は、細胞膜の維持や細胞内の情報伝達に関わる。
また、細胞分裂にも関わり、根の正常な発育に欠かせない成分である。一般的には「石灰」とも呼ばれる。

(2) マグネシウム(Mg)は、葉緑素の構成成分である。
また、代謝に関わる酵素の活性化にも関与する。一般的には「苦土」とも呼ばれる。

(3)イオウ(S)は、たんぱく質・アミノ酸・ビタミンの構成成分である。
イオウを含むアミノ酸にはメチオニン、システイン、シスチンなどがある。日本の土壌には、比較的天然のイオウが多いとされる。

(4)× 鉄(Fe)は、葉緑素合成に関与するが、多量必須元素ではない
鉄は、植物にとっての微量必須元素(必要量は少ないが必要な元素)に分類される。役割としては葉緑素の合成に関与し、光合成に関わる酵素の構成成分でもある。土壌のアルカリ化によって、不可給態になる。

参考
図解でよくわかる 土・肥料の基本
一般財団法人 日本土壌協会
誠文堂新光社/2021第7刷
60.61.62ページ
農学基礎シリーズ 新版 土壌学の基礎 生成・機能・肥沃度・環境
松中照夫/農文協/2018
132ページ

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 1回21番(植物の必須栄養素3)

微量必須元素についての記述である。
正しいのはどれか。1つ選べ。
(1)鉄(Fe)・マンガン(Mn)・亜鉛(Zn)・銅(Cu)・塩素(Cl)の5種類である。
(2)鉄は、尿素分解酵素(ウレアーゼ)の構成成分である。
(3)必須元素として判断するための唯一の条件が、「必要性」である。
(4)ケイ素(Si)は有用元素に分類され、微量必須元素ではない。

【4】

(1)× 鉄(Fe)・マンガン(Mn)・亜鉛(Zn)・銅(Cu)・塩素(Cl)・モリブデン(Mo)・ニッケル(Ni)・ホウ素(B)8種類である。
微量必須元素とは、植物の生命活動に必要な要素のうち、必要量の少ないものを指す。(多量必須元素9種類と対になる。)

(2)× ニッケルは、尿素分解酵素(ウレアーゼ)の構成成分である。
微量必須元素の役割は、大きく3つに分類される。
1.葉緑素の生成と働き(光合成)に必要なもの(鉄・マンガン・亜鉛・銅・塩素)
2.生体内酵素の構成成分として必要なもの(モリブデン・ニッケル)
3.細胞組織の形成と維持に必要なもの(ホウ素)

ニッケルは酵素の構成成分の中でも、特に尿素分解酵素(ウレアーゼ)に関わる。ウレアーゼは、たんぱく質の合成(植物の生長)に関与している。

(3)× 必須元素として判断するための3つの条件は、「必要性」「非代替性」「直接性」である。
1.「必要性」その要素が欠乏すると生育に支障をきたす
2.「非代替性」その要素を補給すると特有の欠乏症が回復する
3.「直接性」その要素が植物の栄養状態に直接関係する

(4) ケイ素(Si)は有用元素に分類され、微量必須元素ではない。
微量必須元素ではないが、特定の作物にだけ必要とされるものを「有用元素」と呼ぶ。ケイ素(Si)・コバルト(Co)・ナトリウム(Na)・アルミニウム(Al)などがある。

例えば、ケイ素はイネ科の作物、コバルトはマメ科の作物にとって必要となる。

参考
図解でよくわかる 土・肥料の基本
一般財団法人 日本土壌協会
誠文堂新光社/2021第7刷
62.63ページ

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 1回22番(植物の栄養素の過不足)

作物の要素欠乏症と過剰症についての記述である。
誤っているのはどれか。1つ選べ。
(1)作物体内の要素濃度が上昇すれば、必ず生育や品質は向上する。
(2)要素の過不足によって起こる症状として、特定部位の壊死がある。
(3)ある要素の欠乏症状が見られた場合でも、他の要素の過剰が原因となることがある。
(4)きゅうりは、窒素欠乏が起こりやすい。

【1】

(1)× 作物体内の要素濃度が上昇し、生育や品質が低下することがある。これを過剰症と呼ぶ。
土壌中・作物中の要素濃度と、生育・品質の関係には、4つの段階がある。

1.作物体内の要素濃度が上昇せず、生育・品質も上がらない、欠乏状態。
2.土壌中の要素濃度が高く、作物中は適度に保たれ、生育・品質が上がる、正常な状態。
3.作物体内の要素濃度が上昇するが、生育・品質には変化がない、ぜいたく吸収状態。
4.作物体内の要素濃度が上昇し、生育・品質が低下する、過剰状態。

(2) 要素の過不足によって起こる症状として、特定部位の壊死がある。
要素の欠乏・過剰によって起こる症状には、生育の低下(草丈・葉数・葉の大きさ)、分けつや新葉発生の異常、特定部位の壊死、形態異常、葉色の変化などがある。

(3) ある要素の欠乏症状が見られた場合でも、他の要素の過剰が原因となることがある。
例えば、土壌のカリウムが過剰になると、作物のカルシウム吸収が低下する(拮抗作用)。これによってカルシウム欠乏が生じた場合は、カルシウムの補給ではなく、カリウム濃度の適正化が必要である。

(4) きゅうりは、窒素欠乏が起こりやすい。
作物によって、起こりやすい欠乏症・過剰症がある。例えば、きゅうりは窒素欠乏、トマトはカルシウム・マグネシウム欠乏、ピーマンはカリウム欠乏が起こりやすい。

参考
図解でよくわかる 土・肥料の基本
一般財団法人 日本土壌協会
誠文堂新光社/2021第7刷
46.47ページ

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 1回23番(植物の欠乏症と過剰症1)

リン酸の欠乏と過剰についての記述である。
正しいのはどれか。1つ選べ。
(1)リン酸の欠乏は、生育後期に起こりやすい。
(2)リン酸欠乏では、葉が赤紫色になることがある。
(3)リン酸の過剰症は、起こらない。
(4)土壌中のリン酸が過剰になると、亜鉛・鉄の吸収が過剰になる。

【2】

(1)×リン酸の欠乏は、生育初期に起こりやすい。
発育初期は、リン酸の要求量が多い。そのため、不足すると草丈・分けつ・葉数・葉面積が減少し、登熟が遅れる。(重症だと、発育が停止することもある。)

環境ストレス(低温・日照不足など)によっても、リン酸の吸収は阻害される。

(2) リン酸欠乏では、葉が赤紫色になることがある。
とうもろこしなどでは、アントシアニンが大量に生成され、葉全体が赤紫色になる。

また、リン酸欠乏によって葉の生長が妨げられている場合、葉色が暗緑色になることもある。(葉に対してクロロフィルが多くなるため。)

(3)× リン酸の過剰症は、比較的発生しにくい
外的症状が起こることも少ない。ただし、絶対起こらないという訳ではなく、きゅうりの葉の白斑症状、水稲育苗期の葉枯れなどが報告されている。

(4)× 土壌中のリン酸が過剰になると、亜鉛・鉄の吸収が抑制される。
リン酸には、亜鉛・鉄などに対する拮抗作用がある。例えば大豆では、リン酸過剰による亜鉛欠乏の誘発例がある。

参考
図解でよくわかる 土・肥料の基本
一般財団法人 日本土壌協会
誠文堂新光社/2021第7刷
52.53ページ
新版 土壌肥料用語事典 第2版
藤原俊六郎他/農文協/2010
118ページ

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 1回24番(植物の欠乏症と過剰症2)

カリウムの欠乏と過剰についての記述である。
正しいのはどれか。1つ選べ。
(1)多くの作物は、必要要素の中でカリウムを最も多く吸収する。
(2)土壌100gに対し、200〜400mgが適切な濃度である。
(3)欠乏の症状は、古い葉よりも新しい葉から現れる。
(4)土壌中のカリウムが過剰になると、マグネシウム・カルシウムの吸収が過剰になる。

【1】

(1) 多くの作物は、必要要素の中でカリウムを最も多く吸収する。
マメ科以外の作物は、カリウムを最も多く吸収するという特徴がある。

(2)× 土壌100gに対し、20〜40mgが適切な濃度である。
欠乏は、地力の乏しい農地や、耕作放棄地から復旧した直後の圃場で問題となる。また過剰は、有機肥料を多く使用する圃場で問題となることがある。

(3)× 欠乏の症状は、新しい葉よりも古い葉から現れる
カリウムは植物体内を移動する。欠乏したときは新しい葉を優先して移動するので、症状は古い葉から現れる。

具体的には、葉脈間が黒くなる・赤褐色の斑点ができる(イチゴ)、葉の縁かま黄褐変して枯れる(メロン)、葉脈間に白斑がでる(キャベツ)、葉脈間が黄化する(トマト)などである。

(4)× 土壌中のカリウムが過剰になると、マグネシウム・カルシウムの吸収が阻害される。
カリウムには、マグネシウム・カルシウムに対して拮抗作用がある。

土壌中のカリウム濃度を下げる方法として、カリウム吸収力の高いイネ科牧草の導入がある。

参考
図解でよくわかる 土・肥料の基本
一般財団法人 日本土壌協会
誠文堂新光社/2021第7刷
50.51ページ

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 1回25番(植物の欠乏症と過剰症3)

カルシウムの欠乏と過剰についての記述である。
正しいのはどれか。1つ選べ。
(1)カルシウムは、他の元素に比べて植物に吸収されやすい。
(2)土壌中の濃度が高くなるにつれ、マグネシウムの吸収も促進される。
(3)欠乏症は、根の分裂組織に現れやすい。
(4)欠乏を防ぐために、土壌を乾燥させる。

【3】

(1)× カルシウム他の元素に比べて、植物に吸収されにくい
カルシウムは、必要な吸収量は多いが、吸収されにくいという特徴をもつ。また、植物体内を移動しにくいので、土壌中にカルシウムがあったとしても、欠乏症が起こることがある。

(2)× 土壌中の濃度が過剰になると、マグネシウムの吸収が阻害される。
カルシウムの過剰は、マグネシウム・カリウム・リン酸などの吸収を阻害する。

(3) 欠乏症は、根の分裂組織に現れやすい。
欠乏症状は、新葉・葉先・根に現れやすい。

具体例としては、タマネギ、キャベツ、ハクサイの芯腐れ・トマトの尻腐れなどがある。

(4)× 欠乏を防ぐために、土壌の乾燥を防ぐ
カルシウムは水とともに移動する。そのため、乾燥を防止することが、欠乏を防止することにつながる。

参考
図解でよくわかる 土・肥料の基本
一般財団法人 日本土壌協会
誠文堂新光社/2021第7刷
52.53ページ

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 1回26番(植物の欠乏症と過剰症4)

マグネシウムの欠乏と過剰についての記述である。
正しいのはどれか。1つ選べ。
(1)欠乏症は、土壌100gに対して100mg以下になると発生しやすい。
(2)欠乏すると、新しい葉から症状がでる。
(3)マグネシウムとカリウムの割合は、おおよそ2:1が適切である。
(4)マグネシウムの過剰が原因で、カリウムの過剰症が起こる。

【3】

(1)× 欠乏症は、土壌100gに対して10mg以下になると発生しやすい。
マグネシウムの適正量は、土壌100gに対し、30〜60mg程度である。

(2)× 欠乏すると、古い葉から症状がでる。
マグネシウムは植物体内を移動しやすい。欠乏すると、古い葉から生長の盛んな新しい葉に移動する。そのため、欠乏症状は古い葉からでる。

具体的には、葉緑素の生成が抑制されることで、葉の葉脈間に黄化(クロロシス)や、壊死班(ネクロシス)が起こる。

(3) マグネシウムとカリウムの割合は、おおよそ2:1が適切である。
マグネシウム・カリウム・カルシウムにはお互いに拮抗作用があるため、適切なバランスが必要である。

(4)× マグネシウムの過剰が原因で、カリウムの欠乏症が起こる。
マグネシウム・カリウム間の拮抗作用により、マグネシウムが過剰になると、カリウムの吸収が阻害される。

参考
図解でよくわかる 土・肥料の基本
一般財団法人 日本土壌協会
誠文堂新光社/2021第7刷
48.49ページ

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 1回27番(植物の欠乏症と過剰症5)

微量必須元素の欠乏と過剰についての記述である。
正しいのはどれか。1つ選べ。
(1)わが国では、ホウ素とマンガンの欠乏が起こりやすい。
(2)アブラナ科野菜を連作すると、マンガン欠乏が生じやすい。
(3)マンガンは植物体内を移動しやすいため、古い葉から症状がでる。
(4)ホウ素の過剰では、果実のコルク化がみられる。

【1】

(1) わが国では、ホウ素とマンガンの欠乏が起こりやすい。
微量必須元素(鉄・マンガン・亜鉛・銅・塩素・モリブデン・ニッケル・ホウ素)でも、欠乏症や過剰症が見られる。とくにわが国では、ホウ素とマンガンの欠乏が起こりやすい。(微量必要元素の中で、この2つだけ肥料取締法の肥料成分に指定されている。)

この理由としては、石灰の過剰施肥によって土壌のアルカリ化(pH7.0以上)が進み、ホウ素・マンガンの吸収が阻害されていることが挙げられる。

(2)× アブラナ科野菜を連作すると、ホウ素欠乏が生じやすい。
アブラナ科野菜(ダイコンやコマツナ等)は、ホウ素の要求量が多い。そのため、連作する圃場ではホウ素欠乏症がよくみられる。

(3)× マンガンは植物体内を移動しにくいため、新しい葉から症状がでる。
マンガンの欠乏症としては、新葉の黄化・白化がみられる。

また、過剰の場合は、下の葉から褐変斑点がみられる。(いずれも、植物体内を移動しにくい、という特徴のため)

(4)× ホウ素の欠乏では、果実のコルク化がみられる。
ホウ素の欠乏では、生育の抑制や、果実や茎の亀裂・コルク化がみられる。例えばトマトの場合、果実表面に、かさぶたのような傷が現れる。

また、過剰の場合は、葉の黄化や褐変がみられる。

参考
図解でよくわかる 土・肥料の基本
一般財団法人 日本土壌協会
誠文堂新光社/2021第7刷
54.55ページ

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ブロック3[肥料]

 1回28番(サプリメントのルール1)

肥料取締法における「肥料」についての記述である。
誤っているのはどれか。1つ選べ。
(1)植物の栄養に供することを目的とする。
(2)土壌に化学的変化をもたらすものである。
(3)土壌に施される物である。
(4)植物に施される物は含まれない。

【4】

(1) 植物の栄養に供することを目的とする。
(2) 土壌に化学的変化をもたらすものである。
(3) 土壌に施される物である。
(4)× 植物に施される物も含まれる

肥料取締法(肥料の品質の確保等に関する法律)
第2条(定義)
「この法律において「肥料」とは、植物の栄養に供すること又は植物の栽培に資するため土壌に化学的変化をもたらすことを目的として土地に施される物及び植物の栄養に供することを目的として植物に施される物をいう。」

つまり肥料には、土壌に施される物に加えて、直接植物に施される物(葉面散布剤や養液栽培で利用されるもの)も含まれる。

また、ヒトが施したものではなく、もともと土壌に含まれている養分は、一般的に「天然供給養分」と呼ばれる。

参考
図解でよくわかる 土・肥料の基本
一般財団法人 日本土壌協会
誠文堂新光社/2021第7刷
58ページ

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 1回29番(サプリメントのコツ)

肥料についての記述である。
誤っているのはどれか。1つ選べ。
(1)適切な施肥には、時期や位置が関係する。
(2)収量に直接影響を与えるのは、養分の中で最も多いものである。
(3)肥料を増やしても、収量には上限がある。
(4)肥料の過剰により、収量が低下することがある。

【2】

(1) 適切な施肥には、時期や位置が関係する。
肥料を与えるときに大切なのは、「作物が必要とする養分(必要養分)を、必要なタイミング(施肥時期)に、必要な場所(施肥位置)へ、必要な量(施肥量)だけ、望ましい形(施肥形態)で与えること」である。

(2)× 収量に直接影響を与えるのは、養分の中で最も少ないものである。
収量は、最も不足している養分に影響を受ける。これを最小養分律という。

例えば、ほとんどの養分が充分あるのに、カリウムだけ不足しているという状況では、収量はカリウムの量で制限される。

(3) 肥料を増やしても、収量には上限がある。
肥料を与えることによって、ある程度まで収量は増加する。ただし、次第に増加量は減り、やがて上限がくる。これを、収量漸減(ぜんげん)の法則という。

(4) 肥料の過剰により、収量が低下することがある。
不足による影響だけではなく、養分の過剰によって品質や収量が低下することもある。最近の土壌は、過剰による問題が起こっている。

参考
図解でよくわかる 土・肥料の基本
一般財団法人 日本土壌協会
誠文堂新光社/2021第7刷
58.59ページ

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 1回30番(サプリメントの区分1)

肥料の区分についての記述である。
正しいのはどれか。1つ選べ。
(1)肥料取締法により、普通肥料・特殊肥料・土壌改良資材の3つに分類される。
(2)普通肥料には、成分規格がある。
(3)特殊肥料には、「生産業者保証票」が必要である。
(4)特殊肥料は、品質表示が免除されている。

【2】

(1)× 肥料取締法により、普通肥料・特殊肥料の2つに分類される。
土壌改良資材の一部は、地力増進法によって、成分基準や用途・効果の表示が定められている。

(2) 普通肥料には、成分規格がある。
普通肥料は、農林水産大臣または都道府県知事の登録を受けた者が生産することができる。肥料の成分には規格があり、有効成分が保証されている。

例えば、無機窒素質肥料・無機リン酸質肥料・無機カリウム質肥料などがある。他にも、有機質肥料(なたねかす・魚粉など)も含まれる。

(3)× 普通肥料には、「生産業者保証票」が必要である。
普通肥料の生産には登録が必要であり、許可を受けた生産業者・輸入業者・販売業者いずれかの「生産業者保証票」が付けられている。

これがあれば普通肥料、なければ特殊肥料とわかる。

(4)× 特殊肥料の一部には、品質表示が必要である。
特殊肥料は、農林水産大臣によって種類が指定されている。(生産業者保証票は必要ない。都道府県に届出すれば生産可能。)
この中で、堆肥や家畜糞には、品質表示が義務づけられている。(窒素・リン酸・カリウムの成分量などの表示。商品によって品質のバラツキが大きいため。)

特殊肥料には、堆肥・米ぬか・草木灰・家畜糞・(粉末にしていない)魚かす・肉かす・蒸製骨などがある。

参考
図解でよくわかる 土・肥料の基本
一般財団法人 日本土壌協会
誠文堂新光社/2021第7刷
64.65ページ

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 1回31番(サプリメントの区分2)

肥料の区分についての記述である。
正しいのはどれか。1つ選べ。
(1)化学肥料とは、化学的に合成された無機質肥料のことである。
(2)単肥とは、窒素・リン酸・カリウムの3つのみを含む肥料である。
(3)化成肥料は、有機質肥料に含まれる。
(4)堆肥は、化学肥料に含まれる。

【1】

(1) 化学肥料とは、化学的に合成された無機質肥料のことである。
化学的に処理・合成された無機質肥料を、化学肥料と呼ぶ。対して、生物由来の有機物から作られる肥料を、有機質肥料と呼ぶ。

【肥料】
・無機質肥料(化学肥料)
・有機質肥料

(2)× 単肥とは、窒素・リン酸・カリウムのうち、1種類のみを含む肥料である。
化学肥料のうち、三要素(窒素・リン酸・カリウム)の1つだけを含むものを「単肥」と呼ぶ。対して、単肥を混合して2種類以上含むものを「複合肥料」と呼ぶ。

【肥料】
・無機質肥料(化学肥料)
  単肥
  複合肥料
・有機質肥料

(3)× 化成肥料は、無機質肥料(化学肥料)に含まれる。
複合肥料のうち、1粒1粒に2種類以上の要素(窒素・リン酸・カリウムのいずれか)を含むよう加工したものを、化成肥料と呼ぶ。(単なる単肥の混合ではなく、1粒内に2種類以上の要素が含まれるように加工したもの。)

また、化成肥料の中で、三要素の割合が30%未満のものを「普通化成」、30%以上のものを「高度化成」と呼ぶ。

ちなみに、複合肥料は他に、「配合肥料」「ペースト肥料」「液体肥料」などがある。

【肥料】
・無機質肥料(化学肥料)
  単肥
  複合肥料
   化成肥料(普通化成・高度化成)
   配合肥料
   ペースト肥料
   液体肥料
・有機質肥料

(4)× 堆肥は、有機質肥料に含まれる。
堆肥とは、有機資材を堆積し、腐熟させたものである。材料は、牛糞・豚糞・鶏糞・樹皮など。これらは有機質肥料に分類される。同時に、土壌改良資材としての機能もある。

ちなみに、有機質肥料は他に、なたね油かす、だいず油かす、魚かす、肉かす、骨粉などがある。

参考
図解でよくわかる 土・肥料の基本
一般財団法人 日本土壌協会
誠文堂新光社/2021第7刷
66.67ページ

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 1回32番(サプリメントの特徴)

肥料の特徴についての記述である。
正しいのはどれか。1つ選べ。
(1)無機質肥料(化学肥料)は、有機質肥料に比べて肥効が穏やかである。
(2)化学肥料は、有機質肥料に比べて施肥量の調節がしやすい。
(3)成分量あたりの価格は、一般的に有機質肥料より化学肥料の方が高い。
(4)化学肥料は、土壌の物理性や生物性改善効果が期待できる。

【2】

(1)× 無機質肥料(化学肥料)は、有機質肥料に比べて肥効が早い
肥効(肥料の効果)は、化学肥料が早く、有機質肥料はゆっくり(穏やか)である。有機質肥料の方がゆっくり効き、根にもやさしいとされる。

(2) 化学肥料は、有機質肥料に比べて施肥量の調節がしやすい
化学肥料は無機質資材から化学合成されたものであり、品質が安定している。足りない養分を確実に補うことができ、施肥量の調節がしやすい。

(3)× 成分量あたりの価格は、一般的に有機質肥料より化学肥料の方が安い
化学肥料は、安くて品質が安定している。有機質肥料は、高いが肥効が穏やかで、高品質の栽培が期待できる。

(4)× 有機質肥料は、土壌の物理性や生物性改善効果が期待できる。
有機質肥料は、有機質資材を発酵・腐熟化したものであり、土壌改良資材としての性質もある。

参考
図解でよくわかる 土・肥料の基本
一般財団法人 日本土壌協会
誠文堂新光社/2021第7刷
66.67ページ

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 1回33番(サプリメントのルール2)

有機農業と肥料についての記述である。
誤っているのはどれか。1つ選べ。
(1)化学的に合成された肥料は、使えない。
(2)無機質の肥料は、使えない。
(3)天然鉱石を粉砕したものは、使える。
(4)燃焼・焼成して製造したものは、使える。

【2】

(1) 化学的に合成された肥料は、使えない

(2)× 無機質の肥料は、使える
無機質の肥料であっても、化学的に合成・処理されたものでなければ、使うことができる。(有機JAS規格)

(3) 天然鉱石を粉砕したものは、使える

(4) 燃焼・焼成して製造したものは、使える

有機農業推進法において「有機農業」とは、
「化学的に合成された肥料及び農薬を使用しないこと並びに遺伝子組換え技術を利用しないことを基本として、農業生産に由来する環境への負荷をできる限り低減した農業生産の方法を用いて行われる農業をいう。」(第二条)
とされている。

また、「有機農産物のJAS別表等資材の適合性判断基準及び手順書」において、「天然鉱石を粉砕または水洗処理したもの」「燃焼・焼成・溶融・乾留することにより製造されたもの」は、化学的処理に該当しないので使用できるとされている。

つまり、有機農業において、化学的に合成された無機質肥料(化学肥料)は使えないが、有機質肥料や、化学的処理に当たらない方法で製造された無機質肥料は使用することができる。

参考
図解でよくわかる 土・肥料の基本
一般財団法人 日本土壌協会
誠文堂新光社/2021第7刷
68ページ

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 1回34番(窒素のサプリ)

窒素肥料(単肥)についての記述である。
正しいのはどれか。1つ選べ。
(1)硫安(硫酸アンモニウム)は、土壌をアルカリ化させる。
(2)尿素は、緩効性の肥料である。
(3)石灰窒素(カルシウムシアナミド)には、農薬効果がある。
(4)硝安(硝酸アンモニウム)は、窒素肥料の中で最も窒素含量が多い。

【3】

(1)× 硫安(硫酸アンモニウム)は、土壌を酸性化させる。
硫安(りゅうあん)は、化成肥料の窒素原料として、最も長く使われている肥料である。水によく溶け、土壌溶液の中で硫酸とアンモニアに分かれる。

アンモニアは、硝酸態に変わって作物に吸収される。硫酸は、土壌中のカルシウムと結合して硫酸カルシウムとなり、沈殿する。硫酸(酸性物質)が残るので、土壌を酸性化させる。

【硫安】(硫酸アンモニウム)
(NH₄)₂SO₄
 窒素21%・イオウ24%
 酸性
 速効性(基肥・追肥)

(2)× 尿素は、速攻性の肥料である。
尿素は、最も多く使われている化成肥料である。窒素量が多く、また中性肥料なので、土壌を酸性化することがない。

水によく溶け、速効性がある。基肥の他、追肥や液肥にも適している。また、尿素は葉からも吸収されるため、葉面散布にも利用される。

*基肥(きひ/もとごえ)
種をまいたり植えつけをしたりする前に耕地に施す肥料。原肥。(精選版 日本国語大辞典)

【尿素】
 CO(NH₂)₂
 窒素46%
 中性
 速効性(基肥・追肥)

(3) 石灰窒素(カルシウムシアナミド)には、農薬効果がある。
石灰窒素を施肥すると、水に反応してシアナミド(毒性)を生じる。この毒性よって、センチュウ類や雑草に対する防除効果が得られる。シアナミドは、7-10日で分解されて無毒なアンモニアとなるため、播種や植え付けはその後に行う。

【石灰窒素】(カルシウムシアナミド)
 CaCN₂
 窒素21%・カルシウム60%
 アルカリ性
 緩効性(基肥)

(4)× 尿素は、窒素肥料の中で最も窒素含量が多い。(46%)
硝安(しょうあん/硝酸アンモニウム)は、その次に多く含まれる。(34%)

【硝安】(硝酸アンモニウム)
 NH₄NO₃
 窒素34%
 中性
 速効性(基肥・追肥)

また、この他の窒素肥料(単肥)として、塩安(えんあん)もある。

【塩安】(塩化アンモニウム)
 NH₄Cl
 窒素25%
 酸性
 速効性(基肥・追肥)

参考
図解でよくわかる 土・肥料の基本
一般財団法人 日本土壌協会
誠文堂新光社/2021第7刷
70.71ページ

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 1回35番(リンのサプリ)

リン酸肥料(単肥)についての記述である。
正しいのはどれか。1つ選べ。
(1)リン酸肥料は、全量を基肥として施すことが基本である。
(2)過石(過リン酸石灰)は、土壌のpHを上げやすい。
(3)熔リン(熔成リン肥)は、水に溶けやすく速効性がある。
(4)亜リン酸肥料は、水に溶けにくく、生体内移行性が低い。

【1】

(1) リン酸肥料は、全量を基肥として施すことが基本である。
作物は、リン酸を生育初期に必要とする。(根が伸びる前に体内に蓄積できると、その後の生育がよくなる。)そのため、全量を基肥とするのが基本である。

(2)× 過石(過リン酸石灰)は、土壌のpHを上げにくい
過石(過リン酸石灰)は、中性の肥料である。副成分として石膏(硫酸カルシウム)を含み、pHを上げずにカルシウムとイオウを供給できるという特徴がある。

【過石】(過リン酸石灰)
リン酸二水素カルシウム+硫酸カルシウム(石膏)
Ca(H₂PO₄)₂ + CaSO₄
リン17%
水溶性・中性
速効性(基肥)

(3)× 熔リン(熔成リン肥)は、水に溶けにくく緩効性である。
「溶成」とも書く。カルシウムやマグネシウム、ケイ素などを含む、アルカリ性の肥料である。火山灰土壌などの酸性土、やせた畑の土壌改良剤として使われる。

【熔リン】(熔成リン肥)
リン酸三カルシウムなどが多い
Ca₃(PO₄)₂
リン20%
く溶性・アルカリ性
緩効性(土壌改良剤)

*【く溶性】
2%のクエン酸溶液に可溶のリン酸成分はク溶性リン酸という。(小学館 日本大百科全書(ニッポニカ))

(4)× 亜リン酸肥料は、水に溶けやすく生体内移行性が高い
亜リン酸の特徴には、溶解性が高い・分子量が小さく植物の体内移行性が高い・土壌に吸着されにくいなどがある。価格は高いが効果も高い、とされる。

【亜リン酸肥料】
H₃PO₄
リン約10%
酸性
速効性(基肥)

参考
図解でよくわかる 土・肥料の基本
一般財団法人 日本土壌協会
誠文堂新光社/2021第7刷
72.73ページ

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 1回36番(カリウムのサプリ)

カリウム肥料(単肥)についての記述である。
正しいのはどれか。1つ選べ。
(1)硫加(硫酸カリウム)は、イオウ(S)を含む。
(2)硫加は、繊維質を発達させる。
(3)塩加(塩化カリウム)は、濃度障害を起こしにくい。
(4)塩加は、でんぷん合成を促進させる。

【1】

(1) 硫加(硫酸カリウム)は、イオウ(S)を含む
硫酸カリウム=K₂SO₄は、イオウ(S)を含む。硫酸カリウム自体は中性であるが、副成分に硫酸が含まれるので、生理的酸性肥料と呼ばれる。

【硫加】(硫酸カリウム)
K₂SO₄
カリウム50%
水溶性・酸性
速効性(基肥・追肥)

(2)× 硫加は、でんぷん合成を促進させる。
硫加(硫酸カリウム)は、さつまいも・じゃがいもなどのでんぷん合成を促進させる働きがある。対して塩加(塩化カリウム)は、繊維質を発達させるので、イモには不向きである。そのため畑作農家では、硫加を使うことが多い。

(3)× 塩加(塩化カリウム)は、濃度障害を起こしやすい
副成分として含まれる塩素イオンは、土壌中のカルシウムと反応して塩化カルシウムを作る。これは水によく溶けるため、土壌濃度を高めやすく、作物の濃度障害を起こしやすい。

【塩加】(塩化カリウム)
KCl
カリウム60%
水溶性・酸性
速効性(基肥・追肥)

(4)× 塩加は、繊維質を発達させる
そのためイモには不向きだが、ワタ・イグサ・アサなど繊維作物には適する。

参考
図解でよくわかる 土・肥料の基本
一般財団法人 日本土壌協会
誠文堂新光社/2021第7刷
74.75ページ

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 1回37番(カルシウムのサプリ)

カルシウム肥料(単肥)についての記述である。
正しいのはどれか。1つ選べ。
(1)石灰岩(原料)を粉砕したものが、「生石灰」である。
(2)「苦土石灰」は、種子障害を起こしやすい。
(3)石膏(硫酸石灰)は、水に溶けにくい。
(4)硝酸石灰は、水に溶けやすい。

【4】

(1)× 石灰岩(原料)を粉砕したものが、「炭カル」である。
原料となる石灰岩(主成分/炭酸カルシウム)を粉砕したものは「炭カル」と呼ばれる。そして、炭カルを焼成したものを「生石灰」、生石灰を水和したものを「消石灰」と呼ぶ。

【炭カル】(炭酸カルシウム)
CaCO₃

 ↓ 焼成

【生石灰】(酸化カルシウム)
CaO

 ↓ 水和

【消石灰】(水酸化カルシウム)
Ca(OH)₂

(2)× 「苦土石灰」は、種子障害を起こしにくい
マグネシウムを含む石灰岩を、ドロマイト系石灰岩と呼ぶ。これを粉砕したものが「苦土石灰」である。「炭カル」や「苦土石灰」は管理が楽であるが、「生石灰」や「消石灰」は発熱や種子・苗に対して障害を起こすので、取り扱いが難しいとされる。

【苦土石灰】
(炭酸カルシウム+炭酸マグネシウム)
CaCO₃+MgCO₃

(3)× 石膏(硫酸石灰)は、水に溶けやすい
「炭カル」や「苦土石灰」は、酸性改良剤(土をアルカリ性にする)としての機能があるが、水に溶けにくいため作物に吸収されにくい。対して「石膏(硫酸石灰)」や「硝酸石灰」は、水に溶けやすく、吸収されやすいカルシウムである。

【石膏】(硫酸石灰)
CaSO₄
イオウを含む

(4) 硝酸石灰は、水に溶けやすい

【硝酸石灰】
Ca(NO₃)₂
窒素を含む

参考
図解でよくわかる 土・肥料の基本
一般財団法人 日本土壌協会
誠文堂新光社/2021第7刷
76.77ページ

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 1回38番(マグネシウムのサプリ)

マグネシウム肥料(単肥)についての記述である。
誤っているのはどれか。1つ選べ。
(1)水マグ(水酸化マグネシウム肥料)は、遅効性のアルカリ性肥料である。
(2)硫マグ(硫酸マグネシウム肥料)は、水溶性マグネシウムを含む。
(3)アルカリ化が進んだ畑では、単肥のマグネシウム肥料を使うことがある。
(4)リン酸の効きをよくするためには、マグネシウム肥料を控える。

【4】

(1) 水マグ(水酸化マグネシウム肥料)は、遅効性のアルカリ性肥料である。
水マグは、海水(にがり)から作られる。水には溶けず、薄い酸に溶ける「く溶性マグネシウム」を含む。アルカリ性であるため、pHが高い土壌には不向きである。

水マグ(水酸化マグネシウム)
Mg(OH)2
く溶性・アルカリ性
遅効性

(2) 硫マグ(硫酸マグネシウム肥料)は、水溶性マグネシウムを含む
硫マグは、蛇紋岩や水マグに硫酸を作用させて作られる。マグネシウム肥料の中で唯一の、水溶性速効性肥料である。酸性であるため、pHが高い土壌に向く。

硫マグ(硫酸マグネシウム)
MgSO4
水溶性・酸性
速効性

(3) アルカリ化が進んだ畑では、単肥のマグネシウム肥料を使うことがある。
マグネシウムは、酸性の畑で欠乏症が出やすい(土がアルカリの方が吸収されやすい)。ただし、アルカリ化が進んだ畑でも、カリウムやカルシウムとの拮抗作用によって欠乏症が出る場合がある。その場合、単肥のマグネシウム肥料が使われる。

(4)× リン酸の効きをよくするために、マグネシウム肥料の積極的施肥が行われる。
マグネシウムは、リン酸と一緒に吸収され、リン酸とともに植物体内を移動する性質をもつ。そのため、リン酸が蓄積した畑にマグネシウムを施すと、リン酸の吸収が高まる。

参考
図解でよくわかる 土・肥料の基本
一般財団法人 日本土壌協会
誠文堂新光社/2021第7刷
78.79ページ

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 1回39番(微量要素のサプリ)

微量要素肥料についての記述である。
正しいのはどれか。1つ選べ。
(1)普通肥料(肥料取締法)の規定があるのは、鉄と亜鉛のみである。
(2)ホウ砂(ホウ酸塩)は、「水溶性」と「く溶性」両方のホウ素を含む。
(3)硫酸マンガンは、アルカリ性である。
(4)FTE(熔成微量要素複合肥料)は、速効性である。

【2】

(1)× 普通肥料(肥料取締法)の規定があるのは、ホウ素マンガンである。
作物に必要な微量要素には、鉄・マンガン・亜鉛・銅・塩素・モリブデン・ニッケル・ホウ素の8つがある。ほとんどのものは天然供給で間に合うが、ホウ素とマンガンは欠乏が起こりやすい。

そのため、肥料取締法における普通肥料では、「ホウ素肥料」「マンガン肥料」「両方を含む複合肥料」の3種類だけ規格がある。

(2) ホウ砂(ホウ酸塩)は、「水溶性」と「く溶性」両方のホウ素を含む。
ホウ砂(ほうしゃ)は、水溶性・く溶性の両方を含むホウ素質肥料である。(割合は製品によって変わる)

(3)× 硫酸マンガンは、酸性である。
硫酸マンガンは、水溶性マンガンを含む肥料である。水溶液は酸性で、速効性がある。

マンガンは酸性で溶けやすく、アルカリ性寄り(pH6.3以上)になると不溶化する性質がある。

(4)× FTE(熔成微量要素複合肥料)は、緩効性である。
FTE(熔成微量要素複合肥料)は、ホウ素・マンガンの他にも、ケイ酸・鉄・亜鉛・銅・モリブデンなどを含有する。緩効性肥料であり、過剰になるリスクが少ない。欠乏予防のための、総合ミネラル剤である。

参考
図解でよくわかる 土・肥料の基本
一般財団法人 日本土壌協会
誠文堂新光社/2021第7刷
80.81ページ

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 1回40番(ミックスサプリ1)

化成肥料についての記述である。
正しいのはどれか。1つ選べ。
(1)高度化成は、主成分である窒素・リン酸・カリウムの合計量が50%以上のものをいう。
(2)普通化成と高度化成は、原料は同じであるが成分量が違う。
(3)名前に「S」がつくものは、硫加(硫酸カリウム)が原料に使われている。
(4)窒素の割合が多いものを、「山型」と呼ぶ。

【3】

(1)× 高度化成は、主成分である窒素・リン酸・カリウムの合計量が30%以上のものをいう。
化成肥料は、複合肥料の一種である。一粒の肥料の中に、窒素・リン酸・カリウムの2種類以上が含まれる。

化成肥料は成分量によって分類され、30%以上のものを「高度化成」、30%未満のものを「普通化成(低度化成)」と呼ぶ。

(2)× 普通化成と高度化成は、原料も成分量も違う
普通化成と高度化成は、窒素・リン酸・カリウムの原料となる肥料が違う場合がある。

・普通化成
 窒素 → 硫安
 リン酸 → 過石
 カリウム → 塩加

・高度化成
 窒素 → リン安・尿素
 リン酸 → リン安
 カリウム → 塩加

高度化成は成分濃度を上げる必要があるため、副成分(イオウやカルシウム)が多いものは使いにくい。言い換えると、普通化成は副成分が多いので、高度化成とは違う特性をもつ。

(3) 名前に「S」がつくものは、硫加(硫酸カリウム)が原料に使われている。
化成肥料の名前には、使われている原料を表すものがある。

・窒素
 「硫」→ 硫安(硫酸アンモニウム)
・カリウム
 「S」→ 硫加(硫酸カリウム)

(4)× リン酸の割合が多いものを、「山型」と呼ぶ。
化成肥料は、3要素(窒素・リン酸・カリウム)のバランスにも着目される。

それぞれ同量のものを「水平型」
リン酸が多いものを「山型」
リン酸が少ないものを「谷型」
と呼ぶ。作物の特性に応じて使い分けられる。

参考
図解でよくわかる 土・肥料の基本
一般財団法人 日本土壌協会
誠文堂新光社/2021第7刷
82.83ページ

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 1回41番(ミックスサプリ2)

配合肥料についての記述である。
誤っているのはどれか。1つ選べ。
(1)配合肥料は、複合肥料の一種であり、単肥を混合したものである。
(2)BB肥料とは、粒状の単肥肥料を配合したものである。
(3)配合肥料に、有機質肥料が含まれることはない。
(4)石灰質肥料に、水溶性マグネシウム肥料を合わせてはいけない。

【3】

(1) 配合肥料は、複合肥料の一種であり、単肥を混合したものである。
無機質肥料(化学肥料)の中の、複合肥料(2種類以上の単肥を含むもの)に分類される。「化成肥料」とは違い、1粒ごとに1つの要素(窒素・リン酸・カリウムなど)となっている。

価格は安いが、化成肥料よりも含有成分量は少ない。

(2) BB肥料とは、粒状の単肥肥料を配合したものである。
BBとは、バルクブレンディング(粒・配合)の略。粒状配合肥料とも呼ぶ。1粒に1つの要素が含まれる。

従来の配合肥料は、粉状のものが多く、吸湿性が高く硬くなりやすい。BB肥料はその欠点がなく、扱いやすい。

(3)× 配合肥料に、有機質肥料が含まれることもある
配合肥料は、種類によって原料となる肥料が異なる。例えば、窒素成分のもとは「硫安(硫酸アンモニウム)」「尿素」「リン安(リン酸水素アンモニウム)」「油かす」などがある。油かすは、植物性の有機質肥料である。つまり、原料によって、肥料の特性が変わる。

(4) 石灰質肥料に、水溶性マグネシウム肥料を合わせてはいけない
配合肥料は、単肥から手作りすることもできる。ただし、混ぜてはいけない組み合わせがある。

例えば、石灰質肥料(アルカリ性肥料)に、水溶性マグネシウム肥料(硫酸マグネシウムなど)を加えると、非水溶化してしまう。(アルカリ性マグネシウムならOK)

参考
図解でよくわかる 土・肥料の基本
一般財団法人 日本土壌協会
誠文堂新光社/2021第7刷
84.85ページ

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 1回42番(サプリの加工方法)

肥効調節型肥料についての記述である。
誤っているのはどれか。1つ選べ。
(1)肥料養分の溶出を調節した、化学肥料である。
(2)緩効性窒素肥料と、被覆肥料に大別される。
(3)IB化成は、被覆肥料の一種である。
(4)窒素成分の溶出(経過日数と溶出率)は、3パターンに大別される。

【3】

(1) 肥料養分の溶出を調節した、化学肥料である。
肥効調節型肥料は、肥効を長く持続させるために加工された化学肥料である。肥料成分のムダな流出を防ぐことで、減肥や追肥の軽減が可能になる。また、施肥初期の効果が抑えられるので、濃度障害の回避にもつながる。

(2) 緩効性窒素肥料と、被覆肥料に大別される。
肥効調節型肥料は、化学的に合成された「緩効性窒素肥料」と、肥料に被膜をかぶせた「被覆肥料」に分けられる。

(3)× IB化成は、緩効性窒素肥料の一種である。
緩効性窒素肥料には、「IB化成」や「CDU化成」がある。(前者は水に溶けることで効くようになり、後者は微生物の分解により効くようになる。)

また、被覆肥料にも被膜の種類があり、効き方が異なる。「LPコート」「エムコート」「イオウコート」

(4) 窒素成分の溶出(経過日数と溶出率)は、3パターンに大別される。
肥効調節型肥料の窒素成分の溶出は、大きく3パターンに分類される。

・リニアタイプ(直線タイプ)
・放物線タイプ
・シグモイドタイプ(S字タイプ)

経過日数と溶出率(%)が違うので、作物の特性に合わせて選択される。

参考
図解でよくわかる 土・肥料の基本
一般財団法人 日本土壌協会
誠文堂新光社/2021第7刷
86.87ページ

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 1回43番(有機サプリ・植物)

有機質肥料(植物質)についての記述である。
正しいのはどれか。1つ選べ。
(1)ナタネ油かすは、最も肥効が早い。
(2)ダイズ油かすは、窒素を含まない。
(3)草木灰は、代表的な有機のカリウム肥料である。
(4)米ぬかは、有機における速効性の窒素肥料である。

【3】

(1)× ダイズ油かすは、最も肥効が早い。
有機質肥料における代表的な窒素肥料が、油かす(油を絞った後の残り)である。中でも最も多く使われているのがナタネ油かす、次いで、ダイズ油かすとなっている。

有機質肥料の中では、ダイズ油かすの分解速度が早く、肥効の早さは一番と言われる。(ナタネ油かすは、肥効が遅め。)

(2)× ダイズ油かすは、窒素を含む
ダイズ油かすは約7%、ナタネ油かすは5-6%の窒素を含む。また、1-2%のリン酸とカリウムも含んでいる。

(3) 草木灰は、代表的な有機のカリウム肥料である。
草木灰は、藁・落ち葉・枯れ草などを焼いた灰である。古くから使われる有機質のカリウム肥料であり、リン酸やカルシウムも含んでいる。

肥料成分は、材料となる植物によって異なる。また、アルカリ性であるため、使い過ぎによる土壌のアルカリ化に注意が必要となる。

(4)× 米ぬかは、有機における遅効性リン酸肥料である。
米ぬか(米糠)は、玄米を精白する際に生じる粉(外皮や胚)である。脂質を含むため分解が遅く、遅効性である。窒素やカリウムも含むが、主にリン酸の供給源となる。

参考
図解でよくわかる 土・肥料の基本
一般財団法人 日本土壌協会
誠文堂新光社/2021第7刷
90.91ページ

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 1回44番(有機サプリ・動物1)

有機質肥料(動物質)についての記述である。
正しいのはどれか。1つ選べ。
(1)魚かすは、カリウムを多く含む。
(2)蒸製骨粉は、速効性である。
(3)蒸製骨粉は、魚かすよりリン酸が少ない。
(4)カニ殻は、病害軽減効果がある。

【4】

(1)× 魚かすは、カリウムをほとんど含まない
有機質肥料(動物質)の代表が、魚かすである。生の魚を水煮・圧搾し、油を除いて乾燥させて作られる。窒素やリン酸を含むが、カリウムはほとんど含まない。

【魚かす】
 窒素 7-10%
 リン酸 4-9%
 (やや速効性)

(2)× 蒸製骨粉は、緩効性である。
蒸製骨粉は、牛や豚などの骨を砕き、加圧蒸製したものである。脂肪と大部分のゼラチンが除かれている。肥効は緩効性であり、長く効く。

【蒸製骨粉】
 窒素4-5%
 リン酸18-22%
 (緩効性)

(3)× 蒸製骨粉は、魚かすよりリン酸が多い
蒸製骨粉は、リン酸が多いことが特徴である。緩効性であるため、長く効くリン酸肥料といえる。

(4) カニ殻は、病害軽減効果がある。
カニ殻は、キチン(糖の一種)を含んでいる。使うと土壌中にキチン分解菌(放線菌)が増える。放線菌は、糸状菌(カビ)の細胞壁(キチン質)を分解する。そのため、カビが原因で起こるフザリウム病などを予防する。

【カニ殻】
 窒素4%
 リン酸4%
 (緩効性)

参考
図解でよくわかる 土・肥料の基本
一般財団法人 日本土壌協会
誠文堂新光社/2021第7刷
92.93ページ

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 1回45番(有機サプリ・動物2)

家畜糞類についての記述である。
正しいのはどれか。1つ選べ。
(1)家畜糞(鶏糞・豚糞・牛糞)は、普通肥料に分類される。
(2)家畜糞は、品質表示が免除される。
(3)鶏糞は、オガクズ(おが屑)を加えて熟成させることが多い。
(4)牛糞は、カリウムが多い。

【4】

(1)× 家畜糞(鶏糞・豚糞・牛糞)は、特殊肥料に分類される。
家畜糞は、肥料取締法における「特殊肥料」に分類される。(「特殊」に特別な意味はなく、普通肥料と区別するための用語。)「動物排泄物」や「堆肥」と表示される。

(2)× 家畜糞は、品質表示が必要である。
2005年以降、家畜糞(堆肥)には、窒素・リン酸・カリウムなどの成分量の表示(品質表示)が必要になった。ただしこれは保証成分量ではないため、あくまで目安の量となる。

(3)× 牛糞や豚糞は、オガクズ(おが屑)を加えて熟成させることが多い。
牛糞や豚糞は水分量が多いため、水分調節と発酵促進のためにオガクズを加えて堆肥にされる。対して鶏糞は、そのままを発酵させたものが多い。

オガクズが加わる分、牛糞や豚糞は、鶏糞より肥料としての成分量が少なくなる傾向にある。

(4) 牛糞は、カリウムが多い
牛糞は、カリウムが多く、肥効がやや遅いことが特徴である。また、有機質肥料よりも、土壌改良剤(土づくり)としての効果を期待される。

参考
図解でよくわかる 土・肥料の基本
一般財団法人 日本土壌協会
誠文堂新光社/2021第7刷
96.97ページ

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 1回46番(堆肥サプリのパターン)

堆肥についての記述である。
正しいのはどれか。1つ選べ。
(1)下水汚泥コンポストは、土づくり型(木質堆肥)に分類される。
(2)腐葉土は、有機質肥料型(栄養堆肥)に分類される。
(3)炭素窒素比(C/N比)は、市販の堆肥に表示される項目である。
(4)炭素窒素比(C/N比)が高いことは、窒素が多いことを表す。

【3】

(1)× 下水汚泥コンポストは、有機質肥料型(栄養堆肥)に分類される。
堆肥は、肥料成分の少ない「土づくり型」(木質堆肥)と、肥料成分の多い「有機質肥料型」(栄養堆肥)に大別される。

「有機質肥料型」(栄養堆肥)には、豚糞堆肥・鶏糞堆肥・下水汚泥コンポストなどが含まれる。

(2)× 腐葉土は、土づくり型(木質堆肥)に分類される。
「土づくり型」(木質堆肥)には、腐葉土(落ち葉堆肥)・バーク堆肥(樹皮堆肥)・牛糞堆肥などが含まれる。

(3) 炭素窒素比(C/N比)は、市販の堆肥に表示される項目である。
炭素窒素比(C/N比)は、肥料取締法における品質表示項目のひとつである。
有機物の成分として、炭素(C/繊維質)が多いか、窒素(N/たんぱく質)が多いかを表す。

(4)× 炭素窒素比(C/N比)が高いことは、窒素が少ないことを表す。
おおむね比の値が10-20のものが使いやすいとされる。30を超えると窒素が少ない、10を下回ると窒素が多いと判断できる。

例えば、バーク堆肥は値が高く(窒素が少なく)、鶏糞は値が低い(窒素が多い)。

参考
図解でよくわかる 土・肥料の基本
一般財団法人 日本土壌協会
誠文堂新光社/2021第7刷
96.97ページ

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 1回47番(自分で育てるサプリ)

緑肥についての記述である。
誤っているのはどれか。1つ選べ。
(1)圃場で栽培し、収穫せずそのまま土壌の養分とする植物のことである。
(2)マメ科植物は、緑肥として栽培されることが多い。
(3)窒素肥料としての役割がある。
(4)デメリットとして、センチュウ増加があげられる。

【4】

(1) 圃場(ほじょう)で栽培し、収穫せずそのまま土壌の養分とする植物のことである。
緑肥は、収穫ではなく、作物に養分を供給するために栽培する植物である。育った後に土壌にすき込むことで、腐熟し肥料となる。

(2) マメ科植物は、緑肥として栽培されることが多い
ダイズ・レンゲ・クローバー・クロタラリア・ヘアリーベッチなどの、マメ科植物が利用されることが多い。他にも、菜の花・エンバク・ライムギ・ヒマワリなども利用される。

(3) 窒素肥料としての役割がある。
化学肥料が流通する以前は、糞尿・雑魚とともに、窒素肥料として利用されていた。

(4)× メリットとして、センチュウ抑制があげられる。
緑肥の働きとしては、窒素肥料・土壌物理性の改善・有用微生物の増加・病害(センチュウ害)の抑制・雑草抑制・過剰な養分の除去などがあげられる。

センチュウ(線虫)とは、土壌中に生育する線形動物である。(体長0.3〜4.0mm)
種類によって、作物に悪影響を与えるものがいる。(ネコブセンチュウ・ネグサレセンチュウ・シストセンチュウなど)

参考
図解でよくわかる 土・肥料の基本
一般財団法人 日本土壌協会
誠文堂新光社/2021第7刷
104.105ページ

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 1回48番(ゴミをサプリに)

籾殻についての記述である。
誤っているのはどれか。1つ選べ。
(1)籾殻(もみがら)は、玄米を覆う外皮である。
(2)籾殻のC/N比は、約10と低い。
(3)籾殻は、ケイ素を含む。
(4)鶏糞や牛糞と合わせたものが、籾殻堆肥として販売されている。

【2】

(1) 籾殻(もみがら)は、玄米を覆う外皮である。
籾殻は、籾米を搗いて玄米にしたあとに、殻として残る部分。種子を守る部分なので、作物に必要な栄養素が含まれている。そのまま撒いたり、燻炭(灰)にして利用される。

(2)× 籾殻のC/N比は、約75と高い
籾殻は、炭素が多く窒素が少ないため、C/N比(炭素窒素比)は高くなる。家畜糞や生ごみなど、C/N比の低いものの調整剤としても使われる。

(3) 籾殻は、ケイ素を含む
ケイ素が多く、病害虫への抵抗性向上や、光合成増進効果などが期待される。

(4) 鶏糞や牛糞と合わせたものが、籾殻堆肥として販売されている。
家畜糞以外にも、米ぬか・生ごみと合わせたものもある。

参考
図解でよくわかる 土・肥料の基本
一般財団法人 日本土壌協会
誠文堂新光社/2021第7刷
106.107ページ

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 1回49番(液体サプリ)

液肥についての記述である。
誤っているのはどれか。1つ選べ。
(1)液体肥料(液肥)は、化学肥料・有機肥料どちらからでも作られる。
(2)利用効率は、固体肥料よりも高い。
(3)農薬を混ぜて使ってはいけない。
(4)砂糖製造における廃棄物も、液肥の材料となる。

【3】

(1) 液体肥料(液肥)は、化学肥料・有機肥料どちらからでも作られる
水溶液になっている肥料を、液体肥料(液肥)と呼ぶ。材料には、化学肥料・有機肥料どちらも使え、手作りすることもできる。

(2) 利用効率は、固体肥料よりも高い
利用効率(施肥された養分が、作物に吸収される割合)は、おおよそ個体肥料60%、液体肥料90%とされる。

(3)× 農薬を混ぜて使うこともできる
除草剤や殺虫剤を混ぜて使われることもある。

(4) 砂糖製造における廃棄物も、液肥の材料となる
他にも、コーンスターチ製造における残渣や、魚の缶詰製造における煮汁なども、液肥の原料となる。

参考
図解でよくわかる 土・肥料の基本
一般財団法人 日本土壌協会
誠文堂新光社/2021第7刷
114.115ページ

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 1回50番(効き目調節サプリ)

ボカシ肥料についての記述である。
正しいのはどれか。1つ選べ。
(1)有機質肥料を、早く効くよう加工したものである。
(2)化学肥料を、混ぜて作ることもできる。
(3)土壌環境が、悪化しやすい。
(4)土着菌は、利用できない。

【2】

(1)× 有機質肥料を、ゆっくり効くよう加工したものである。
ボカシ肥料(暈し肥)は、油かす・魚かす・米ぬかなどを混ぜて作る、有機質肥料のひとつである。

有機質肥料は養分が豊富な分、ガスの発生やネズミのエサになるなどの弊害がある。そこで、約60℃で発酵させ、急激に分解・吸収されないように加工する。(この作業をボカシと呼ぶ)
適度な発酵が進んだボカシ肥料は、施肥後も微生物によってゆっくり分解され、肥料の効果が持続する。

(2) 化学肥料を、混ぜて作ることもできる。
基本的にボカシ肥料の材料は有機物であるが、化学肥料を加えることもできる。その場合は、安価で、少量でよく効くものとなることが多い。

(3)× 土壌環境の改善につながる。
ボカシ肥料は、関わる微生物によって、土壌環境が改善しやすい。環境負荷を考えた農業で使われる。

(4)× 土着菌が、利用できる
土着菌とは、もともと土壌にいる菌を指す。ボカシ肥料を作る場合、菌を購入して入れる方法や、身の回りの土着菌を利用する方法がある。

参考
図解でよくわかる 土・肥料の基本
一般財団法人 日本土壌協会
誠文堂新光社/2021第7刷
116.117ページ

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 1回51番(サプリの補助剤)

土壌改良資材についての記述である。
誤っているのはどれか。1つ選べ。
(1)改善するのは、土壌の化学性のみである。
(2)有機物系と無機物系に大別される。
(3)肥料取締法や地力増進法に含まれるものがある。
(4)バーミキュライトは、透水性を改善する。

【1】

(1)× 改善するのは、土壌の化学性や物理性である。
土壌の生産力阻害要因は、主に土壌化学性と物理性に関わるものである。土壌改良資材は、種類によって効果が違うが、どちらも改善できる。

(2) 有機物系と無機物系に大別される。
有機物系には、木炭・家畜堆肥・カニ殻などがあり、無機物系には、リン酸や石灰を含む化学肥料・ゼオライト・バーミキュライトなどがある。

(3) 肥料取締法地力増進法に含まれるものがある。
土壌改良資材には、肥料取締法に含まれる肥料や、地力増進法で定められる「政令指定土壌改良資材」、その他の微生物資材などがある。

(4) バーミキュライトは、透水性を改善する。
バーミキュライトは、無機物系・政令指定改良資材の1つである。土壌の物理性や化学性(とくに透水性)を改善する効果がある。

政令指定改良資材には12種類あり、原料や用途を表示しなければならない。

参考
図解でよくわかる 土・肥料の基本
一般財団法人 日本土壌協会
誠文堂新光社/2021第7刷
100.101ページ

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[基礎理解]おわり。

[QA]は、『土は土である 作物によってよい土とは何か』の内容を、Q&A形式にまとめたものです。細かい部分の理解というよりも、そもそものところ(本質に近いところ)を把握することを目的にしています。

 2-1 「よい土」ってなんだろう?

「作物の生育を阻害しない土」じゃないかな。

「黒くて軟らかいから」「腐食が多いから」「ミミズが多いから」「堆肥をたくさん与えたから」だけで、「よい土」とはいえない。大切なのは「バランス」と「その土の生育阻害要因はなにかを見つけること」。

参考
土は土である 作物によってよい土とは何か
松中照夫/農文協/2013
14.25ページ

 2-2 どうして「厚み」が必要なの?

「作物の根が広がれる範囲」を作ってあげたいからね。

表土層は、耕したり堆肥を与えたりして、私たちが直接管理できる層。ここに適度な厚みがないと、作物の生育を阻害してしまう。

参考
土は土である 作物によってよい土とは何か
松中照夫/農文協/2013
29.36.38ページ

 豆知識1

「腐植に富んだ土が肥沃な土壌」という考え方は、テーヤの「腐栄養説」がもとになっているよ。

テーヤ(テーア)は、19世紀ドイツ化学者。腐植栄養説は、腐植こそ作物の栄養分という考え方。別名を有機栄養説と呼ぶ。これが有機農業の有機。有機物とは、炭素(C)を含む物質のこと。有機物は分解されると黒くなるので、黒い土はよい土というイメージにつながる。(ただし、黒い土=無条件で「よい土」とはいえない)

参考
土は土である 作物によってよい土とは何か
松中照夫/農文協/2013
19.20ページ

 2-3 どうして「硬さ」を気にするの?

「根が伸びることができる硬さ」には限界があるからね。

ただし、土の硬さだけが根の伸びに影響するわけではない。「硬さ(機械的抵抗)」「通気性」「水分」の3つのバランスで決まっている。

参考
土は土である 作物によってよい土とは何か
松中照夫/農文協/2013
30.31.32.38ページ

 2-4 「排水がよくて水持ちもいい土」って両立できるの?

2種類のスキマがあればできるんだよ。

土の粒の間にある大きいスキマは「排水」に、小さいスキマは「保水」に使われる。この適度なスキマを実現するためには、ちょうどよい土の粒の大きさ(中粒質)が必要。粗すぎる砂質だと、排水がよるぎる状態に、細かすぎる粘質だと、排水が悪い状態になってしまう。
また、2種類のスキマを作るために必要なのが「団粒構造」であり、そのためには接着剤としての有機物と、根の圧力が必要となる。
(言い換えると、耕すだけでは作れないし、急激に変化させることはできない。)

参考
土は土である 作物によってよい土とは何か
松中照夫/農文協/2013
48.49.50ページ

 2-5 なぜ適切なpHは、5.5~6.5(やや酸性)なの?

「養分の特性」と「日本の環境」の2つから考えられているよ。

よい土の条件に「酸性度」(土が極端な酸性やアルカリ性を示さない)があった。日本の適切なpHは「5.5~5.6」とされる。これは、日本の環境・養分の特性・肥料の種類・微生物の活動・栽培される作物の種類などを考慮した結果の値。
また、「酸性度」は土の「化学的な性質」の1つ。「硬さ・厚み・水分状態」などの「物理的な性質」とは違い、ヒトがコントロールしやすいことも大切な特徴。よって「よい土づくり」の第一歩は、酸性改良からといえる。

参考
土は土である 作物によってよい土とは何か
松中照夫/農文協/2013
59.61.62.63.64.65ページ

 2-6 土の養分は基準値に達していればいいの? 

「土壌診断結果の基準値」は、「作物が必要な養分量」とは違うんだ。

土に含まれる養分量は、見ためでわからない。よって土壌診断を行う。診断結果には「土にはこれくらいの成分量が含まれていてほしい」という「基準値」がある。(作物によって違う。)また、診断結果に対しては「施肥量(投与する肥料の量)」がセットになっている。つまり、「土壌診断結果が基準値=作物に必要な養分量を満たしている」ではなく、「土壌診断結果+肥料=作物に必要な養分量」と考える。

参考
土は土である 作物によってよい土とは何か
松中照夫/農文協/2013
72.73.ページ

 2-7 「よい土」ができれば、たくさんの作物ができるの?

「よい土」は、全体の要因のひとつなんだ。

その農地がもっている作物生産能力は、複数の要因から決まる。「よい土」は、あくまで要因のひとつなので、「最高の土=最高の収量」とはならない。土を過大評価することなく、客観的に見ることが大切。

参考
土は土である 作物によってよい土とは何か
松中照夫/農文協/2013
94.95.96ページ

 2-8 肥料や堆肥ってどうして必要なの?

「収穫」は、「養分を持ち出している」といえるんだ。

自然の山や森は、肥料がなくても毎年植物が育っている。これは、養分の持ち出しが少なく、うまく循環しているから。対して田畑は、作物の収穫が目的なので、養分の持ち出しが多くなる。雨など天然に供給される分だけではカバーできない。そのため、肥料や堆肥を与え、「補給しながらつくる」という循環が必要になる。

参考
土は土である 作物によってよい土とは何か
松中照夫/農文協/2013
100.101ページ

 2-9 堆肥はなんのためにあるの?

目的は、「土の中にある植物の養分を回収して、別の場所に移動するための資材」と考えよう。

このような目的と効果から、堆肥は「養分転移資材」といえる。この考え方は紀元前から用いられており、化学肥料(19世紀に登場)よりも長い歴史をもつ。
[補足1]植物由来のものだけを「堆肥」と呼び、家畜ふん尿を含むものを「厩肥」(きゅうひ)と区別して呼ぶ場合もある。
[補足2]「有機物資材」と同じ意味で使われることもある。ただし、微生物による分解を受けたものを「堆肥」、受けていないもの(イネわらなど)を「有機物資材」と区別する場合もある。
[補足3]「有機質肥料」は、堆肥や有機物資材を肥料として利用したときの言葉。

参考
土は土である 作物によってよい土とは何か
松中照夫/農文協/2013
103.104.105ページ

 2-10 堆肥と化学肥料って何が違うの?

堆肥の効果の中の、「養分だけに特化したもの」というイメージだよ。

堆肥(有機物資材)には、養分・有機物・微生物の3つの視点からの効果があった。化学肥料は、この中の養分だけに特化している。また、同じ養分であってもその特徴は大きく違う。

堆肥の養分は「有機態」と呼ばれる状態のため、微生物などによって分解されて(無機態になって)機能する。対して、化学肥料は初めから無機態の状態で含まれており、すぐに効果が表れる。そのため「追肥」として、すぐに養分不足を補うことができる。
また、単位重量当たりに含まれている養分量も大きく違う。1㎡当たりkg単位で与える堆肥で、与えすぎの危険はあまり発生しないが、1㎡当たりg単位で与える化学肥料は、分量を間違えるとすぐに過剰になってしまう。(作物にも土壌にも悪影響を与える)

よって、化学肥料を使う際に最も気をつけないといけないのは、「適量を守る」こと。

参考
土は土である 作物によってよい土とは何か
松中照夫/農文協/2013
134.135.136.137ページ

 2-11 プランターや鉢の土も、同じように考えていいの?

自然から切り離されているので、違うものと考えた方がいいよ。

プランターや鉢の土(人工合成土)は、自然から切り離されているという点で、農地の土とはまったく違う。養分はいつでも与えられるし、水も乾いたタイミングで補充できる。また、さまざまな用土(栽培のために用意された土)を配合して、1から土を作ることができる(土壌改良が自由にできる)。ただし空間が限られる分、根の行き場が少なく、鉢の中で過密になりやすい。

参考
土は土である 作物によってよい土とは何か
松中照夫/農文協/2013
159.160ページ

 豆知識2

「黒ボク土」の評価は、時代によって変わってきたよ。

火山灰に由来する土である「黒ボク土」は、現在は良い土というイメージがある(腐植が多く、軽く、やわらかく取り扱いやすい)。ただし、もともとの性質としては、「リン酸吸収係数が高い(土がリンを固定してしまい、リン欠乏が起こる)」「カリウム供給量が弱い」「酸性度が高い(pHが低い)」という特徴がある。これらは、時代の経過とともに安価になった資材(リン酸肥料や炭酸カルシウムなど)のおかげで、土壌改良が進み、影響が少なくなった。よって、かつて化学肥料が安価ではなかった時代は、現在のようなイメージとは違う土だった。

ちなみに、見た目が黒く、歩くとボクボク音がするから「黒ボク土」という説がある。

参考
土は土である 作物によってよい土とは何か
松中照夫/農文協/2013
17.18.19ページ

 2-

次の準備中。

参考
土は土である 作物によってよい土とは何か
松中照夫/農文協/2013
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