第3話 食中毒統計

メンバー


1.最近の状況
marcy
次は、これまで見てきた食中毒が
実際に起こっているのかを
見たいと思います。
食中毒に関して、厚生労働省は毎年
「食中毒統計」というものをとっています。
この中で原因がわかった場合は、
どの食材で・何人症状が出たか
という情報が集積されています。
tomo
ほぉ~
marcy
じゃがいもについての集計をみると、
過去10年で、事件数が17。
死亡者は0ですが、
患者は280人となっています。
食中毒発生状況
(平成24年~令和3年)
事件数 17
患者数 280
(合計患者749人中)
(2位はスイセンの195人)
死亡数 0
pino
おぉ…。
marcy
植物性中毒全体の患者数が749人なので、
この280人というのは
結構な割合を占めています。
tomo
そうですね。
marcy
直近の例を見てみると、
令和元年、学校で調理して食べた
じゃがいもで起こっています。
・令和元年(1件)
調理実習で喫食したジャガイモ
(患者16人)
・令和3・2年(0件)
・令和4年(2件)
学校ゆで調理(患者46人)
小学校の菜園で栽培し、
調理実習中にて加熱料理したもの
(患者7人)
tomo
うわぁ。調理実習…
これは知らなかったって気がしますよね。
marcy
そうなんですよ。
じゃがいも食中毒で、
報告されてる中で一番多いのが学校で。
令和4年も、
学級菜園で栽培したものを食べて、
7人中毒になっています。
pino
かわいそうになぁ。
marcy
これがなぜ起こるのかの理由で、
「担当の先生が知らなかった」
というのがけっこうあるみたいです。
tomo
え、知らなかった…
家庭科の先生じゃなかったのかな。
小学校だからか。
子どもはカラダも小さいし。
marcy
たしかに、
閾値も低いから発症しやすいですね。
このように、最近もじゃがいも食中毒は
起こっているよ、という確認でした。
tomo
なるほど。
marcy
ひとつ注意点として、食中毒統計は
「発生して報告されたもの」が
集まっているので、
例えば家庭で起こっているものは
ほとんど集計されていないという前提です。
tomo
大きめのできごとが
データに載っているということですね。
marcy
そういうことですね。
もう少し昔の例を見ておくと、
朝鮮戦争のときに食べ物がなく
古くなったじゃがいもを食べて、
何名かの死亡が出ています。
ロンドンの小学校給食で、
古くなったじゃがいもによって、
重症者も出ていますね。
・1950年代 朝鮮戦争(住民)
→ 古くなったじゃがいもで死亡者多数
・1969年 ロンドン (小学校給食)
→ 古くなったじゃがいもで17人
入院3人重症
tomo
死亡もあるんですね。
marcy
そう、過去には
じゃがいも中毒による死亡例もある、
という記録でした。
*参考文献を基にしておりますが、厳密な考証は行っておりません。あくまで「趣味のおしゃべり」として、楽しんでいただけると幸いです。
参考文献
ジャガイモのきた道/山本紀夫/岩波新書/2008
ジャガイモの世界史/伊藤章冶/中公新書/2008
ジャガイモの歴史/アンドルー・F・スミス/原書房/2014
へんな毒 すごい毒/田中真知/ちくま文庫/2016
世界史を大きく動かした植物/稲垣栄洋/PHP/2018
海が運んだジャガイモの歴史/田口一夫/梓書房/2016
食中毒統計資料令和4~元年/厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/shokuhin/syokuchu/04.html
食品中の天然毒素「ソラニン」や「チャコニン」に関する情報/農林水産省
https://www.maff.go.jp/j/syouan/seisaku/solanine/
有毒植物による食中毒に注意しましょう/厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/shokuhin/yuudoku/index.html